負けるな知的中高年◆本ときどき花のちコンピュータ

「知の崩壊」とかいって、いつの間にか世の中すっかり溶けてしまった。
「知」の復権に知的中高年よ、立ち上がれ!

紫苑・春紫苑・姫紫苑・姫女苑たちの誘惑

2006年10月20日 | Weblog
花のなまえは紛らわしい。漢名・和名・洋名・標準名・別名・総称名・学名などがあって、一定の基準に応じた名を区別して正確にいい分けることなどほぼありえない。和名ひとつを取ってみても、古く中国から来た漢字の名称があり、日本で勝手に国字にした名があり、欧米から帰化した花にあとで付けた真新しいカタカナもある。

たとえばこの秋に姿を見せる「紫苑」。枕草子にもこの文字で表記されているが、本家の漢字でいえば「紫菀」が正しく、和名「紫苑」は誤記である。のちに北米から帰化した紫苑に類似する花には、「春紫苑」「姫紫苑」「姫女苑」と和名が付けられている。これらを知った上で正確に使い分けるのは、かなり花好きの人だろう。

「紫苑」はキク科の多年草で、シベリア、中国大陸北部、モンゴル、朝鮮などに分布。背の高い茎が、今頃、小菊に似た淡紫色の花頭をたくさんつける。「春紫苑」は春に白い花をつけるもので、こちらは北米産の帰化植物である。「姫紫苑」は白色の小さな花を秋につける。紛らわしい名の「姫女苑」(ヒメジョオン)は、やはり北米から明治期に帰化した植物で、夏に白い花を咲かせ、姫紫苑にちなんだ和名である。

やれやれこのお姫様方、気紛れな名を装って、春、夏、秋と男どもを惑わせる。花と女性は謎だらけといいたいが、それぞれ違った個性を持っている。その個性を十把一からげで見られ、語られたら、女性だって怒るだろう。花だって怒るだろうから、やはり花は正確に見てやりたい(写真は紫苑、他は植物図鑑で参照ください。かなり違った花です)