文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

香港ドルと米ドルの交換を禁止する構えをみせた…流入外貨の6、7割を香港に頼っている中国経済の死活問題になる…米中貿易戦争と合わせ、習政権は米国に対し、大敗北したことになる

2020年04月07日 14時48分30秒 | 全般

以下は前章の続きである。
外貨いらずの受注策
グラフ3は中国の外貨準備と対外金融負債の前年比増減額と資本逃避の推移である。
外貨流入の主力源は対米貿易黒字だと前述したが、厳密に言えば中国の外準は対外貿易収支全体を含めた国際収支の黒字と外部からの負債の合計で決まる。
しかし、資本が外部に逃避するなら、外準はその分減る。
グラフを見れば、資本逃避は2015年から年間で2000億ドルを超え、習政権による締めつけによって18年には少し縮小したが、昨年からは再び増勢に転じた。
その中で、外貨を確保するためには対外負債を増やさざるをえない。 
巨額の資産を非合法に国外に持ち出すのは、既得権を行使する党幹部だとみられ、その資金逃避先は香港である。
中国の富裕層や大手企業は香港に拠点を設け、その香港法人がさらにカリブ海などのタックスヘイブン(租税逃避地)にペーパーカンハニーを設立し、資産を移す手法が一般的だ。
習政権は18年夏から不正蓄財を理由に香港ルートの取り締まりを強化してきたが不調に終わっている。 
さらに昨年には香港行政府に圧力をかけ、金融関係なども含む犯罪人引き渡し粂例の改止を強要したが、香港の高度な自治を抑圧すると反発した香港の若者の激しい民主化運動に直面し、結局条例改正撤回に迫い込まれた。
しかも、トランプ政権は米議会の香港人権法に署名し、習政権が香港の民主化運動を弾圧すれば、香港ドルと米ドルの交換を禁止する構えをみせた。
そうなると、流入外貨の6、7割を香港に頼っている中国経済の死活問題になる。
米中貿易戦争と合わせ、習政権は米国に対し、大敗北したことになる。 
そんな有り様では、一帯一路どころではなくなるように思えるが、習政権の攻勢は一向に衰えない。
グラフ4は一帯一路プロジェクトの契約と実行べースの推移である。一目瞭然、契約べースでは大幅にプロジェクトを拡大させている。
それに引き換え、外貨を使う実行べースは極端なまでに低水準である。
なのに、中国はアジア、アフリカ、中近東などで相次いで港湾や空港、鉄道などのプロジェクトを完成させている。
この秘密は、中国側が外貨をほとんど必要としないからくりにある。 
つまり、現地プロジェクトは中国企業がほぼ全面的に受注し、関連労働者も中国人を大量に引き連れる。
このため、プロジェクト遂行に必要な資金は中国の国有銀行が国有企業に人民元で融資し、人件費の大半も人民元で済む。
相手国政府と交わすプロジェクト契約では、現地政府が負う債務はドル建てとなっている。
貧しい途上国はこのドル債務を返済できなくなれば、中国側が建設した港湾などを100年近く占有する権利行使する。
中国にとって一帯一路とは、モノや人の輸出を通じた外貨獲得策であると同時に、占有したインフラを軍事転用して勢力圏を拡張する膨張戦略なのである。
この稿続く。

 

 

 

 

 

 


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