個人的評価: ■■■■□□
[6段階評価 最高:■■■■■■(めったに出さない)、最悪:■□□□□□(わりとよく出す)]
サスペンス演出はなかなかのものだが、ストーリーテリングは立派とは言えず、クライマックス付近の銃撃戦はものすごくかっこ良いが、格好良すぎてなんだか浮いている気がして、何がしたかったのかよくわからんなぁ・・・と消化不良感を抱く。
・・・のだが、観賞後にあれこれ考えてみると、深い社会性を内包していることに気付いた。
本作の原題は「THE INTERNATIONAL」
internationalとは、EXCEED英和辞典によると以下の意味である。
『━━ a. 国際(間)の, 国際的な; 万国向きの.』
本作においては、悪役である国際メガバンクのことを指しているのだろうし、また主人公の所属するインターポール(国際刑事警察機構)のことでもあるかもしれないし、本作のストーリーがルクセンブルク、独、仏、伊、米、トルコと6カ国を又にかけたものであることも示しているように思う。
だが、それだけではなく、社会主義崩壊後の新たな世界の脅威についての暗喩も含むように感じる。
インターナショナルといえば、昔は社会主義革命の歌として世界中の社会主義者が歌っていた歌のタイトルだ。
資本主義者たちにしてみれば、悪の組織の恐怖のメロディであり、彼らにとっての「世界の脅威」を象徴する単語だったのではあるまいか?
しかし、ベルリンの壁が崩れ、ソ連が崩壊した。いまだ社会主義国家は存在するものの、北朝鮮やベトナムやキューバを起点に全世界が赤く染まるとは誰も考えないし、中国との対立はイデオロギー上のものというより経済対立でしかない。
「インターナショナル」に象徴された世界の脅威は去った(と金持ちは考えているだろう)。
そして本作では東側陣営崩壊後における全く新しい世界の脅威を描いている。
銀行が世界の紛争をコントロールし実質的に発展途上国の人々の命を支配している、と本作では言う。先進資本主義国の政府は、そのような銀行の世界支配の野望を、わざと看過するか、間接的に支援する。
事件は握りつぶされて表沙汰にはならない。国家と銀行という人々が信頼すべき者たちによって、人々の知らないうちに、世界は支配されていく。
「世界の脅威」の変遷を象徴するような人物が、アーミン・ミューラー=スタールの演じた、元東ドイツの高官にして国際銀行の幹部に変わり果てた男だったように思える。
しかし、そうした21世紀の新たな脅威を描いた志の高い内容ながら、物語がその設定を活かしきれてなく、観る者に切迫感を与えない。
基本ストーリーがまず良くなかったのかも知れない。始めから「悪いのはあいつら」とわかっていてなんとかその証拠固めをしようとする物語にせず、主人公のサリンジャーが捜査の果てに巨大銀行の陰謀に気付く展開とする方が(ベタだが)良かったかもしれない。
そのくせ、中盤の狙撃シーンなど実は暗殺者が2人いたということを後になってから説明し、その割りに狙撃シーンは主人公と1人目の狙撃者の両方の視点で描くから、何が起こっているのかわからず話についていけない。
いつ殺されるか・・・という緊張感は良かったが、それ以外はサスペンスとして下手だ。
だが本作最大の見せ場であり、内容と一番関係ないシーンでもあるニューヨークの美術館での銃撃シーン。
吹き抜けの内壁に螺旋状に配置された展示ブースを使い、左右の敵、上下の敵、吹き抜け挟んだ向こう側の敵の三方から攻撃される。この立体的な戦い。乱れ撃つ弾丸、心地よい音をたてて粉々になるガラスやモニターの数々。しかも敵同士だった主人公と殺し屋が共闘して危機を切り抜けるという展開に燃えなきゃ嘘だ。
そもそも硬派なサスペンスよりアクションを期待して観に行った事もあるので、とっても満足。
反面、これだけアクションが上手な監督だったのなら、もっとアクション満載な内容にした方が良かった気もするのだった。
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サスペンス演出はなかなかのものだが、ストーリーテリングは立派とは言えず、クライマックス付近の銃撃戦はものすごくかっこ良いが、格好良すぎてなんだか浮いている気がして、何がしたかったのかよくわからんなぁ・・・と消化不良感を抱く。
・・・のだが、観賞後にあれこれ考えてみると、深い社会性を内包していることに気付いた。
本作の原題は「THE INTERNATIONAL」
internationalとは、EXCEED英和辞典によると以下の意味である。
『━━ a. 国際(間)の, 国際的な; 万国向きの.』
本作においては、悪役である国際メガバンクのことを指しているのだろうし、また主人公の所属するインターポール(国際刑事警察機構)のことでもあるかもしれないし、本作のストーリーがルクセンブルク、独、仏、伊、米、トルコと6カ国を又にかけたものであることも示しているように思う。
だが、それだけではなく、社会主義崩壊後の新たな世界の脅威についての暗喩も含むように感じる。
インターナショナルといえば、昔は社会主義革命の歌として世界中の社会主義者が歌っていた歌のタイトルだ。
資本主義者たちにしてみれば、悪の組織の恐怖のメロディであり、彼らにとっての「世界の脅威」を象徴する単語だったのではあるまいか?
しかし、ベルリンの壁が崩れ、ソ連が崩壊した。いまだ社会主義国家は存在するものの、北朝鮮やベトナムやキューバを起点に全世界が赤く染まるとは誰も考えないし、中国との対立はイデオロギー上のものというより経済対立でしかない。
「インターナショナル」に象徴された世界の脅威は去った(と金持ちは考えているだろう)。
そして本作では東側陣営崩壊後における全く新しい世界の脅威を描いている。
銀行が世界の紛争をコントロールし実質的に発展途上国の人々の命を支配している、と本作では言う。先進資本主義国の政府は、そのような銀行の世界支配の野望を、わざと看過するか、間接的に支援する。
事件は握りつぶされて表沙汰にはならない。国家と銀行という人々が信頼すべき者たちによって、人々の知らないうちに、世界は支配されていく。
「世界の脅威」の変遷を象徴するような人物が、アーミン・ミューラー=スタールの演じた、元東ドイツの高官にして国際銀行の幹部に変わり果てた男だったように思える。
しかし、そうした21世紀の新たな脅威を描いた志の高い内容ながら、物語がその設定を活かしきれてなく、観る者に切迫感を与えない。
基本ストーリーがまず良くなかったのかも知れない。始めから「悪いのはあいつら」とわかっていてなんとかその証拠固めをしようとする物語にせず、主人公のサリンジャーが捜査の果てに巨大銀行の陰謀に気付く展開とする方が(ベタだが)良かったかもしれない。
そのくせ、中盤の狙撃シーンなど実は暗殺者が2人いたということを後になってから説明し、その割りに狙撃シーンは主人公と1人目の狙撃者の両方の視点で描くから、何が起こっているのかわからず話についていけない。
いつ殺されるか・・・という緊張感は良かったが、それ以外はサスペンスとして下手だ。
だが本作最大の見せ場であり、内容と一番関係ないシーンでもあるニューヨークの美術館での銃撃シーン。
吹き抜けの内壁に螺旋状に配置された展示ブースを使い、左右の敵、上下の敵、吹き抜け挟んだ向こう側の敵の三方から攻撃される。この立体的な戦い。乱れ撃つ弾丸、心地よい音をたてて粉々になるガラスやモニターの数々。しかも敵同士だった主人公と殺し屋が共闘して危機を切り抜けるという展開に燃えなきゃ嘘だ。
そもそも硬派なサスペンスよりアクションを期待して観に行った事もあるので、とっても満足。
反面、これだけアクションが上手な監督だったのなら、もっとアクション満載な内容にした方が良かった気もするのだった。
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いっそもっとアクションづくめにすると別の切迫感がわいたんでしょうけどね