文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

また彼らの憎しみは、そのときどきの政治情勢によって蛇口を開閉され、いつでも必要な時に私たちを襲う。 

2020年06月19日 15時20分58秒 | 全般

櫻井よしこさんは最澄が定義した国の宝である。
それも至上の宝である。
櫻井よしこさんの連載コラム「ルネッサンス」は高山正之と共に、毎週、週刊新潮の掉尾を飾っている。
「国恥(筆者注;中国人の頭の中に在るもの)を忘れるな、中国の暗い原動力」と題して掲載している今週号の論文は日本国民のみならず世界中の人たちが必読の論文である。
世界に武漢ウイルスを拡散させ、すでに43万人の命を奪っているにもかかわらず、中国政府も中国人も反省の姿勢を見せないどころか、いまや次の世界秩序を構築し、世界を主導するのは中国に他ならないと主張する。
横柄というべきこの態度はどこから生まれてくるのだろうか。 
右の疑問は日本だけでなく、多くの国々の多くの人々が抱いているに違いない。
そうした問いに汪錚氏の著書『中国の歴史認識はどう作られたのか』(東洋経済新報社・伊藤真訳)が答えてくれる。 
汪氏は、中国人は、この世の中の最も優れた民族は中華民族であると信じていると強調する。
古来より中国が周囲の民族を東夷西戎南蛮北狄と呼び、蛮族ととらえてきたのは周知のとおりだ。
中華民族は優れた文化・文明を有し、その徳によって国を治めていると自負し、周囲を軽蔑してきた。
その意味で中国は人種差別の色彩が濃い社会だと言ってよいだろう。しかし、同時に「蛮族」が中華の教えに従い、中華文明に染まり、中国人になるのであれば、中国は受け入れてきた。
その点で中華民族は寛大であると、彼ら自身は考えている。 
中国人の心理を理解するには彼らの誇りと愛国を支える三つの要素を知っておくべきだと、汪氏は言う。 
①選民意識、②神話、③トラウマである。 
①は、古代に遡る。古代中国人は自分たちは世界の中心の聖なる土地に暮らす選ばれた民だと信じた。
中国の哲学、習慣、文字などが近隣諸国に広まり「一種の師弟関係」を近隣諸国との間に結んだことで、中国文明の普遍性や優位性を強く確信するに至り、選民意識が深く根づいていったというのだ。
中国人のコンプレックス 
選民である民族の物語は②の神話となって、これまた中国の人々の心に定着した。
だがそれを打ち砕いたのがアヘン戦争以降「恥辱」の一世紀だった。③のトラウマである。 
恥辱の一世紀は以下の6度にわたる戦争から成る。
①第一次アヘン戦争(1840~42年)、
②第二次アヘン戦争(56~60年)、
③日清戦争(94~95年)、
④義和団事件(1900年)、
⑤満州事変(31年)、
⑥日中戦争(37~45年)である。 
ここで日本人の私たちが注目すべきことは6度の戦争の内、4度までも日本が関わっていることだ。
日清戦争でも義和団事件でも中国は無残に敗れた。
日本が完璧に勝った。
中国側は日中戦争には勝ったが、それは日本が米国に敗れた結果にすぎない。
彼らはそのことでも誇りを傷つけられていると、汪氏は解説する。 汪氏の著書の帯には「なぜ日本人はかくも憎まれるのか?」と書かれており、第3章では蒋介石が日記に「私は倭(日本人ども)を滅ぼし国恥を雪ぐための方策を記すことにする」と繰り返し書きつけていたことが紹介されている。
まさに中国人のトラウマは、自分たちよりも劣ると見做していた日本人との戦いに敗れたことから生まれたというのだ。
その分、日本と日本人は格別に憎まれていると心得ておくのが正解なのである。
また彼らの憎しみは、そのときどきの政治情勢によって蛇口を開閉され、いつでも必要な時に私たちを襲う。 
中国社会の深部にこびりついている選民意識、中国の偉大さについての神話とそれを打ち砕かれたトラウマが複合して生まれた心理、中国人のコンプレックスを知ることなしには、現在の中国人の行動や中国共産党政権の世界戦略を真に理解することはできないと、汪氏は強調する。
この稿続く。 


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