犬小屋:す~さんの無祿(ブログ)

ゲゲゲの調布発信
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婚姻飛行

2018年07月01日 | 毎月馬鹿
明け方、目が覚める。
東の空が色づき始めている。
夕焼けの美しさはみんな知っているが、
夜明け前の空のもじもじとした美しさを毎日見ている人は一部だ。
早起きさんか、夜を徹して働く人たちか。

子どもの頃から、自分ひとりの時間が好きなのと、
自分の足で出かけるのが好きなのとで、
日の出前から自転車で出かけるのが好きだった。
自分の他には新聞配達のバイクくらいしかいない。
誰もいない道を自転車で思う存分ぶっ飛ばす。

多摩川の土手まで20分かけない。
川べりはまた違った景色が有る。
風が吹いていたり、朝霧が出ていたり。
薄明りの中ひとりきりで、不安も有る。
けれど、怖い思いをしたことは無かった。

今でも、いつもあの頃の気分を思い出す。
朝の澄んだ空気が好きだ。
よほど冬にならない限り、窓は細くでも開けて寝る。
雨戸は無い。
カーテンも滅多に閉めない。

目が覚めて、東の窓を見ると、星が流れる。
またひとつ流れる。おや多いな。
と、同時に、足に何かこそばゆさを感じる。
ひとつめの時は気のせいかと思ったが、
ふたつ続いて、やっぱり何か感じると思う程度の、かすかな感覚だ。

流れ星のかけらが落ちてきたみたい。なんて言ったら
ロマンチック過ぎるわ。ゲラゲラ。
内心でこぎたなく笑ったら、またこそばゆい。
さっきこそばゆかった近くがまたこそばゆい。
今度は腕もこそばゆい。

これは何事かと電灯を点けてみた。
するとホクロがたくさん動く
そんなわけはない、
小さな羽虫だ。
羽蟻だ。

確かめようと灯りを点けたのがいけなかった。
見る見るうちに羽蟻の数は増えた。
三分経つか経たないかという間に、床と言わず壁と言わず天井と言わず、
羽蟻が歩き回り、空間を飛び回る。
息を吸う気にもなれない。

と思うや、動きが変化した。
何か、まとまってきたのだ。
今までてんでんばらばらに動き回っていた羽蟻たちの動きに、
方向性が出た。
それは黒いうねりに見える。

女王様のお目見えである。
でかい!
飛び回っていた連中の何倍もある一匹が、飛ぶ。
それを、みんなが追って行く。
私は灯りを消した。

暗くなっても、羽蟻の群れは見える。
電灯が消えれば、街灯の光を目指して外へ向かう。
窓ガラスにぶつかり、黒い幕は変形しながら移動して行く。
まるで、部屋の汚れを拭い去るように、
羽蟻は窓の隙間から街路灯へと飛び去って行った。


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