現状に最適化した結果、それを追認していることに無意識な者たち

2018-08-06 12:10:59 | 感想など

東京医大の入試で女子が減点処置をされ、男子は加点されていたことが大きくニュースとなっている。私には大学をやめて多浪して医学部受験をしていた友人がいたが、10年ほど前にその周囲で面接にてクレイジーな点数(50点満点で数点)をつけられた人がいて、常識的な態度・言動をする人間で数点しか取れない面接って何なん?多浪生を入れないための裏工作じゃねーの?と友人の中で話題になったことがある。これがある程度事実だとすれば、もっといろんなところで起こってんじゃない?と以前から(裏は取れてないけど)グレーな印象を持っていたが、今回の件で限りなくブラックに近づいたと感じている。

 

まずそもそも、何の事前告知もなしにこういう行為(はっきり言って裏工作)をやって受験生に不利益を与えていたわけだから、指弾されるのは当然のことだろう。もし仮にここで「大学側は自分の学校に来る人間を選ぶ権利がある」と考えて疑わない人がいるのなら、「たとえば寄付金を積んだ人間には加点するといった行為を大学側がしたら、あなたはどう判断するのか?」と問いたいところだ。

 

以上のような点で徹底的に究明されるべき問題であることは間違いない。しかしそれにしても驚くべきなのは、「先進国」の多くがクォーター制を導入したりアファーマティブアクションを進めてるのにもかかわらず、日本はその真逆のことをやっているのであり、その後進性はここにも如実に表れてると言えよう。なるほど女子を取る割合を抑えたいのは結婚に絡む退職といった理由が挙げられていることを鑑みれば、組織側は現状に最適化したつもりなんだろう。しかしその時に、自分たちがそもそもそのような現状を肯定・強化する共犯者になっている、ということをどこまで意識しているのやら、と思う(まあもっとも、ここから風呂敷を広げれば、未だに新卒一括採用から脱却できず、フレックス性やテレワーク、在宅ワークが広がらなくて結局「時差ビズ」というよくわからん形での個人努力=個人負担に頼らざるを得ないのが日本の現状だ。そこからすれば、ひとり東京医大の問題だけでなく、広くこの社会全体に見られる病理だと言えるように思える。そこには、自分一人が外れると・・・というしがらみの問題が背景にあり、ゆえに現状維持的になり、結果として不合理なものを変えるののに外圧頼みになる→日本は少年みたいなもんだねと外国から言われる話に繋がる、と)。

 

ともあれ、説明もなしにこのような処置をしていた状況をどう究明し、処分していくかは日本政府・社会の見られ方を決めていくに違いないし、それがこの社会の向かう方向に一定の影響を与えることは間違いないだろう。

 

補足
まあ結局、いかにシステム(というか現状)に上手く最適化するか、というのがやたらに重視される社会になってしまってる、ということだろう。しかしここは、短期的な弥縫策ではなく、長期的なビジョンや明確な価値観を持って対応することが必要なのではないだろうか。(まあそこまで考えてるとか微塵も思ってないが)たとえば仮に、「人工知能が・・・のように発達するという知見があり、それによって医師の人手が大幅に減らせることができ、医療技術も~のように発達した結果、献血関連の仕事が激減する可能性が高い。そこからの結論として、経営工学的な分析の結果から合理的に予想して今から人減らしにかかっておかねばならず、女子の就業は統計データ的に―なのでこの措置は正当なものである」とかまでとうとうと説明するのなら、まあわからんではない。しかしそれでも、事前の告知がなかった事実には何ら弁解の余地がないし(男女平等に反すると批判されるのは怖いから表ざたにしなかっただけだろうし)、またそもそも女子の就業に関する現状を結果的に肯定・追認しているのと同じであるのも変わらない。さらに言えば、先の論に乗っかった場合、人工知能で医師の仕事が限定的になった場合は女性が仕事に戻ってきやすくなるといったことも考えられるのである(ちなみに話は変わるが、同郷の医師Tと話した時、彼が言うには医師個人にかかる負担の大きさの問題の一つは海外のようなチーム制ではないことに要因の一つがあるとの指摘もあり、ここは私自身調べてみたいところだ・・・という具合に、女子の離職率の件は「医師の働き方改革」といった視点をもって対していくのが国の未来を担う高等教育機関の取るべき態度ではないかと思うのだが、いかがだろうか?)。

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