文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

すなわち、この事態に戦々恐々としているのは、お膝元の香港政府より、米中貿易戦争でも極限まで追い詰められている習近平政権なのだ

2019年07月05日 17時18分01秒 | 全般

以下は月刊誌WiLL8月号に、「香港200万人デモ」日本の電波芸者はなぜダンマリなのか、と題して掲載された気鋭のノンフィクション作家である河添恵子さんの目の覚めるような論文からである。
どうする習近平、天安門のときと同じようにはいかないぞ!
行政長官は“パペット”
「今、活動しなければ明日はない」 
6月9日、香港を舞台に大規模デモが起きた。
プラカードには、このような決意めいた文字も躍った。
主催者発表によると参加者103万人(警察発表24万人)。
香港の主権が英国から中国に返還された1997年7月1日以来、最大規模のデモとなった。 
若者たちが掲げるプラカードに記された「反送中」の文字は、香港立法会(議会)が、中国本土への容疑者引き渡しを可能とする「逃亡犯条例」改正案の審議を始めていることへの抗議である。
可決されれば、「反体制派」とされる活動家やジャーナリスト、弁護士、さらに外国人ですら、さまざまな理由をでっち上げられ、中国へ身柄を連行される危険性が高まる。 
要するに、私のようなライターには中国本土に加えて香港も危険地域となるわけだが、駐在員や留学生にも安心な地ではなくなる。 
なぜなら、SNSでたとえば「香港加油(香港頑張れ)」「中国共産党は嫌い」などと書き込んだ類ですら、マークされる可能性がゼロではないためだ。 
この度のデモの最中、「香港ドルを米ドルに両替した方がいい!」と書き込んだ若者に、中国のネットポリスらしき者から大量に恫喝文が届いたとの話も聞いた。 
しかも、中国系銀行に預けた市民の預金口座は、すでに、一定額以上の米ドルヘの両替が即時にはできなくなっているらしい。 
雨傘革命が起きた2014年秋、若者の一人は、「中国は監視社会。香港もそれがさらに強まりそう。多くが閉塞感や目に見えない恐怖を感じている」と語っていた。 
その後も、見せしめの拘束は相次ぎ、自由と民主が大幅に後退し、格差は広がり続け、生活全般が悪化の一途をたどっていた。
「一国二制度」が危機にさらされる中、議会が「逃亡犯条例」改正へ審議を進めるタイミングで、怒りが沸点に達していた香港住民らが立ち上がったのだ。 
香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は、12日、地元テレビ局のインタビューで、「改正案を撤回しない」ことを明らかにし、デモを「組織的な暴動行為」と非難した。 
しかし、15日午後には、「審議を延期する」と述べるなど二転三転している。
なぜか? 
彼女は香港の行政長官ではあるが、“パペット”だからだ。 
週末の16日も、香港中心部で、再び大規模デモが決行された。
規模はさらに拡大し、主催者の発表では香港史上最高の200万人近く(警察発表33万8千人)が立ち上がった。
この空前絶後の香港デモの背景には、中国共産党内部の死闘、最終決戦がある。 
その詳細は後述する。
戦々恐々とする習近平 
香港でデモが起きた9日には、米国のサンフランシスコとロサンゼルス、英国のロンドン、カナダのバンクーバーとトロント、オーストラリアのメルボルン、東京など、華僑華人や中国系新移民が多い都市でも「反送中」デモや記者会見などで連帯した。 
全世界に“繁殖”した親中派の議員や大メディアは、こういった動きをスルーしたわけだが、「自由と民主」を支持するか、中国のイヌを続けたいかの“踏み絵”が世界で始まったと考えられる。 
一方の中国は、「デモ」が人民に飛び火しないよう、ネット空間はいきなり通信障害に陥っている。 
フリーWI‐FIが使えず、ソーシャルメディアも機能不全となり、情報が抜き取られたり、消えたりしているのだ。
公安当局側による措置とみられる。 
すなわち、この事態に戦々恐々としているのは、お膝元の香港政府より、米中貿易戦争でも極限まで追い詰められている習近平政権なのだ。 
習主席をはじめとする最高幹部7人(中国共産党中央政治局常務委員・チャイナセブン)と、王岐山国家副主席の8人が密室会議を行ったことや、元最高幹部の長老らが香港と近接する広東省へ移動したといった情報も漏れ伝わる。 
新旧共産党最高幹部らの脳裏に浮かぶのは、「事実を隠蔽した」つもりでいる1989年6月4日、北京で起きた「天安門事件」のはずだ。民主化運動を推し進める学生たちが、人民解放軍の装甲車の下敷きとなった流血の大惨事について、英国の情報機関によれば、2万人以上が死亡、虐殺が行われた」という。 
今回の香港デモでも、警官隊は12日、多数の催涙弾やゴム弾をデモ隊に撃ち込み、トウガラシスプレーを浴びせかけ、すでに怪我人が多数出ている。
だが、これで非常事態を収束させられるとは思えない。 
香港発のSNSを見ると、地下鉄構内で、警官隊が身体検査を行っている写真と共に、「人民解放軍が警官の制服を着て、警官になりすまし、若者たちを取り調べしている!」「(香港では広東語を話すが)警官隊から北京語の会話が聞こえた」という警告が確認できた。
「中国から武装警察が投入されている。知人の武装警察官が写っているから間違いない!」との書き込みもある。 
反中国共産党系メディアは、香港デモが始まって早々から、「南部戦区(司令部・広東省広州市)と香港の人民解放軍がスタンバイしているとも報じている。
デモの中にスパイがいる 
香港デモが勃発した同日、(私は日頃、テレビをほとんど観ないのだが)、大メディアがどの程度報じたか、確認をしたところ、日本のテレビ局は、きちんと時間を費やして報じてはいなかった。 
NHKの海外向けテレビ放送で、香港のデモ関連のニュースを伝えた際、映像と音声が遮断されて画面が真っ黒になったという。
これは何十年も前から、中国共産党が人為的に仕掛ける“放送事故(報道規制)”なのだが、なぜ、そこで日本の公共メディアが怯み続けるのか? 
中国サマに嫌われたら出世できない、支局が閉鎖されるなどと保身に走って独裁政権=中共に従う悪循環を続けている。
ならばNHKは日本国民からではなく、約9千万人いる中国共産党員から視聴料を徴収すべきだ。 
さらに日頃は「人権」「自由」「民主主義」の美辞麗句を並べ立てる左派議員や電波芸者(テレビ専門のエセ評論家)も、ダンマリを決め込むか、中国サマに嫌われそうな発言は絶対にしない。 
「香港デモ」の真意は、イギリスとの約束を反故にし、一国二制度を形骸化させた中国共産党政府への「NO」である。
さらに言及すれば、欧米諸国は世界の秩序を破壊する中国の独裁政権を瓦解させていく方向へ、「人権」「自由と民主」をカードに最終決戦に挑んでいる。 
愕然としたのは、毎日新聞などが香港デモを応援するため渋谷に結集した日本の若者たち―SEALDSの元メンバーらを再びクローズアップしたことである。
そのセンターに陣取っていたのは、「『辺野古』県民投票の会」代表の元山仁士郎氏だった。
基地移転に関する二月の沖縄県民投票の前に、ハンストを主唱した大学院生(休学中?)である。 
「元山仁士郎代表が宜野湾市役所前でハンガーストライキを始めてからは、全県実施を求める支持者からの突き上げは一層強まり、公明党県本が与党側に歩み寄りを働き掛けるなど政治的解決を探る動きが急転直下で浮上した。 
高まる県民の不満 瀬戸際で妥協案急浮上」(日本共産党のツイッターより・一月二十日) 
このツイッターでわかる通り、元山氏は日本共産党、そして、赤旗新聞にヒーローのように扱われてきた人物なのだ。
沖縄の保守は、「元山氏が代表の『辺野古』県民投票の会は、共産党のダミー団体」と語っていたが、バリバリの左派活動家が、「自由と民主」「反共産党」で立ち上がる香港人を応援……。
このシュールな記事に、良識ある国民は違和感を覚えないのだろうか? 
「香港市民は、当局の鎮圧に恐怖を感じているし、抗議デモの最前線にいる若者の身の安全をとりわけ心配している。でも、香港人にはもう他の選択肢がない。自由のために犠牲になっても構わないと皆そう思っている」 
これは反共産党系メディアに記された内容だが、「中国共産党員ではない」香港住民の偽りのない感情のはずだ。
ジャーナリズムは一体どこへ消えたのか? 
中国の官製メディアについては、在外中国人も失笑している。
デモ発生からしばらくは「静か」だったが、その挙句の報道は、「デモが一部暴徒化したことから、香港警察が制圧」と事実をすり替えたのだ。 
また、外交部の耿爽報道官は、10日の記者会見で、「80万人の香港市民が条例改正案を支持する署名活動に参加した」と述べ、共産党お抱えの英字メディア『チャイナーデイリー』も「香港で集まったら80万人は逃亡犯条例改正案を支持している」と連動した。 
大紀元時報の記者による情報だが、ネット上でまずこの署名活動への参加を呼び掛ける投稿が、ご丁寧にリンクと共に拡散されたという。
中国共産党の手足のネットポリスの仕業だと考えられる。
しかも、一人が何回でも署名でき、名前も偽名どころか「ABCD」と入力して、身分証明書番号を「1234」としたところ署名が完了したというのだ。 
さて、香港のデモ参加者の多くは、地下鉄の移動等で使っているオクトパスカード(交通カード)を使わず、現金でチケットを購入しているという。
キャッシュレス社会はすなわち監視社会。
いつどこに誰が移動したかが、バレるからだ。
また、ガスマスクやゴーグルなどでデモの最前線は顔を覆った。 
だが、大多数の純粋なデモ参加者に混ざって、中国共産党のスパイが監視している。
30年前の6月、天安門事件に至る前から、北京だけでなく日本でも民主化を求める集会などがあった。
この後、中国人の若者たち(現在は五十代が中心)の人生はくっきりと明暗を分けた。 
民主化デモに参加しているフリをしながら、学生を監視する側だった工作員は、密告によって出世をしている。
国費で大学院に進学した者もいる。
デモ参加後に米国や豪州などへ逃亡した中にも、中国当局と手打ちをして工作員になったり、投資家など成金の道を歩んでいる類がいるのを知っている。
敵=中国共産党の監視は、近年、ネット空間のみならずアナログとの両方で、より強化されていることを忘れてはならない。

この稿続く。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。