ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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刑務所で勃発したセクハラ事件の闇

2014年04月08日 | Weblog

 平成二十六年三月十日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号
 
「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「刑務所で勃発したセクハラ事件の闇」
 
を企画、取材、執筆しました。

 

 8日付の読売新聞朝刊の佐賀県版が、裁判中の“国家によるセクハラ事件”が7日に和解したことを報じている。

 この事件についてはニュースサイトマイニュースジャパンの2013年7月24日付の記事「刑務所で頻発するセクハラ実態 佐賀少年刑務所で刑務官が派遣社員に無理矢理キス、ラブホテルに強制連行」に詳しい。事件の舞台となったのは佐賀刑務所。08年4月1日、ここの事務職に、派遣社員のS氏(現30代女性、のちの原告)が採用された。S氏によると、入社から間もない同年6月6日、事件は起きた。この日はS氏の部署の懇親会だった。一次会はホテルニューオータニ佐賀のビアガーデン、二次会は直属上司である束本陽次氏(仮名、現50代後半、既婚)のいきつけのスナックに行き、三次会もあった。

 三次会が終わると、S氏は車を止めてあるニューオータニまでタクシーで行き、そこから代行を使って帰ろうと思った。すると、塚元氏が「送ってあげるよ」といい、一緒にタクシーに乗った。束本氏は車で来てないので、途中でS氏を降ろす経路だった。ところが、ニューオータニに着き、S氏が降りると、なんと束本氏も降りてついてきた。

 S氏がびっくりしていると、突然、束本氏は、S氏を地下駐車場の壁際に押し付け、無理矢理キスをして、スカートの下から手を突っ込み、下半身に触れた。突然の事態に驚愕し、S氏は「やめてください!!」と言って顔をそむけ、急いで自分の車に乗ると、束本氏は追いかけてきて、助手席に乗り込み、「ホテルに行こう」と何度も言い、10分ほど押し問答した末、飲酒運転を強要され、なんとか束本氏の住む官舎に降ろした。

 S氏はこの出来事にショックを受けた。その後、束本氏は職場で、朝会っても挨拶しなかったり、仕事を与えなくなった。「ああ、ホテルに行かなかったのがいけなかったのか」とS氏は思った。束本氏に対し、知らず知らずのうちに冷たい態度を取っていたのかもしれない、と思ったS氏は、できるだけ丁寧に、笑顔で応対するようにした。すると、束本氏の機嫌が戻り、1、2か月経つと、また機嫌が悪くなる、というサイクルを繰り返した。また、たびたび夜中に束本氏が酔っぱらって電話してきて「声が聞きたくなった」などと言ったりもしていた。

 こうして2年の月日が流れ、10年4月28日、決定的な事件が起きた。この日、部署の歓迎会があり、みなで二次会に向かうなかで、束本氏がS氏をタクシーに乗せ、行き先を告げずに、運転手にナビして、着いた先は、なんとラブホテルだった。

 S氏は、拒絶すれば、職場での無視などのパワハラが一層ひどくなる、逃げ出したらどんなひどい態度をされるかわからない、という不安から、逃げ出すことができず、性的関係に至った。

 その後、A氏は法務省上層部にセクハラを告発し、調査する事態となり、無理矢理キスや、夜中の電話を理由に、束本氏に減給2か月の懲戒処分が11年11月22日に下った。だが、肝心のホテルの性的行為については合意とされた。

 その処分の3か月後の12年2月23日、A氏は国(法務省)と束本氏を相手取り、慰謝料など計330万円を求め提訴した。

 この裁判が和解したというのが冒頭の記事だ。和解内容には、「国がセクハラやパワハラなどの行為を未然防止する研修を刑務所で行うこと」「法務省矯正局などにあるセクハラやパワハラの相談窓口の周知徹底を刑務所内で図ること」が盛り込まれたという。

 実は全国の刑務所ではセクハラが横行している。09~11年だけでも、名古屋保護観察所では、女性職員に対し、コンビニのトイレまで付きまとい、女性が走って逃げると1kmも追いかけてくる職員がいた。大分少年鑑別所では、帰宅途中の職員に対し、拒絶しているのに、家まで付きまとった者も。横浜刑務所では、好意を寄せる職員に食事を誘って断られた悲しみと辛さから、公衆電話から繰り返し匿名や偽名で電話し、事実無根の借金返済を迫るなどのストーカー行為を犯した職員もいる。

 果たして悪しき体質を本当に改善することができるのか、チェックを続けたい。(佐々木奎一)


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