引き続き、「多摩川猫物語」(角川書店刊)の著者で、多摩川の猫たちの治療や給餌を続けるフリーランスのカメラマン小西修氏は、こう語った。
「多摩川に関しての、猫の病気の大体九割は、うちのカミさんか私自身が治します。皮膚病とか、例えば、府中のどこそこに具合の悪い子がいたて、疥癬(かいせん)になり、ダニが寄生して、放っておくと死んでしまうので、薬で治療する。日にちをあけないと効かないので、よくなるまで通う。
私ではわからない病気は、病院に連れて行く。例えば、避妊去勢手術とか、大きな複雑骨折とか、血液検査などが必要な時です。
薬は、お医者さんから分けてもらうこともある。ネットで買うこともあるし、人から寄付で頂くこともある」
また、治療について、小西氏は、こうも語った。
「例えば、初めて見る猫がいたとして、ちょっとした水の飲み方を見て、『この子はちょっと腎臓悪そうだなぁ』と思ったりすることがあるんです。
そうすると、また後に、その猫が体調を崩して病院に持って行くと、やっぱり腎臓の数値が悪くて、食事療法を摂らないと死んじゃう、ということはいっぱいある。
例えば、ある猫の顔を見た時、『あぁ、この子はお腹の中に虫がいそうだなぁ』というのが、何となくわかるんです。そしたら、やっぱり医者に持って行って診ると、いるんです。
ちゃんと症状があるんです。水の飲み方とか、あとは、くちの周りの病気。口内炎とか歯周病、歯周炎。歯の病気、くちの病気が多い。
腎臓の病気は、要するに、猫は、人間なんかに比べると、おしっこがあまりできにくい動物なんです。だから、わりと腎臓の病気が多い。
腎臓の悪い猫は、水の飲み方も、けっこう激しいんですよ。『あれ、さっき飲んでいたのに、またペチャペチャペチャペチャ飲んでるな』とか、その飲む雰囲気で、『あぁ、可哀想だなぁ』って、わかるんです。
虫がいる子っていうのは、やっぱり何となく、瞬膜(眼球を保護する膜)が異常に出ていたりする。大体、内臓の持病がある場合が多い。子猫の場合は、子猫だから、若いのに内臓を痛めている、というのはあまりないんですよ。お年寄りじゃないから。そうすると、子猫なのに瞬膜が出ていると、まあ他の病気のこともありますけど、虫がいたりする。そういうことを、ずーっと、病院に連れて行ったり、というのを積み重ねて症状を見た時に、一瞬にしてわかるわけです。
そうすると、それに対応した薬を常に持っているから、すぐ現場で処置できるんです。
多くのボランティアさんも、病気の猫を、できれば病院に連れて行って治そうとするが、大体は外にいる子っていうのは、捕獲はほぼ不能なんですよ。何%かは触れる。触れる猫は捕獲できますが、触れない猫は多いですよ。大体、捕獲できないから、病院に連れて行けない。結果的には、それが原因で、死ぬ。
だから、現場で治療できるっていうことは、そういう不幸な猫にとっては、ものすごく大きな力になんです。
だから、自分の経験を生かして、『わけわからない病気だ、今回は病院の先生に聞いてみよう』と考えて病院へ行くと、『あぁ、そうか、そういう病気だ』と、病名がわかる。それで、わからないこと聞きますよね。そうすると、教えてくれますよね。何という薬を使って、どういうふうに処方しているのか、わかるじゃないですか。
その積み重ねです。
そうすると今度は、病院連れて行かなくてもよくなる。
多摩川では、九割の病気は、現場で、うちのカミさんか私、どちらかが治します。」
(続く)