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むずかしい問題を解く辞書

2015年03月25日 | 国語真偽会
現代仮名遣いが浸透した今、
ある語の旧仮名遣いがどうだったかを知るのは難しい。

たとえば今遣った「難しい」という語も、
元は「むつかしい」だが、
これが濁って「むづかしい」となり、
発音に依った現代仮名遣いだと「むずかしい」と書く。

今、我々の多くは「むずかしい」に慣れている。
私が今こうやってブログを書くために使っている、
日本語入力ソフトはIMEだ。
(不満が多いけれど使っている)
このIMEで「むつかしい」と打鍵して変換すると、
ちゃんと「難しい」と変換される。
もちろん、「むずかしい」も「難しい」に変換される。
ところが、「むづかしい」と打つと、
「無塚シイ」となんのことやらわからんことを言い出す。

現代仮名遣いに無いからだ。

「むつかしい」の後に「むづかしい」があるからこそ
現代では「むずかしい」なのに。


旧仮名遣いを知りたい、
言葉の元来の姿を知りたい、という人のために、
不思議な辞書がある。

新潮国語辞典現代語古語
久松潜一監修

フツウ、国語辞典と言ったら現代語の辞書であり、
古典のためには古語辞典がある。
ところがこの辞書は、現代語も古語もいっしょくたに
載っている。

たとえば、あるページを開くと、
おお い[大炊]おほひ(「おほいひ[大飯]」の約) 
オーイーシーディー[OECD] 
おおい がわ[大井川]おほゐがは
などと、古語も外来語も現代語もごちゃまぜで並んでいる。

そして、現代語にも、旧仮名遣いが書いてある。
井戸の井は「い」ではなく「ゐ」であるとか、
川は「かわ」ではなく「かは」だったのだとか、
飯田さんの「いい」は「いひ」なのねとかいったことが、
読み取れる。

ためしに、さきほどの「難しい」を引いてみる。

むずかし・い[難しい]むづかし―《形》(文シクむづか・し)
(古くは「ムツカシ」)→むつかしい

とある。
「→」は参考にこっちも見なさい、という意味だ。見よう。

むつかし・い[難しい](形)(文シクむつか・し)
(動詞「むつく」の形容詞形。現在は「むずかしい」と併存)

とある。
なるほど、「なつく」から「なつかしい」、「忌む」から「いまわしい」
などのようにできた言葉だった、という、言葉の来歴が分かる。
意味を見ると、

1、快くない。不快である。①晴れ晴れせず不愉快である。うっとうしい。
「世の中の腹立たしうむつかしう〔枕260〕」
(中略)
2、物事が困難である。①成就しがたい。おぼつかない。「入学はむつかしい」

といった具合に、古典での意味が先に書いてあり、
ここでは枕草子からの用例が引いてある。
昔は今とちょっと違った意味で遣う言葉だったということが分かる。

じゃあそもそもどんな意味の動詞だったんだろう?見てみる。

むつ・く[憤く](動)(文カ下二)1、心の中で怒る。不機嫌になる。むつかる。
「われ思はずに妹むつけたり〔夫木・雑18〕
2、元気がんくなる。弱る。(馬・飼い鳥・人、特に子供にいう)〔日ポ〕

こんな字を書くのか。なんとなく意味が伝わる。
ああっ、「むつかしい」が「むづかしい」になったように、
「むつかる」は「むづかる」になり、
今でも赤ちゃんは「むずかる」じゃないか。

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