ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

※ブログ下記移転しました(2015年7月以降)
http://ssk-journal.com/

拡大する猫餌やり禁止論

2015年03月07日 | Weblog

 今日は東京大農学部で開催した「ヒトと動物の関係学会」の「学術大会」へ行ってきた。
 
 http://www.hars.gr.jp/taikai/21th.taikai/21th-info.htm

 所用で途中退席したが、楽しいひと時だった。

 ただ、筆者は京都市の野良猫餌やり禁止条例を取材しているため、その意味で、一つだけ気になる研究発表があった。
 それは「給餌行為が野良ネコグループに及ぼす影響」という国立大の大学院生の研究発表。その研究は、広島県尾道市の野良猫三匹にGPSをつけて、餌やりの箇所と照らし合わせて、野良猫の行動を数日間探る、というもの。冒頭、発表者は、調査エリア内の野良猫の数が、十一年の百五十匹から、十二年に百七十匹に増えた、それは給餌行為(餌やり)によるものと考えられる、という意味の発言をしていた。
 その点は、筆者の取材では、去勢手術をした、いわゆる地域猫は、餌をやっても野良猫の個体数は減り続けるので、発表者のいう、餌をやっているから野良猫が増える、という主張は、違うのではないか、と強く思った。
 また、調査現地では、猫の餌をやっているのは、九割方、観光客とのことで、スライドでは、置き餌の写真が出ていた。
 筆者は、地域猫活動の専門家の間では、置き餌は住民トラブルの元になるのでご法度と聞いているので、現地の餌やりの方法に強い疑問を抱いた。
 発表は十分間。結論としては、調査した野良猫の行動範囲は、餌やり箇所付近に集中している、というものだった。
 そのあと五分間、会場参加者が発表者に質問する時間枠があるのだが、そこで真っ先に、給餌行為をするから野良猫が増えると考えているのか?と、冒頭の話の真意を確認するかのような質問が出た。それに対し、発表者は、餌をやるから野良猫が集まる、集まるからそこで猫の子供が生まれて野良猫が増えていると考えている、と答えていた。
 その後、ほかのお題の発表を含めて計四人の発表者に対する質問タイムがあった。そこでも、研究対象の動物(野良猫)を害獣と捉える視点なのか、という質問や、野良猫を根絶させようと考えているのか、という趣旨の質問が出た(ほかの発表者を含めての質問の形だったが、ほかの発表者は天然記念物の鹿の調査などで、事実上、餌やりの発表者に対する質問に見受けられた)。
 それに対し、餌やりの発表者は、地域住民のなかには糞尿被害により野良猫を害獣と捕えている人もいる、そのなかには野良猫を根絶してほしい、と言っている人もいる、といい、発表者自身の見解や動機は言わずじまいだったが、この発表者には、餌やり禁止条例を通そうとしている京都市と似ているように感じた。
 なお、今日は、京都市以外でも、餌やり禁止を訴えている自治体があるのを知った。それは、兵庫県動物愛護センター。同センター三木支所は今月下旬、猫関連のイベントを開く予定で、その告知のチラシにはこう書いてある。
 「日本中のあちらこちらで、猫による困った問題が起きています。
 外をウロウロしている猫に、無責任にエサをあげていませんか?
 可哀想だと思って、むやみにエサをあげていると…いつの間にか猫が集まってきて、子猫がたくさん生まれて、その地域は猫だらけ。
 猫は自由が一番!と思って、外に放していませんか?放し飼いにしていると…知らないうちに誰かの迷惑になっていて、あなたの愛猫は嫌われ猫になっているかも」
 このように、研究発表した人と瓜二つの主張をしている。
 さらに、「兵庫県動物愛護センター三木支所には、猫に庭を荒らされる、糞や尿をされて困る等の苦情が多く寄せられています。そして、飼い主がわからない猫や、望まれずに生まれた子猫がたくさんセンターに持ち込まれます。
 その多くは悲しいことに殺処分されています」と、餌やりをするから殺処分しているという言い方をしている。
 この国では今、地域猫政策を無視した、餌やり禁止論が拡大しつつある。

 写真:兵庫県動物愛護センター三木支所のチラシ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。