以下は今月号の月刊誌WiLLに、NHKは朝日より質(たち)が悪い、高池勝彦・弁護士×小山和伸・神奈川大学教授・メディア報道研究センター理事長、と題して掲載された対談特集記事からである。
朝日は読まなければいいが、NHKはテレビがあるだけで金を取られる……
都合のいいダブルスタンダード
高池 NHKの偏向報道について忘れられないものがあります。
最近出版した『反日勢力との法廷闘争i愛国弁護士の闘ひ』(展転社)にも書きましたが、平成21年に放送された「JAPANデビュー」という番組です。
その第1回「アジアの“一等国”』は、あまりに偏向していて、憤激した日本人と台湾人合計10,335人が損害賠償を求めて裁判を起こしました。
日本は先進国の一員となるために、帝国主義の先進国の真似をして、劣悪な台湾統治をしたという面だけを強調した酷い放送だったのです。
小山 そうでしたね。私は、「51年目の戦争責任」という番組を許すことができません。
この番組のことは『これでも公共放送かNHK!―君たちに受信料徴収の資格などない』(展転社)にも書いたんですが、『陸支密大日記』という軍の資料の内容を百八十度改ざんして放送したのです。
『陸支密大日記』には「慰安所の業者で、軍との関係を吹聴したり、女性を騙して無理やり連れてきている不正な業者がいるので、軍と警察で連携して取り締まりに万全を期すように」といった内容が書かれています。
しかし、NHKは都合のよい言葉だけを並べて、「軍と警察が関与して女性狩りをしていた」という放送をしたのです。
もう椅子から転げ落ちそうになりましたよ。
すさまじい改ざんです。
私はすぐNHKに抗議して、電話で40分ほど論争しましたが、最後は担当ディレクターが間違いを認めました。
その時は内容証明で「同じ時間帯に同じ長さで報道し直して謝罪しなさい。そうしなければ受信料は払わない」と言って、それ以来、受信料は払っていません。
高池 今話した「JAPANデビュー」や「51年目の戦争責任」のように全体が酷いものもあるのですが、最近は視聴者の目が厳しくなってきているので、随所で細かいところの印象陳作が酷くなっている印象を受けます。
つい先日も、戦前の日本の検閲を研究している大学教授の特集をやっていましたが、戦後のGHQの検閲のことには全く触れないんです。
小山 NHKの方こそ、「報道しない自由」とか主張して、検閲を行っていますよね。
朝日新聞は吉田清治が『私の戦争犯罪』に書かれていることは「嘘だ」と言ってから長い時間が経ってからですが、謝罪をしました。
しかし、NHKは謝罪していないんです。
しかも朝日は読まなければお金は取られないけれど、NHKはテレビを持っているだけでお金を取られる。
NHKは朝日新聞よりも質が悪いと思いますよ。
高池 放送法について、以前、高市早苗総務大臣(当時)が「放送法第四条を守らない場合には電波を停止する可能性がある」という発言をした時に、メディアは大バッシングをしました。
「第四条は単なる倫理規定だからなくてもいいんだ」という論調もありました。
しかし、最近、放送法を改正しようという声が上がった時には、「フェイクニュースやヘイト報道が増えるから残すべきだ」と言うんです(笑)。
本当にダブルスタンダードもいいところですよ。
〈放送法第四条〉 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
小山 彼らは放送法第四条を「私たちは法律の下に電波を流す免許をもらっているんだ」という権威付け、「錦の御旗」として使っているんです。
この問題は政治の世界でも長いこと封印されています。
高市さんの時のように、政府の立場で放送法のことをしゃべると「報道への介入だ」なんて言われてしまうからです。
昔は、昨年亡くなった衆議院議員の三宅博先生が、私の本をNHK役員たちの前にかざしながら質問してくれたんです。
「このような放送を本当にやったのか。やったとしたら大問題だ」と。
当時の籾井勝人会長は「我々は常に公平中立な立場で良質な放送を心がけています」の一点張りでしたが。
高池 NHKは「いい番組を作るには費用がかかる」ということを言っています。
これには一理あると思うんです。
例えば、密着モノや「世界の大自然」のようなものは、確かにお金をかけている分、いい番組があります。
小山 「美味しい料理も出すんだけど、たまにゴキブリが入っているレストラン」という感じです。しかし、これはいただけないんですよね(笑)。
高池 その通りですね。
この稿続く。