以下は今日の産経新聞からである。
パリ支局長三井美奈は当代最高の女性特派員である。
東欧の中国熱に陰り
期待外れの「一帯一路」民主主義めぐるズレも
▼チベット解放を
チェコでは、中国への逆風が吹きまくっている。
中世の面影を残すプラハの中心部には、「チベットを解放せよ」「香港に自由を」と書かれた20㍍の壁が立つ。
壁は東欧革命の1989年、市民が共産党体制への怒りを記す「自由の象徴」だった。
昨年の香港のデモを機に、中国に人権改善を求める場に変わった。
連日、記念写真を撮る観光客でにぎわう。
昨年3月には、プラハなど約700の自治体がチベット旗を掲げた。ダライ・ラマ亡命の契機になったチベット蜂起60年を記念した。
在プラハ中国大使館の抗議は、不発に終わった。
民間調査機関「国際問題協会」のイバナ・カラスコバ研究員は「国民はかつてのチェコ共産党と、中国共産党を重ねている。中国投資に対する国内の歓迎ムードは一変した」と話す。
▼進まない「鉄道」
中国と中東欧16力国は2012年、ポーランドの首都ワルシャワで初の首脳会議を開催した。
「16プラス1(中国)」の枠組みで会議は定例化され、港湾や道路、鉄道の建設計画が次々と打ち出された。
ところが、計画は中東欧の思惑通りに進まない。
資金面で不安も出てきた。
東欧版「一帯一路」の目玉とされたハンガリーの首都ブダペストとセルビアのベオグラード間の鉄道近代化計画。
中国が運営権を握る地中海のギリジャ・ピレウス港からバルカン半島経由で西欧につながる「新シルクロード」の中枢として、17年に完成するはずだった。
ハンガリー側では現在、工事すら始まっていない。
この計画は14年、セルビアで行われた「16プラス1」の第3回首脳会議で、覚書の調印式が行われた。
中国の李克強首相は、ハンガリー、セルビア両首脳の手をとり、「これは、中国と欧州を結ぶ懸け橋になるのです。高速路線をもっと拡充すれば、双方の貿易規模は一気に増えるでしょう」と胸を張った。総工費は推計32億ユーロ(約4千億円)。
両国の首都間350㌔を中国製の高速鉄道で結び、現在8時間かかる所要時間を半分以下に短縮することを目指す。
ハンガリーでは中国企業の受注をめぐり、早々に問題が生じた。
欧州連合(EU)が入札ルールに抵触する可能性を指摘。
業者選定は昨年にずれこみ、完成目標も23年に修正された。
費用の85%は中国輸出入銀行の融資頼み。
ハンガリーでは乗客需要が見込めず、「採算をとるには100年以上かかる」との声も出る。
ハンガリー・コルビヌス大のアグネス・スノマール准教授は、「鉄道は中国貨物の輸送用で、ハンガリーには経済的恩恵が薄い。対中接近を掲げるオルバン首相の政治的シンボルでしかない」と指摘する。
▼生まない「雇用」
中東欧の中国接近は目下、期待先行だ。
セルビア側の鉄道計画は17年に着工した。
EU非加盟のセルビアは、EUルールに縛られない。
14年には、中国の融資でドナウ川に全長1.5㌔の橋も完成した。中国が労働者200人を送り込んだ突貫工事の成果だ。
セルビア国内では、「一帯一路は地元の雇用につながらない」という冷めた見方が広がった。
ドイツの「メルカトル中国研究所」によると、18年の中国の対EU投資のうち、中東欧は2%。大半は、英独仏3国と北欧が占める。
*これがグレタ・トゥーンベリ出現の真相だろう*
中東欧から中国への輸出は増えたものの、中国からの輸入はその数倍だ。
チェコのカラスコバ研究員は「国内市場は中国製品でいっぱいなのに、こちらが期待した農産物輸出にはつながらない。雇用も創出されず、国民はあてが外れて失望した」と言う。
▼「安保」への不安
さらに、中国熱を冷え込ませたのは、安全保障への不安の高まりだ。
ポーランドでは昨年1月、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)ワルシャワ支店の営業担当幹部がスパイ容疑で逮捕された。
ポーランド北部グダニスクの中国領事館に11年まで5年間、勤務した人物だ。
同じ日、ポーランド情報機関でサイバー・セキュリティーを担当していたポーランド人元職員も逮捕された。2人は友人だった。
政府は事件に仰天し、華為への依存を見直した。
9月、ペンス米副大統領の来訪にあわせて、第5世代(5G)通信網の安全策をめぐって協定を結んだ。
チェコでは18年末、国家情報機関が年次報告書で、中国のスパイ行為を「脅威」と位置付けた。
「中国は外交を隠れみのにチェコで情報活動を行っている。政府を標的にし、経済、技術分野のスパイも行っている」と強く警告した。この年、チェコに進出した中国エネルギー大手「中国華信能源」の中国人会長が、突然失踪。
中国で贈賄容疑で拘束されたと報じられた。
華信は銀行や航空会社、サッカーチームに大規模投資してきた。
ゼマン大統領はこの会長を顧問に起用し、蜜月関係を築いたが、親中姿勢が一転してやり玉に挙げられた。
▼歴史的な「事情」
中東欧に中国が浸透できたのは、歴史的な事情もある。
旧ソ連の弾圧と闘った政治指導者らは、共産圏でソ連と一線を画した中国への共感が強かった。
ポーランド元首相のトゥスク前大統領も、その一人。
首相時代の12年、ワルシャワで「16プラス1」首脳会議を開いた当時を振り返り、「対中接近の背景には、中国に好意的な国民感情がありました。中国は、ソ連に対抗する希望の星でしたから」と話す。
トゥスク氏は学生時代、ポーランドで民主化運動を担った自主管理労組「連帯」の闘士だった。
会議には「中国投資は西欧が独占している。東欧にも分けてほしい」との思いもあった。
▼EUや米と歩調
東欧革命から30年にあたる昨年、チェコでは記念行事が相次いだ。香港のデモに国民が支援の声を上げたのは、かつての民主化運動と重なったからだ。
チベットヘの強い関心は、革命を率いたハベル元大統領が「共産主義体制と闘う友」としてダライ・ラマと親交を深めたことに由来する。自治体のチベット旗掲揚は、当時からの伝統だ。
中国側は従来、こうした動きを「内政干渉」と批判してきた。
習体制になって姿勢は一段と威圧的になり、かえって摩擦を生んでいる。
カラスコバ研究員はプラハの中国大使館から「正しい知識を指導する」と呼び出され、1時間近く説教を受けたという。
「私は上海、台湾に留学した。あなたに教えてもらうことはないと、言い返してやった」と語る。
経済発展を望む中東欧は、インフラ整備に突っ走る中国の資金力に舌を巻いた。
投資への期待は今も強いが、米国やEUが対中警戒を強める中、姿勢は慎重になってきた。
トウスク氏は「中国という大国には、ポーランドー国で対等な関係を築けないことが分かった。EUや米国と共同歩調をとるべきだ」と訴える。
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