文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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The time of Japan, the time of the world

政治家、とりわけ与党政治家がメディアの負のエネルギーに引き込まれる。議論さえできず、何も生み出し得なかった悪しきサイクルを、与党よ、またもや繰り返すのか

2019年08月05日 18時37分54秒 | 全般

以下は今日の産経新聞の一面に「萩生田報道に違和感」と題して掲載された櫻井よしこさんの論文からである。
彼女は最澄が言うところの国寶であり、国民栄誉賞に最も相応しい人である。
7月26日、私の主宰するインターネット番組「言論テレビ」に自民党幹事長代行、萩生田光一氏が出演した。
その時の氏の発言をめぐる一連の報道には印象操作の疑念を拭い得ない。 
27日、時事通信は、萩生田氏が「憲法改正の国会発議に向け大島理森衆院議長を代える可能性に言及した十「強引に改憲を進めようとする姿勢を示したものとして野党側が反発しそうだ」と報じた。 
30日、「朝日新聞」の大久保貴裕記者は「萩生田氏の議長交代論 波紋」の見出しで、萩生田氏が「衆院議長交代論」を「不満をにじませ」展開したかのように報じた。
が、番組の当事者である私は氏が不満をにじませた場面などなかったと思う。 
朝日はまた政権幹部が「『議長の人事に口を出すなど処分ものだ』と怒りをあらわにした」、
共産党の小池晃書記局長も「『議会制民主主義の根本をひっくり返すような発言だ』と反発した」とも報じた。 
その他のメディアもコメン卜した人々も、言論テレビの番組全体を本当に見たのか。
見ていたら、こんな解釈にはならないだろう。
そこでまず、事実関係を紹介する。 
参院選が終わり、国際情勢激変に直面し、憲法改正は喫緊の課題だという問題意識で7月26日の番組に臨んだ。
論者は萩生田氏に加えて産経新聞前政治部長で政治ジャーナリストの石橋文登氏らである。
選挙結果は自民、公明の与党にとって、「改憲勢力」が国会発議に必要な3分の2に4議席不足という微妙な勝利だった。
憲法改正には幅広い協力が必要となったことを萩生田氏は歓迎して語った。  
「憲法は51対49で決めるものではない。マイクの奪い合
いをしながら投票して、国民にその案を示すなど考えていない。最大公約数で、静かな環境で野党の皆さんともまとまるところを国民の皆さんに示していきたい」 
憲法審査会の規則では憲法改正案は過半数で決定可能だ。
しかし萩生田氏は、自民党はそうした強硬策ではなく、公明党は無論、日本維新の会、国民民主党、保守系無所属などと幅広く語り最大公約数を目指すと語ったのだ。
小池氏の『議会制民主主義をひっくり返す』という非難の対極にある穏やかな考えだ。 
番組ではその後、憲法改正には何よりも自民党が積極的になるべきだという観点から、石橋氏が政界中枢の個人名を挙げて分析した。  
「今回は珍しく、衆院議長人事が最も注目される。憲法審査会は国会の話、政府ではない。大島さんも随分長いし本当に融和派で動かない。与野党にかなり力のある議長でないと駄目かなと思う。そう考えれば二階さんだ」
時事、日経、毎日、産経なども9月の内閣改造・自民党役員人事の焦点が二階俊博幹事長だと報じている。
番組では他の関連人事の話が続き、私は石橋氏に、仮に二階氏が衆院議長となれば、それは安倍首相の改憲に懸ける本気度を示すのかとただした。 
石橋氏は「弱い議長では院は動かない」として、そうだとの趣旨で答えた。 
次に私は萩生田氏に、野党にもにらみが利く実力者を議長にすることは、首相の憲法改正への熱意を示すことになるのかと、議長職の役割に焦点を当てて問うた。
対して萩生田氏が議長の職責を説明した。  
「憲法改正をするのは首相ではなく国会だ。本来、国会議員が審査会を回していかなければならず、最終責任者は議長だ。大島議長は立派な方だが、調整型だ。野党に気を使いながらも審査を進めるのも議長の仕事だ。いまのメンバーでなかなか動かないとすれば、有力な方を議長に置いて、憲法改正シフトを国会が行うのは極めて大事だ」 
萩生田氏の発言は議長職の役割の具体的説明であり、現在、詳細の全ては言論テレビのホームページで視聴することができる。 
朝日新聞は言論テレビでの議論の内、本件前段部分、すなわち石橋発言を削除して報じた。
ベテラン政治記者の鋭い嗅覚が導き出した論点が議長交代論だった。
そこを省いたのは、萩生田氏攻撃と朝日の信条、九条擁護に発する、憲法改正に向けたいかなる動きをも阻止する意図ゆえではないのか。 
悪名高い慰安婦報道の検証で第三者委員会が指摘した「ニュースに角度をつける」朝日の悪しき手法への批判が脳裏をよぎったのは自然なことであろう。
朝日はまた、言論テレビを引用しながら、情報元を 「インターネット番組」としか書かない。
引用に際して情報元を明記するのは、記者、研究者が守るべき最低限のルールだ。
朝日の引用は曖昧でずさんである。
報道倫理にも著作権法にも違反するのではないか。 
今回の問題はメディアの枠内にとどまらない。
萩生田氏が議長職の説明で踏み込んだとしても、言葉尻をとらえて論難するメディアに党の有力者が乗ること自体が問題だ。 
首相候補に名を連ねる石破茂氏は「党の幹事長代行が衆院議長の人事に口を出すのは恐ろしいことだ」と非難したが笑止千万である。
第一、石破氏は番組を見たのか。
また、議長人事はそれほど聖なるものか。
聖なる存在足り得る権威を議長は築き上げてきたのか。
国民、国家のために粉骨砕身する議長の姿は私には絶えて久しく見えない。 
日米同盟への不満が米国から頻々と伝わってくるいま、日本の自立度を高める憲法改正こそ国益で、国民の命を守ることだ。
その大目標達成の好機を戦後初めて与えられていたこの3年間、一体何をしたのか。
議長は細部には介入しない、憲法審査会の議論は議長責任ではないというのか。
天の意思は些事に宿る。
大事を前にした言い訳は責任逃れのそしりを免れない。 
立憲民主党国対委員長、辻元清美氏は萩生田発言について「憲法議論は10年遅れたのではないか」と語った(朝日新聞デジタル8月1日10時51分)。 
国民を愚弄するのか。
公職選挙法同様の国民投票法改正で有権者に便宜をはかるための法案に反対し続ける立憲民主こそ、民主主義を阻む諸悪の根源だと自覚すべきだ。
政治家、とりわけ与党政治家がメディアの負のエネルギーに引き込まれる。
議論さえできず、何も生み出し得なかった悪しきサイクルを、与党よ、またもや繰り返すのかと、私は厳しく問いたい。


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