文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

歴史を国民の手に取り戻すためには、これまで意図的に無視されてきたことを、一つひとつ取り上げていく必要がある。 

2019年09月11日 18時06分53秒 | 全般

以下は前章の続きである。
虚構を崩す
―史実を伝えるだけで、韓国が反日をやめるなどということが期待できますか。
松本 
真実をつきつけられることは、虚構の上に築かれた反日国家の急所を直撃するもので、韓国にとって実はこれが一番痛いのです。
当然、頭から否定し、反撃してくるでしょうが、それでもよい。 
こうした指摘がボディブローのようになって、反日は今のような野放図さや衝力を失い、自制も働いてくると思います。当面は冷戦時のデタント(二国間の対立関係が緊張緩和すること)のようなものが実現できれば、上々でしょう。
いずれにしても、長い戦いになることは避けられない。
そのために、日本国民も、日韓関係の真実について、知識を持つ必要があります。
国民はあまりに知らなすぎます。
たとえばアイヌ語の研究者金田一京助は有名ですが、同年輩で、すぐ隣の県に生まれた小倉進平はほとんど誰も知りません。 
おかしいと思いますが、むろん国民のせいではない。
戦後、異常な使命感に駆り立てられた一握りの日本の学者が、日韓関係の真実にふたをし続けてきたわけです。
歴史を国民の手に取り戻すためには、これまで意図的に無視されてきたことを、一つひとつ取り上げていく必要がある。 
象徴的な言い方をすると、慰安婦像の撤去を求めるだけでなく、日本も銅像を建てる(笑)。 
金玉均ら独立党の志士が福沢諭吉を囲んで教えを乞うている場面などは、造像に向いているのではないでしょうか。
井上角五郎が福沢から渡されたハングル活字を持って、朝鮮の地に上陸したのは、韓国文化史上の大事件とも言えるものです。
その像には、この地に近代的書記言語をもたらそうとかたく決意した、青年の決意と若々しい情熱が表現されていなければなりません。
その時実際に彼が活字を手にしていたかどうかはわかりませんが、象徴的造型としては良いでしょう。
それにこれなら、在日韓国大使館の前に置いても、ウィーン条約に違反しないのではないでしょうか(笑)。 
テーマはいくらもあります。
甲申政変で日本の兵士が独立党の志士を守って戦死するところ、富田儀作が青磁を復元し、小倉進平が朝鮮の寒村で方言調査をし、空手道場松涛館の館長富名腰義鎮が、のち貽拳道元老となる李元国に稽古をつけている場面、韓国国歌の作曲者安益泰がパトロンの江原綱一(在ドイツ満洲国公使館参事官)の邸で演奏会を開いている場面等々、銅像をつくれとまでは言いませんが、こうした光景が多くの日本国民の脳裏に自然に浮かんでくるような状況にする必要があります。
どれも日本人が当然承知しているべき事実なのに、集団的に目隠しをされているという現状が、異常なのです。 
戦前の著名な文学史家金台俊は、甲午更張の年(1894年。日清戦争勃発の年)を、朝鮮半島の歴史を二分する分水嶺としています。
日清戦争が韓民族の国の起点であることはごく平明な事実なのに、戦後はこんな基本的なことさえまともに受け止められていない。
これが異常でなくて何でしょう? 
未来志向などと言われていますが、今日本に必要なのは、徹底的に過去を志向することです。
歪められた過去の正体をつきとめ、嘘が大手を振ってまかり通るような状態に終止符を打ち、自由闊達な議論ができるようにしなければなりません。 
なかなか表には出てこないけれども、実は韓国にも、抗日神話に疑念を持っている人が少なくないのです。
歴史の真実がさまざまなルートで伝わっていけば、かの地で何らかの共振現象が生じることも期待できるでしょう。 
迂遠のようですが、それが日韓関係正常化の近道だと考えます。
まつもと こうじ
1944年生まれ。東京大学経済学部卒業。通商産業省入省。在大韓民国大使館参事官、在オーストラリア大使館参事官、埼玉大学大学院教授などを歴任。
韓国関係の著作として「日韓経済摩擦」(東洋経済新報社)、『韓国経済の解剖』(共編著。文真堂)などがある。


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