以下は加地伸行さんの以下の本からである。
正に名著である。
全国民必読の書でもあるが、今回の10連休の旅の途中に読む本としても最適な本である。
私の勧めを信じて最寄りの書店で購入した人達は皆、私に同意するはずである。
永久謝罪論というファシズム-山崎正和の言説
老生、現役を引退してからは、現役担当者から現場のことを教えてもらっている。
先日、おもしろい話を聞いた。
近ごろの中・韓の下品で大嘘つきの言動に嫌気が差して、中国や朝鮮半島の研究や専攻を志望する学生が減ってきているとのこと。
なるほど。それはありうる。
かつて中国語学習ブームがあった。
それはもう下火。
つまり現在は、中国や朝鮮半島にとって、自国のことを理解してくれる若い日本人を失い、眼には見えないものの、大損を蒙っているということだ。
しかも、中・韓が声を大にしたとき最も影響を受けやすかった日本戦後教育の初期受洗者すなわち団塊世代が次々と現役引退をしている今、以前と同じ調子で喚いても、日本の世論に以前ほどの効果はなくなってきている。
第一、中・韓が頼りとする日本左翼において、これという論客はもうほとんどいない。
いたとしても大半は逃げてしまっており、発言しなくなってしまっている。
それはそうだ。
日本の左翼が〈祖国〉と崇め奉っていたソ連邦は消え、共産主義を現実化すると称した中華人民共和国の今の〈金銭(ぜに)まみれ〉をありかたく戴いて発言することなどできるわけがない。
と思っていると、いや、日本が悪いのですと、依然としてそう発言するとんでもないのが出てきた。
山崎正和・劇作家の文に、なんと「日本人にとって、選択できる道は一つしかない。たとえ個人的には身に覚えがなくとも、全国民を挙げてかつての被害国に謝罪をつづけることである」原文のママ。『潮』平成25年11月号、25ページ)とある。
もちろん中・韓に対してである。
日本には言論の自由があるので、意見をどう述べようと構わない。
しかし、それを他者に強制することは、あってはならない。
ところ、が、山崎某のこの短い文章において見逃すことのできない強制のことばが、すくなくとも三個ある。
すなわち、①「道は一つしかない」、②「全国民」、③「つづけることである」の三者である。
とりわけ「全国民」。
これは一人残らずということだ。
例えば「全国民は交通規制を守らねばならない」というのは問題ない。それは、法の順守の義務づけだからである。
しかし例えば「全国民は恋をしなければならない」などというのは、個人の感情の問題なのであって強制などできない。
けれども山崎某は、「全」という高圧的な見方に立って謝罪せよと言い、それも果てしなく(時効はなく)続けよと述べ、そういう道があるのみと限定しているのである。
それは、俗に言う〈ファシズム〉的発言である。
己れの立場という一つのありかたしか許さないというのであるから。 愚かな話である。
顧みれば、人類の歴史において、加害・被害・抗争・戦争……そうした不幸は絶えずあった。
しかし、そうした不幸も、講和条約あるいはそれに類した条約を結んだあとは、おたがい言い分、が仮にまだあるとしても、それはもう言わないで、両国は新しい友好関係を結びましょう、作りましょうというのが人類の知恵なのである。
その典型が日米関係である。
両国はすさまじい戦争を行った。
たがいに言いたいことは山ほどある。
しかし、日本は敗者としてのいろいろな犠牲を払いつつも、ともあれ講和条約を結び、この条約を結んだあとは、両国は新しく友好関係を結んで今日に至っている。
同様の法的和解を日本は中国や韓国に対して行ってきたのであり、それをもって国家としては過去のことについてお互いもう問わないとするのが、人類の知恵なのである。
その知恵を学ばず生かさず、「個人的には身に覚えがなくとも」謝罪を続けよなどと言うのは、中・韓の回し者のような発言である。
古人曰く、成事(できたこと)は説かず。遂事(すんだこと)は諌(いさ)めず。既往は咎めず、と。
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