菅原貴与志の書庫

A Lawyer's Library

『詳解 個人情報保護法と企業法務』〔全訂5版〕

2014-01-31 00:00:00 | 菅原の著作

 昨日1月30日,拙著詳解 個人情報保護法と企業法務―収集・取得・利用から管理・開示までの実践的対応策―〔第5版〕民事法研究会)が発刊となり,全国書店には2月5日(水)ころより店頭に出始めます。

   A5判・397頁
   ISBN:9784896289176
   価格:税込3,675円(税抜:3,500円)


 第5版では,最新の裁判例や消費者庁の動向などを踏まえつつ,SNSやビッグデータといった新たな現代的問題の対応策も盛り込んでおります。以下に「第5版 はしがき」を掲載いたします。

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     第5版はしがき

 個人情報保護法が全面施行されてから約8年が経過し、各事業者の取組みも徐々に深化しつつある(その最新状況については、消費者庁が公表した「個人情報の保護に関する事業者の取組実態調査報告書(平成23年度)」(平成24年3月)および「平成23年度 個人情報の保護に関する法律施行状況の概要」(同年9月)が詳しい)。その一方で、個人情報漏えいを警戒するあまりの様々な「過剰対応」も依然として認められるところである(消費者庁「個人情報保護に関するいわゆる『過剰反応』に関する実態調査報告書(平成22年度)」参照)。

 また、ここ数年、TwitterやFacebookなど、ソーシャル・ネットワーク(SNS)の利用者が急増してきた。SNSに不用意な書込みをすれば、他人の利益を侵害する可能性がある。したがって、企業法務の分野では、従業員のSNS利用に伴うリスクを管理し、自社や従業員の利益を守っていかなければならない。

 さらに、最近では、スマートフォンやソーシャルメディアの普及により、ユーザーの好みや行動履歴、知人・友人関係などの様々な個人情報を大量に収集し、サービスの向上や新ビジネスの創出に生かせるようになった。そうした個人情報を中心とした「ビッグデータ」のビジネス利用には、プライバシー侵害や悪評などのリスクも潜んでいる。しかし、現行の個人情報保護法の規制は、ビッグデータ時代の現実に合っていない。氏名など明らかに個人を特定できる「個人情報(個人情報保護法2条1項)」のほか、スマートフォンに割り振られた端末識別ID、位置情報、画像情報、SNSでの書き込みなど、他の情報と組み合わせて個人を特定できる「グレーゾーン情報」が増えているからである。

 こうしたビッグデータの活用が進めば、個人情報の第三者提供に関する本人の同意のあり方などについても、さらなる議論と検討が必要であろう。最近の一例を挙げれば、NTTドコモがスマートフォンなどで得た50万人分の位置情報を地図会社に無償提供していることが問題視されている。

 平成25年6月、政府のIT総合戦略本部は、「世界最先端IT国家創造宣言」を決定し、ビッグデータの活用推進とともに、個人情報の適切使用を監視する第三者機関創設などを唱えている。また、消費者委員会の個人情報保護専門委員会では、個人情報保護法改正を視野に入れた審議が継続中である。

 かかる最新状況を踏まえて、今般、大幅な加筆・訂正を行い、第5版を発行する運びとなった。この第5版が、SNSやビッグデータなど、企業を取り巻く大きな環境の変化に的確に対応し、企業法務の実務家にとって役立つものとなるのであれば、著者として望外の喜びである。

           菅 原 貴与志


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