ジャーナリスト活動記録・佐々木奎一

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生活保護『現物支給』の利点を語る識者

2012年12月11日 | Weblog

2012年11月19日、auのニュースサイト EZニュースフラッシュ増刊号

「朝刊ピックアップ」で記事 
 
「生活保護『現物支給』の利点を語る識者」
 
を企画、取材、執筆しました。
 

 けさの東京新聞の「本音のコラム」というコーナーに、看護師で文筆家の宮子あずさ氏の「生活保護の現物支給」という記事がある。

 同氏は冒頭、「今回の総選挙では、社会保障も争点のひとつである。中でも年間三兆円を超える生活保護をどう考えるのか。現物支給や親族の扶養義務強化などの案を出す党もあるだろう。こうした動きに対して、社会保障切り捨てとの批判の声も上がる」と述べた後、こう記している。

 「昔なら、なんの迷いもなく後者の意見にくみしたと思う。国は弱者を切り捨てるのか、けしからん、と。しかし、今はもう少し複雑な思いで議論を聞いている。精神科訪問看護の仕事を通じ、生活保護制度の問題点を痛感するからだ。特に、現物支給については『これがあれば』と思う場面がしばしばある。」

 ちなみに、現物支給を掲げる政党については、今年9月24日付の毎日新聞にこんな記事がある。それは「生活保護費 受給者ら『現物給付案』を危惧」とう記事。

 これによると、自民党は8月にまとめた政権公約最終案で、保護費の現物給付による、食券の配布や家賃の振り込みに言及している。日本維新の会も綱領に「現物支給中心の生活保護費」と明記している。

 こうした動きに対し、危惧も出ているという。例えば、「決められた場所に毎食、弁当や食材を受け取りに行くのか。安心して暮らせず、就職も難しくなる」(東京都内の40代男性受給者)。「急な出費に備え食費を切り詰めてやりくりしてきたが、それもできなくなる」(埼玉県の20代女性受給者)などだ。

 また、自民党の現物支給案に対しては、反貧困ネットワークと生活保護問題対策全国会議が共同で質問状を送っている(自民党は無回答)。そこには、「特定の店舗で使える食料や被服費のクーポン券にしたとすると、乳幼児、高齢者、難病やアレルギー・化学物質過敏症などの、食糧に特別のニーズを持つ人たちが必要な食糧を入手できず、生きていけなくなる」「公営住宅や安上がりの民間借り上げ住宅の提供は、生活保護利用者の居住・移転の自由(憲法22条)の侵害にあたる」といった趣旨の文言が並んでいる。

 このように、現物支給に否定的な声があるなかで、冒頭の宮子氏は、現物支給の利点をこう述べている。「たとえば金があれば酒、ギャンブルという依存症の受給者。最終的にはお金があっても自制できるのがゴールだが、そこまで行けないからこそ問題なのである。自由になるお金を持たせないことが治療的な段階もあると思うたのだ。(略)食品にしか使えない金券がほしいと切実に思う」

 そして、「一時的にであれ、選択する力がない人もいる。現物支給が暮らしを守る場合もあるのではないだろうか。」と結んでいる。

 なお、生活保護の議論になると、上記の反貧困ネットワーク等の市民団体が、憲法で保障された「権利」を声高に主張することが多い。こうした権利は守られるべきだが、憲法では、「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」(第27条)とある。働くことは、権利であるだけではなく、「義務」なのである。勤労の義務を放棄して、権利だけ主張する人がいるならば、それは不条理ではないだろうか? (佐々木奎一)


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