注:映画の話ではありません。
早朝、犬の散歩に出かけて、犬を遊ばせている間、本を読む。
文庫本をポケットに突っ込んで行って、ほんの数ページだけ読むのが楽しみのひとつだ。
荷物にならない、なるべく薄っぺたい本がいい。
近頃の文庫本は、読みやすくするために文字の大きいものが多いが、余計なお世話だ。
文字を大きくすると、ページ数が増えてしまう。
紙質もちょっと良くなっていないか?
文庫は小さく薄く軽いコンパクトさがとりえなんだから、見やすさや丈夫さは他に任せちまえ。
カバーも要らんわ。
そういうわけで、朝読むのは古い文庫本になりがちだ。
今は、老子を読んでいる。
桜の木の根方に腰を下ろして読んだり、
立って犬を見張りながら読んだり、
四股を踏みながら読んだり。
この季節は蚊もまだいなくて良い。
もうすぐ蚊が増えて落ち着いて読めなくなる。
昨日も、立って、老子を読んでいた。
すると、向こうから飛んでくるヤツがいる。
デカい。スズメバチだ。
動いてはいかん。
通り過ぎるのを待とう。
・・・通り過ぎなかった。
あろうことか、私の顔の真横でホバリング。
視界の左端に、蜂の色が見える。
デカいとは言え小さい羽で、なぜこんな低い羽音が出るんだ?
そして、頬骨に風圧がかすかに感じられる。
背筋が凍る。
動いてはいけない。
よけるのも怖い。
ああでもいつまでそこにいるんだ。
長い。
あっち行ってくれよ。
なぜホバリングしてるんだ。
なんか私、いいにおいさせてます?
整髪料とか化粧水とかも使ってないのに。
長い。
いつまでもいるなら、そーっとしゃがもうか?
刺されたらどうしよう。
アレルギー体質だし、きっとアナフィラキシーショックを起こす。
いやあれは2回目以降か。
アシナガバチとは物質が違うのか?
長い。
もし刺されたら、心拍を上げない程度に急いで、すぐそこのコンビニに行って、
そうだ、一番近くの友人Mに電話して、車で来てもらって、
まず家に寄って犬を帰してもらって、それから大学病院の救急に向かってもらおう。
ああでも携帯電話を持ってきていない。
でも大丈夫、あいつの電話番号ならソラんじている。
長い。
うわあああ、思い出せない、番号、思い出せない、47が二箇所にあるはず、
どこ?思い出せない、あわわわわ
長かった。
重低音の飛行爆音を聞かされつづけ、
頬骨を軽く扇がれつづけ、
見えそうで見えない近さで視野に入られ。
ほんの数秒間のことだと思うのだが、
永遠にも似た長さだった。
山で熊に遭った時より怖かった。
と思うのは喉元過ぎればなんとやら、だな。
帰り道、友人Mの家の前を通ると、ちょうどMが外に出ていた。
すぐにしゃべって、緊張をほぐす。
あの風圧。
ミツバチの羽で地球を回すのはかなり難儀だろうが、
スズメバチが羽ばたきゃ、なんなら自転の方向も変えられるんじゃないか?
早朝、犬の散歩に出かけて、犬を遊ばせている間、本を読む。
文庫本をポケットに突っ込んで行って、ほんの数ページだけ読むのが楽しみのひとつだ。
荷物にならない、なるべく薄っぺたい本がいい。
近頃の文庫本は、読みやすくするために文字の大きいものが多いが、余計なお世話だ。
文字を大きくすると、ページ数が増えてしまう。
紙質もちょっと良くなっていないか?
文庫は小さく薄く軽いコンパクトさがとりえなんだから、見やすさや丈夫さは他に任せちまえ。
カバーも要らんわ。
そういうわけで、朝読むのは古い文庫本になりがちだ。
今は、老子を読んでいる。
桜の木の根方に腰を下ろして読んだり、
立って犬を見張りながら読んだり、
四股を踏みながら読んだり。
この季節は蚊もまだいなくて良い。
もうすぐ蚊が増えて落ち着いて読めなくなる。
昨日も、立って、老子を読んでいた。
すると、向こうから飛んでくるヤツがいる。
デカい。スズメバチだ。
動いてはいかん。
通り過ぎるのを待とう。
・・・通り過ぎなかった。
あろうことか、私の顔の真横でホバリング。
視界の左端に、蜂の色が見える。
デカいとは言え小さい羽で、なぜこんな低い羽音が出るんだ?
そして、頬骨に風圧がかすかに感じられる。
背筋が凍る。
動いてはいけない。
よけるのも怖い。
ああでもいつまでそこにいるんだ。
長い。
あっち行ってくれよ。
なぜホバリングしてるんだ。
なんか私、いいにおいさせてます?
整髪料とか化粧水とかも使ってないのに。
長い。
いつまでもいるなら、そーっとしゃがもうか?
刺されたらどうしよう。
アレルギー体質だし、きっとアナフィラキシーショックを起こす。
いやあれは2回目以降か。
アシナガバチとは物質が違うのか?
長い。
もし刺されたら、心拍を上げない程度に急いで、すぐそこのコンビニに行って、
そうだ、一番近くの友人Mに電話して、車で来てもらって、
まず家に寄って犬を帰してもらって、それから大学病院の救急に向かってもらおう。
ああでも携帯電話を持ってきていない。
でも大丈夫、あいつの電話番号ならソラんじている。
長い。
うわあああ、思い出せない、番号、思い出せない、47が二箇所にあるはず、
どこ?思い出せない、あわわわわ
長かった。
重低音の飛行爆音を聞かされつづけ、
頬骨を軽く扇がれつづけ、
見えそうで見えない近さで視野に入られ。
ほんの数秒間のことだと思うのだが、
永遠にも似た長さだった。
山で熊に遭った時より怖かった。
と思うのは喉元過ぎればなんとやら、だな。
帰り道、友人Mの家の前を通ると、ちょうどMが外に出ていた。
すぐにしゃべって、緊張をほぐす。
あの風圧。
ミツバチの羽で地球を回すのはかなり難儀だろうが、
スズメバチが羽ばたきゃ、なんなら自転の方向も変えられるんじゃないか?
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