以下は21世紀に生きる人間で真実を知りたいと思う人間には必読であると私が購読を薦める月刊誌4誌の内のWiLL今月号に掲載された、北海道地震「ブラックアウト」をどう見るか、と題して掲載された門田隆将氏の連載コラムからである。
文中強調は私。
「真冬でなくてよかった……」電力の専門家たちは、顔を見合わせてそう囁きあっている。
九月六日深夜三時過ぎに起こった震度七の北海道胆振東部地震で生じた全域停電についてである。
道内の電力の約半分にあたる百六十五万キロワットをつくりだす北海道電力の苫東厚真火力発電所が地震の直撃を受けて停止。
これによって道内に張りめぐらされた電力網全体の需給バランスが崩れ、「ブラックアウト(停電)」という恐ろしい事態に陥ってしまったのだ。
「泊原発が稼働していなかったからこうなった」という論と、逆に「もし、泊原発が稼働していたら、もっと悲惨なことになっていた」という真っ向から対立する議論まで巻き起こっている。
冒頭の「真冬でなくてよかった」というのは、「もし真冬だったら、凍死者がどのくらい出ていたのか想像もつかない」という意味である。
電力の安定供給が維持されている日本では、停電は滅多なことでは起こらない。
だが今回は、震度七という激震によって北海道で想定外の出来事が起こったのだ。
電力技術者の解説によれば、「電気はためることができません。そのために常に需要と供給のバランスをとっているのです。今回、地震で全道のほぼ半分の発電量を持つ苫東厚真火力発電所が緊急停止しました。しかし、夜中とはいえ、札幌などの大都市では電気の需要が続いていた。それによって使用量が発電の供給力を上回って需給のバランスが崩れ、周波数が一気に低下してしまったのです」
発電機は周波数が乱れて負荷がかかると損傷する。これを防止するために、ほかの発電所が次々と自動停止し、ブラックアウトに陥ったのだ。
「一時は、バランスを回復させようと一部地域を強制的に停電させて需要を落とし、さらには本州からの送電の支援で持ち直しましたが、結局、周波数の急落を防ぎきれず、事態を回避できなかったのです」
泊発電所が稼働していれば、果たしてこんな事態にはならなかったのだろうか。
「結果論から言えば、今回の地震で、実際に日本海側に面する泊原発で検知された揺れは十ガル以下でしたから、泊原発が動いていたら、電気は無事、供給されていたでしょう。つまり、電気の流れは問題なかったと思います。そもそも泊原発が動いていないために、苫東厚真火力発電所に頼りすぎていたわけです。泊原発が仮に稼働していたら、二重の意味でブラックアウトになることはなかったと思います」
泊原発は、現在、国内で安全審査を通過して稼働している九基と同様、すべてPWR(加圧水型軽水炉)である。
しかし、昨年三月、原子力規制委員会は泊原発に関して、積丹半島の西側海底に「活断層の存在を否定できない」という見解を打ち出した。活断層が存在するという科学的根拠はなく、「存在を否定できない」という曖昧な見解によって稼働のメドが立たず、北電は頭を抱えた。
一つの火力発電所が全道の半分の電力を賄うという“歪な”態勢での運用は、結局、今回の前代未聞のブラックアウトを生んだのである。
電力には、さまざまな意味でリスクを分散することが必要だ。
発電方法や、発電所の位置も、あらゆる災害や不測の事態に備えて考察しなければならない。
再生可能エネルギーの限界がドイツで明らかになる中、自然災害が多発する日本がどう電力を賄っていくかは、冷静に考えていかなければならないはずである。
ある東電の関係者はこんなことを明かす。
「湾岸にある火力発電に供給を依存している首都圏を大地震が襲った時、仮に原発が動いていなかったら電力不足が生じ、大パニックが起こると思います。今年はもの凄く暑かったですよね。幸い停電は起きなかったですが、実は工場など大口のお客様の電気を何日か切ったことがあります。これは “デマンドレスポンス”という特別の契約に基づくものですが、大停電を防ぐためにこれを発動して、切らせてもらったんです。一般メディアが報道していないのであまり知られていませんが、実は今年の冬にも電気が足りなくなって、これを発動させてもらいました。今夏、病院で熱中症で亡くなった患者のことがニュースになりましたが、他人事ではないのです。首都圏を大地震が襲った場合、柏崎刈羽原発が動いていなかったら、電力の供給の面で本当に危ないと思いますよ。今回のブラックアウトがなぜ起きたのか、忘れてはならないと思います」
大災害に備えて、なにより必要なのは「リスク分散」である。
イデオロギーや感情論を超えて、北海道地震を教訓に、あらゆる意味での冷静な議論を待ちたい。