"不滅の音楽、不明の愛!"
18世紀オーストリアウィーン、音楽の都市という名にふさわしく、当代最高のピアニストであり、作曲家だったルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンは、父親の暴力や虐待の中で育った辛い過去を消せずに愛と人を信じられずに寂しく生きている。
喝采と歓声を受けた音楽とは異なり、冷たい視線と冷笑的修飾語だけが付き纏った彼は、自分を心なくあざ笑った貴族たちに謝罪させようと君主キンスキーを訪ねた席で偶然にアントニア・ブレンターノに出会う。愛を信じないベートーヴェンと一度も愛を感じたことのないアントニアは互いに好感を持つようになる。ベートーヴェンは、聴力を失うという不治の病の診断を受け絶望に落ちるが、アントニアと互いの傷を慰め合い、嵐のような愛という感情を育むことになる。
しかし、彼らの秘密は世間に晒され、アントニアは自分の家族が傷つくかと怯え、ベートーヴェンと会う事を拒絶するようになる。愛するアントニアを失ったベートーヴェンはついに聴力を失うことになり、暗い楽想の影だけが人生に垂れ込めることになるのだが...。
アントニア(トニー)・ブレンターノ
頭がよく魅力的な32歳の既婚女性。遠く離れたフランクフルトに居住する25歳年上の銀行家フランツと17歳の時に政略結婚する。貴族だった父の遺産を整理するため、ウィーンに滞在し夫と離れて過ごしながら、真の愛を経験したことのない自分の人生が虚しくて堪らない事に気づき、ベートーヴェンを通じて、これまで求めて来た何かを思い知る事になる。
ベッティーナ・ブレンターノ
フランクフルトから来た23歳のきれいで野心に満ちた女性。 幼い時にドイツの最も偉大な詩人であるゲーテに送った手紙で有名になった彼女は、ロマンチックな詩人たちと成長し、ロマン主義の詩人になる夢を持っていた。トニーとともにウィーンで過ごしながら、彼女がベートーヴェンと愛に陥るのを見守るようになり、トニーの熱病のような恋愛を理解するとともに実の兄フランツの結婚生活が壊れることを憂慮し、トニーを裏切り兄にすべてを明かす。
フランツ・ブレンターノ
トニーの夫であり、状況判断が早い47歳の成功した銀行家。 寛大で優しい家長だが、人生の優先順位が銀行家であると言えるほど家族とは多くの時間を過ごす事が出来ない。自分の評判を維持することにひどく気遣いながら、自分と家族の誰もがブルジョア的慣習から逃れるような感情を持つことを許さない。 正しく尊敬される人として、自分の妻を芸術家に奪われることを想像すらできない。
カスパール・ヴァン・ベートーヴェン
36歳。芸術家の兄を献身的に助けてサポートするベートーヴェンの弟。天性的に正直で純真な性格を持ち、何かと自分より優れた兄の天才性を憧憬しながら愛している。ヨハンナと恋に落ちるが、ベートーヴェンは彼女の評判が悪いと彼らの恋愛を反対する。ベートーヴェンよりも早くに愛の力について気付いたカスパーは依然として兄に対する愛情を持ってはいるが、彼に反抗することに決心し、兄弟はそれぞれの別の道に進む事になる。
バプティスト・フィッツォーク
人間の弱点と欲望について精通している知的で洗練された35歳の弁護士。どんな代価を払っても勝者たちと共にしながら、最高の座に就くことを目標としている。良心の呵責を感じない自分の才能を使い強者には説得して誘惑する反面、弱者には傲慢と冷淡さで威嚇する。
君主フェルナンド・キンスキー
多くの財産と富を蓄積した40代半ばの貴族。芸術を愛する穏やかでバランスの取れた性格で、人として高いレベルの教育を受け音楽に対する知識をはじめ楽器演奏の実力も備えており、芸術を広めようとする洗練された精神を持っている。彼のパーティーには著名な貴族たちが招待され、財産管理は他人に任せている。
ヨハンナ・ライス(ヨハンナ・ヴァン・ベートーヴェン)
29歳。 ウィーン工芸家の娘として、ストレートできっちりしているが正直な性格の持ち主。言葉と行動に自信が溢れ、空言でも価値よりは実用的なことをもっとも重視し、不平等で危険な世の中でどうやって生き延びるかをよく知っている。
フランツ・グリルパルツァー
35歳。ウィーンの有名な劇作家で詩人。ベートーヴェンの熱烈な支持者で彼が生涯を終えた時、追悼文を朗読して神聖な葬儀を準備する。
シュミット教授
40代前半にウィーンで聴覚障害分野の著名な医師であり大学教授。自分が診断する症状に対して患者に残忍なほど率直に話してくれる。
ユリア
30代の女性でトニーの家政婦であり、料理人。賢く謙遜な性格で、自分が働いている銀行家の家族に忠誠を尽くしている。
音楽の霊たち
いつもベートーヴェンの周辺をうろつきしながら、彼の内面の音楽の世界へと誘う。
ショルシー、マキシ、ヨシー、パンニー
トニーの子供たち。明るい性格。