文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

何者にも臆することなく日本の最終的勝利を確信して行動した「勇気」を受け継いでいかなくてはならない。

2022年07月15日 22時05分02秒 | 全般
以下は、今日、産経新聞の一面に、日本の安保根本から変えた、と題して掲載されたE・ルトワック氏へのインタビュー記事からである。
見出し以外の文中強調は私。
亡くなった安倍晋三元首相とは、安倍氏が第2次政権で2014年に国家安全保障局(NSS)を設立するに際し、数年間にわたり一緒に仕事をする機会があった。
そのことを名誉に思う。
安倍氏の死去は日本にとって大いなる損失だ。 
安倍氏は軽妙なユーモアの持ち主である一方、岸信介元首相の孫、そして首相の座を目指した安倍晋太郎元外相の次男として、自らが尽くすべき本分が何であるかを理解していた。 
私は安倍氏の「指南役」と呼ばれることも多いが、実際のところはそうではない。

私は安倍氏と何度も会って懇談し、安倍氏が繰り出してくる外交や安全保障に関する詳細で実質的な質問に答えてきただけだ。
安倍氏は戦略を学問として研究したことはないが、戦略を本能的に理解し、生まれつき戦略的な思考を身につけていた。
当時の私の仕事は安倍氏の意向を受け、国家安全保障局に配置される外務省や防衛省の職員らに訓練を施し、同じ職場で意思疎通できるよう意識を変えることだった。
彼らの多くは後に幹部や将官に昇進した。 
安倍氏は、日本の安全保障政策や戦略策定の仕組みを根本から変えた。
以前であれば、例えば日米関係では外務省は国務省、防衛省は国防総省、海上自衛隊なら米海軍と個別に話し合って政策を調整し、日本側は省庁間で連携しなかった。

それぞれが事実上の米国の出先機関と化し、日本国として複数の指があっても一つの手として自律的に動くことのできない状態だったのだ。
特に外務省と国務省との間では、ライシャワー元駐日米大使(在任1961~66年)にちなみ「ライシャワー・ライン」と呼ばれる人脈があり、日本の軽武装、専守防衛、自衛隊の海外派遣禁止にこだわり続けた。
安倍氏の下では、外交官と自衛隊関係者が意見を交わし、日本が自らの手で外交・安保政策を作り上げる体制ができた。
安倍氏は、日本外交が独立性を増し、適切な責任を負うことで、日本が米国のより良き同盟国になることができると確信していたのだ。 
その意味で、国家安全保障局の設立は、安倍氏の指導力なしでは実現し得なかった、外交・安保分野での最大の遺産といえる。
日本外交の「革命」を継げ
安倍氏は、関係省庁の権限を国家安全保障局に集約させ、日本の政策決定過程を変え、政治構造を変えた。
諸外国では、似たような組織をつくっても各省庁が自らの権益を優先させて優秀な人材を出し渋り、役に立だないことが多い。
日本では谷内正太郎氏という傑出した人材が初代の国家安全保障局長を務めたほか、外務省などから優秀な職員らが送り込まれ、発足初日から機能した。 もう一つの遺産は「独立した外交政策」だ。
例えばロシアとの関係だ。
安倍氏は、北方領土が返還される見通しがないことは最初から分かっていたが、プーチン露大統領と対話することで、日本には米政策の延長ではない独自の外交政策があることを見せつけようとした。
また、世界各国・地域を附瞰する「地球儀外交」を通じ、中国に隣接するカザフスタンやミャンマーとの関係強化にも努めた。
インドとの関係を緊密化したことも非常に大きな貢獸だ。
安倍氏は、モディ首相が西部グジャラート州首相だった2007年頃から交流を重ね、日印関係を飛躍的に前進させた。
日印の艦船による合同訓練も行われるようになった。
強固な日印閔係は、中国に対する防壁になるという意味で非常に重要だ。
安倍氏が実行したのは日本外交の「文化革命」で、後戻りすることはない。
民主党の菅直人政権下の10年に尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりした事件で、中国の圧力に屈して、逮捕された漁船の船長が釈放されたような事態は二度と起きないはずだ。 
今月10日の参院選では自民党などの改憲勢力が議席の3分の2以上を確保したが、安倍氏は自身の目で見たかったことだろう。

一方で、少子化などの社会問題では、安倍氏は外交・安保政策で見せたような指導力を発揮し切れず、多くの課題が残された。
いずれにせよ、岸田文雄首相を筆頭とする安倍氏の後継者たちは、安倍氏が持ち合わせていた、何者にも臆することなく日本の最終的勝利を確信して行動した「勇気」を受け継いでいかなくてはならない。
特に中国への対処には、こうしたブレのない心構えが最も大切なのだ。
   (聞き手 黒瀬悦成)




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