平成二十七年三月二日付、auの「朝刊ピックアップ」で記事
「払い続けた年金が消えた挙句、借金400万円…」
を企画、取材、執筆しました。
けさの朝日新聞に「厚生年金基金の解散 払い続けた年金、消えた」という記事がある。これは「報われぬ国 負担増の先に」という同紙の連載記事。
記事によると、栃木県で給油所を営んでいた男性(64)は、栃木県石油業厚生年金基金に長年加入していた。これは栃木県内の給油所などが集まってつくった基金。「厚生年金基金」とは、サラリーマンが加入する厚生年金に、プラスアルファで支給するために企業や業界団体がつくったシステムを指す。
この男性の加入していた基金は、12年に明るみになった年金積立金詐欺のAIJ投資顧問に預けて40億円が焦げ付いたことなどで、積立金不足に陥り、今年1月解散した。
それにより、本来、毎月受け取るはずだった月約1万円がなくなった。
それだけでなない。厚生年金基金には、厚生年金の「代行部分」がある。この分の損失は、解散しても、穴埋めして返金しなければならず、この男性のもとにも、赤字穴埋め分として、約400万円の負担額が通知された。男性は「最長30年かけて、月に1万円ほどずつ払っていく」という。
要するに、この男性はせっせと厚生年金基金を積み立てた挙句、400万円の借金だけが残ったというわけ。
厚生年金基金はピークの約1900基金から、昨年末時点で483基金まで減少。うち290基金は解散を予定しており、その9割の261基金は13年末時点で積立不足に陥っているという。
ただし、あくまでこれは公的年金の上乗せ部分の話である。本丸である、厚生年金・国民年金の方は、どうであろうか。
週刊朝日3月6日号の「シリーズ 年金を考える 年金、大激減時代が来る!」によれば、4月から、年金の伸びを賃金や物価の伸びよりも抑える「マクロ経済スライド」が発動され、年金が減り、年金暮らしのお年寄りの生活を直撃するという。
急激な少子高齢化で、年金の支給額を減らさなければ、「将来の現役世代が納める保険料は、現在の2倍になってしまう」ので、カットし続けるのだという。
記事によると、今国会では、物価が下がるデフレ時でも「マクロ経済スライド」が実施されるように制度を見直す方向で協議が進んでいるという話もあるという。そうして年金制度を維持するために、給付をカットし続け、加入者(被保険者)を増やす一方で、「確定拠出年金」(日本版401k)を見直し、誰でも加入できるようにするという。「これらの改革は、『現役世代は公的年金に頼らず、“自分年金”を作りなさい』という厚労省からのメッセージ」(社会保険労務士でブレインコンサルティングオフィス代表の北村庄吾氏)という。
冒頭の厚生年金基金の惨状は、明日の公的年金の姿かもしれない。そもそも今の40歳位の世代では、年金財政がまたないのではないか、と疑念を抱いている人も多い。そういう人は、「これまで支払った年金と利息分を返してもらうことを条件に、公的年金が解散する日が来きてもよい、将来のことは自分で備えるしかない」という心構えでいる。年金の今後を決めていく必要があるのではないか。(佐々木奎一)