「週末に所用で韓国へ行ってきた。羽田便で金浦空港に着くと、入国の際に放射線チェックが待っていた。表向きは「希望者のみ」と書いてあったが、事実上、東京から来た乗客の全員が放射線チェックのゲートをくぐらなければならない仕組みになっていた。もちろん、チェックに引っかかる人などいるはずがない。明らかな過剰反応だが、そこまでヤルかと驚いたものだ。しかし帰国後、週刊朝日の記者にこのことを話すと、「驚いてる場合じゃないないですよ。いまはそれが常識になりつつあるんです」という。聞けば、放射線チェックは中国、台湾、タイ、ミャンマー、インドなどでもあり、さらに広がりつつあるのだという。(略)
日本国内で政府発の空疎な「安心」メッセージが横行する一方、海外では無責任な「危ない」メッセージが氾濫している。
インドで「この前は津波が来た。今度はがんの津波がくる」と報道されれば、カンボジアでは「日本から漏れた放射能はタイに流れている。もうすぐ黒い雨となってカンボジアに降り注ぐ」というニュースが流れる(いずれも週刊朝日)。
イギリスの大衆誌サンは「放射能の影響で自宅のシャワーから漂白剤の臭いがする」と書き、花粉症対策でマスクをしている通勤客の写真を繰り返し使ってあたかも日本人が放射能予防にマスクをしているかのような印象を広めているという。
これは笑い事ではまったくない。
外国人と結婚する予定だった日本人女性が婚約破棄を迫られたり、日本の大手カード会社のクレジットカードが将来の信用不安を理由に海外で使えなくなるなどに実害も出始めているからだ。イタリアでは日本食品の輸入を全面禁止し、こうした傾向は広まりつつあるという。
こんな状況でTPPなどに参加したらひとたまりもないだろう。
さらに深刻なのは、すでに散々報じられているように、外資系企業の社員が東京から逃げ出しているということだ。会社が移動費用を負担したり、チャーター便で迎えに来るところまである。こうなると、事態収拾後に彼らが戻ってくる保証はどこにもない。外資系企業のアジア支社が香港やシンガポールなどに移転する動きが加速することだろう。
これが日本経済に与える影響は計り知れない。いうまでもなく、こうなったのは大地震ではなく原発事故が原因だ。これからボディーブローのように効いてくるであろう経済損失の額を計算すれば、それこそ天文学的な数字になるだろう。
地震は自然災害だが、原発事故は人災だ。原子力の扱いを甘くみた東京電力と経産省の慢心のツケはあまりにデカイ、いやデカ過ぎる。」(抄)
2011年4月4日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
「今日のニュースに一言」で週刊朝日前編集長・山口一臣氏の記事
「デカ過ぎる〝経済損失〟東電・政府の慢心のツケ…」
を聞き書きしました。