「あずみ2」で私を激しく失望させた金子修介の新作は、漫画っぽい演出しかできない彼にふさわしくまたまた漫画の映画化企画。
人間の心の闇を覗かせて善人が悪人へと堕ちていくストーリーにはそれなりに深みがあって味わい深い・・・のだが、まっすぐすぎる演出が深みや複雑さを全部矯正して誰でも楽しく見れる娯楽映画に変えている。
この映画はデスノートで殺人を繰り返す青年・夜神月(ヤガミライトと読む。こういう名前つける親ってどうだろ)と、犯罪捜査の天才である探偵「L」との先の先を読み合う頭脳戦が展開される。にもかかわらずこの映画からは全然"知的な作品"という雰囲気が漂ってこない。
説明過剰な台詞と、ストーリーに関係ない描写を極力そぎ落とし一直線な展開としたためだ。
演出力不足か脚本の構成力の無さか、ストーリーテリングにいっぱいっぱいになったのが幸いしている気がする。
笑えるくらい楽しい説明ぶりをいくつか具体的に・・・
作品の中で「L」という人物に関する台詞が初めて喋られた時、その2秒後に加賀丈史の警部が言う
「あのLか」
この一言で、「L」が少なくとも警察関係の人間には超有名な人物であることが解る。彼の喋りっぷりが全てを語っている気がするが、もちろん傍にいる人たちによる丁寧な、まるでナレーションみたいな「L」についての説明台詞も付加される。
その「L」による、プレゼンのシーンが幾つかある。これはプレゼンにおけるグラフの使い方の模範例を示す。
まず、理屈はさっぱり判らないが早口で統計とグラフのフィッティング法についての説明をぺらぺらと述べた後、キレイなグラフと、ぐちゃぐちゃなグラフとを比較して見せる。
視覚情報の説得力というやつは抜群で、統計の誤差とか確からしさとか、そもそも集計方法や理屈に問題ないかどうかの検証も忘れて、発表者の説明を信じ込んでしまう。
しかも、プレゼンを聞いていた人たちが何か疑問を感じる隙を与える前に、傍聴していた誰かが、
「つまり自然界の現象ではないと言うことか・・・」
と大声で説明し、人々の考えを一方に誘導してしまう。
まるで潜り込ませていたサクラみたいだ。
別のプレゼンシーンでは、日付と殺人発生時刻の分布図を曜日ごとに一つにまとめて見せる。
シナリオのセオリーでいけば、そのグラフを見せられ"どこかで見た気がする"と思った捜査員が、しばらくして大学に捜査に行くか、大学生の息子の時間割を見るかした時に、"そうかっ、あの図はこれだったんだ!!"と気付くってもんだろう。
そこまで回りくどくしたくないなら、せめて「L」がどっかの大学の時間割をモニタに表示させてみるってもんだろう。
しかしこの脚本ではそれすら回りくどいと感じたのだろうか
グラフを見せられた2秒後に
「これは大学の時間割そっくりだ!!!!」
と大声で叫ぶ誰か。
まるではじめからそう言う様に台詞でも用意されていたかのごとく・・・(そりゃ映画だから用意してるに決まっているのだが)
竜也と香椎由宇ちゃんの恋人描写も楽しい。
ストーリーに関係ある会話しかしない。
大学構内を「キラ」について語りあいながら歩いてきて、途中誰とも挨拶もせず、段取りのように2人で椅子に腰掛けさらに「キラ」の話題を続ける。そういう演出が当然とばかりに何の疑問もなくやってる感じが微笑ましい。
カット割りも、他に考え付かなかったのかなんてことない顔アップとミドルショットとロングショットの切り返し。愚直なくらい説明に終始するカップル。
ついに手に入るDEATH NOTE。何が面白いかって"取り説付き"ってとこ。本当にユーザーのことをよく考えた親切な作りだ。
しかもスタッフが常に傍について、あれこれ説明してくれるのだ。(しかもギャラは1日に何個かリンゴをやればいいだけ・・・安い!!)
これほどサービスが徹底している会社は日本にない。
しかもユーザーも、使用方法や感想を、逐一、事細かに報告してくれる。
そんな愚直なストーリーテリングを大いに楽しみつつも、まさか恋人まで殺すとは!!!???と、けっこう素直にサプライズ。
キャスティングはいい感じ。
「あずみ2」を見るまでもなく金子修介という監督は俳優の魅力を引き出す力が決定的に足りない。下手でもOKしちゃう性格なんだろう。可能な限り俳優、とくに女の子に無理をさせたくないのだろう。
だから彼の映画では演出の助けなどなくても自分で勝手に魅力を引き出せる演技力ある俳優が必要なのだ。竜也は「BR2」以来のナルっぽい力演。力入り過ぎ感がトムっぽくて大好きだ。
竜也、丈史、由宇、をはじめ、瀬戸朝香や藤村俊二や、みんな頼んでもいないのに勝手に熱くなって盛り上がっている。演技指導という役割において監督の出る幕などないのでは・・・。まるでバース掛布岡田時代の阪神である。
利用されあっさり殺される仮面ライダー響鬼
ロクに活躍しないウルトラマンマックス
・・・てのも微妙に特撮オタク心をくすぐる。
CG丸出しな死神の映像が出たとき「ああ、この映画やっちゃったかな・・・」と心配になったが、中村獅童の声の好演もあって観てる内にまあいっか、と思ってしまった。
気がかりは酒気帯び運転と助手席の女優との浮気疑惑で窮地にたつ獅童が後編でも声をやってくれるのか・・・ってとこ。
早くも二代目リューク(の声)ってことにならなきゃいいが
なんにせよ、後編が超楽しみだ!!
***************
ところで金子修介作品といえば、音楽は大谷幸というのが定番だったが、本作の音楽担当は川井憲次であった。金子-大谷っていいコンビだったのに、仲たがいでもしたのだろうか?ちょっと心配。
もっとも本作の川井憲次の音楽はかなり良くて、今後はこのコンビでいくのだろうかと思ったりもした。
*******
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自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
人間の心の闇を覗かせて善人が悪人へと堕ちていくストーリーにはそれなりに深みがあって味わい深い・・・のだが、まっすぐすぎる演出が深みや複雑さを全部矯正して誰でも楽しく見れる娯楽映画に変えている。
この映画はデスノートで殺人を繰り返す青年・夜神月(ヤガミライトと読む。こういう名前つける親ってどうだろ)と、犯罪捜査の天才である探偵「L」との先の先を読み合う頭脳戦が展開される。にもかかわらずこの映画からは全然"知的な作品"という雰囲気が漂ってこない。
説明過剰な台詞と、ストーリーに関係ない描写を極力そぎ落とし一直線な展開としたためだ。
演出力不足か脚本の構成力の無さか、ストーリーテリングにいっぱいっぱいになったのが幸いしている気がする。
笑えるくらい楽しい説明ぶりをいくつか具体的に・・・
作品の中で「L」という人物に関する台詞が初めて喋られた時、その2秒後に加賀丈史の警部が言う
「あのLか」
この一言で、「L」が少なくとも警察関係の人間には超有名な人物であることが解る。彼の喋りっぷりが全てを語っている気がするが、もちろん傍にいる人たちによる丁寧な、まるでナレーションみたいな「L」についての説明台詞も付加される。
その「L」による、プレゼンのシーンが幾つかある。これはプレゼンにおけるグラフの使い方の模範例を示す。
まず、理屈はさっぱり判らないが早口で統計とグラフのフィッティング法についての説明をぺらぺらと述べた後、キレイなグラフと、ぐちゃぐちゃなグラフとを比較して見せる。
視覚情報の説得力というやつは抜群で、統計の誤差とか確からしさとか、そもそも集計方法や理屈に問題ないかどうかの検証も忘れて、発表者の説明を信じ込んでしまう。
しかも、プレゼンを聞いていた人たちが何か疑問を感じる隙を与える前に、傍聴していた誰かが、
「つまり自然界の現象ではないと言うことか・・・」
と大声で説明し、人々の考えを一方に誘導してしまう。
まるで潜り込ませていたサクラみたいだ。
別のプレゼンシーンでは、日付と殺人発生時刻の分布図を曜日ごとに一つにまとめて見せる。
シナリオのセオリーでいけば、そのグラフを見せられ"どこかで見た気がする"と思った捜査員が、しばらくして大学に捜査に行くか、大学生の息子の時間割を見るかした時に、"そうかっ、あの図はこれだったんだ!!"と気付くってもんだろう。
そこまで回りくどくしたくないなら、せめて「L」がどっかの大学の時間割をモニタに表示させてみるってもんだろう。
しかしこの脚本ではそれすら回りくどいと感じたのだろうか
グラフを見せられた2秒後に
「これは大学の時間割そっくりだ!!!!」
と大声で叫ぶ誰か。
まるではじめからそう言う様に台詞でも用意されていたかのごとく・・・(そりゃ映画だから用意してるに決まっているのだが)
竜也と香椎由宇ちゃんの恋人描写も楽しい。
ストーリーに関係ある会話しかしない。
大学構内を「キラ」について語りあいながら歩いてきて、途中誰とも挨拶もせず、段取りのように2人で椅子に腰掛けさらに「キラ」の話題を続ける。そういう演出が当然とばかりに何の疑問もなくやってる感じが微笑ましい。
カット割りも、他に考え付かなかったのかなんてことない顔アップとミドルショットとロングショットの切り返し。愚直なくらい説明に終始するカップル。
ついに手に入るDEATH NOTE。何が面白いかって"取り説付き"ってとこ。本当にユーザーのことをよく考えた親切な作りだ。
しかもスタッフが常に傍について、あれこれ説明してくれるのだ。(しかもギャラは1日に何個かリンゴをやればいいだけ・・・安い!!)
これほどサービスが徹底している会社は日本にない。
しかもユーザーも、使用方法や感想を、逐一、事細かに報告してくれる。
そんな愚直なストーリーテリングを大いに楽しみつつも、まさか恋人まで殺すとは!!!???と、けっこう素直にサプライズ。
キャスティングはいい感じ。
「あずみ2」を見るまでもなく金子修介という監督は俳優の魅力を引き出す力が決定的に足りない。下手でもOKしちゃう性格なんだろう。可能な限り俳優、とくに女の子に無理をさせたくないのだろう。
だから彼の映画では演出の助けなどなくても自分で勝手に魅力を引き出せる演技力ある俳優が必要なのだ。竜也は「BR2」以来のナルっぽい力演。力入り過ぎ感がトムっぽくて大好きだ。
竜也、丈史、由宇、をはじめ、瀬戸朝香や藤村俊二や、みんな頼んでもいないのに勝手に熱くなって盛り上がっている。演技指導という役割において監督の出る幕などないのでは・・・。まるでバース掛布岡田時代の阪神である。
利用されあっさり殺される仮面ライダー響鬼
ロクに活躍しないウルトラマンマックス
・・・てのも微妙に特撮オタク心をくすぐる。
CG丸出しな死神の映像が出たとき「ああ、この映画やっちゃったかな・・・」と心配になったが、中村獅童の声の好演もあって観てる内にまあいっか、と思ってしまった。
気がかりは酒気帯び運転と助手席の女優との浮気疑惑で窮地にたつ獅童が後編でも声をやってくれるのか・・・ってとこ。
早くも二代目リューク(の声)ってことにならなきゃいいが
なんにせよ、後編が超楽しみだ!!
***************
ところで金子修介作品といえば、音楽は大谷幸というのが定番だったが、本作の音楽担当は川井憲次であった。金子-大谷っていいコンビだったのに、仲たがいでもしたのだろうか?ちょっと心配。
もっとも本作の川井憲次の音楽はかなり良くて、今後はこのコンビでいくのだろうかと思ったりもした。
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ツッコミ最高です。
何度も笑いながら読ませていただきました。
「あのLか」(笑)
「デスノート」の原作ではさらに詳細で膨大なルール、「ハチクロ」の原作では全員がしているらしい膨大なナレーション。
・・・って、どっちも映画しか見たことないんですけど。
リュークの声ですが、予備知識がなかったんで、千葉さんだと思ってました。
だから、中村くん降板したら、千葉さんで。
千葉といっても真一じゃなく、てつやでもなく、繁のほうです(笑)。
てなわけで、TBありがとうございました。
な、なるほど!そういう見方がありましたか…。
私はほんっとに、ダメ映画を覚悟して見に行ったので
予想外のレベルに、ビックリして単純に面白いなぁと
思ってしまったクチでしたので、楽しく読ませていただきました。
原作ファンでもあるので、脳内で勝手に補充してしまった節も
あるなぁと、反省点が見えました。有難うございます。
あのLかってまた加賀丈史の異様にメリハリある発声が笑いを誘いました
>にらさま
ちばてつやだといいですね。叩け叩け叩けぇぇぇって、それは寺山修二か
>ミヤちゃん
多分原作ファンの脳内補充をはじめから計算にいれて作っている映画だと思うので、正しい反応だったんだと思いますよ
中体連の代休の月曜日、フォーラムに並んだ中学生の行列行列行列・・・・・。「一体、コレはなんなんだーーーー?」と思ったら、デス・ノートに並ぶ中学生でした。
こんだけの中学生を山形で集められるって、凄い!と思ったのがこの映画の印象でした。
しばらく経って、普通日におじさん、おばさんたちで見たシアター内もちょっと異様でしたが。
デス・ノートの楽しみ方、読ませていただきました。後編を見る際にたっぷり参考にします。
見た目シネコン、中身(ラインナップ)はやっぱフォーラムってかんじでしたが
シネマ旭あたりがお似合いな映画なんすが・・・
ちと山形ローカルなレス書いてみました