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福江の大ツバキと細御寮大ツバキ

2020-03-21 22:48:16 | 五島列島の世界遺産と椿

 

 椿園を出て、ナビに任せて「福江の大ツバキ」を目指しました。


 車のフロントガラスの先に小さな島が見えていました。

 

 黒島かもしれません。日本で人口が最も少ない島で、平成30年の人口は2人だそうです。

 

 佐渡などへ行くと、島の西海岸では水平線しか見えませんが、福江島は、何処へ行っても、海面のどこかに小島や岬が見えていた気がします。


 五島列島の景色が優しく感じられるのは、そんな特徴がそう思わせるのかもしれません。

 


  多くの矢印を伴う案内表示に導かれ、迷うことなく「福江の大ツバキ」に到着しました。

 

 


 添えられた解説の概要は


「県天然記念物 福江の大ツバキ


 ツバキは常緑で潮風等にも強いことから防風林として植えられてきた。 


 ここ大窄地区でも、開墾の際に、防風林やツバキ油を採る為によく植えられており、現在も民家脇に数多くみられる。


 なかでもこの大ツバキは樹齢が数百年を超えるといわれる。


 昭和42年の指定当時は4本並列していたが、現在は2本となってしまった。


 東側のツバキが、幹回り1.95m、樹高10.50m 西側のツバキは、幹回り1.80m、樹高8.60mである。」 と記されていました。


 数年前に訪ねた富山県の氷見市の「長坂の大椿(2014年枯死)」の幹回りは2mで、年輪から樹齢370年が確認されていますから、このツバキの樹齢が300年を超えているのは間違いないはずです。


 1797年(寛政9年)、現在の長崎県長崎市北部の外海地区(当時は大村藩)から108名が五島に移住し、土地が与えられたのを切っ掛けに、外海地方の潜伏キリシタンが五島へ移住を始めますが、このツバキはその頃から既に、この場所で花を咲かせていたようです。

 

 
 「福江の大ツバキ」を見終え、次に玉之浦の井持浦協会の住所をナビにインプットしました。


 そして大浜集落の細い道をはしっていますと、道路脇にとっても素敵な光景を目にしたのです。


 多分、湧き水を利用した集落の水場だと思うのですが、水が湧き出る近くに枝を伸ばした、風情ある姿のツバキが、水場に赤い花を滴らせていました。

 ツバキの赤い花は、清らかな水の中にも滴り落ちています。

鬼岳に降った雨が伏流水となって湧き出た水を恵みとして、日々の暮らしのなかで利用してきた島の人々、そしてその水場を赤いツバキが飾っています。 

 五島の人々とツバキの関わりを象徴するかのような光景を目にして、私は何度もカメラのシャッターを切っていました。

 

 
 大浜の集落を過ぎてほどなく、「五島椿物産館」の表示が見えたので、寄り道をすることにしました。


 県道から逸れて数分で物産館の駐車場に着いたのですが、建物の中の竈に火が燃え盛っていました。


 近づいてゆくと、作業をしていた方が、塩を作っていると説明してくれました。


 塩田は何度か見たことがありますが、海水を初めから煮詰めて塩を作るのは初めて見ました


 丁寧に説明してくれたので、お土産にと思ったのですが、塩=高血圧という意識があって、御免なさいをしました。 

 

 

 物産館の陳列を見終えて、車に戻ろうとすると、建物の裏で大きなツバキが枝を広げていることに気付きました。

 

 


 幹の傍に掲げられた解説文に


 「細御寮 福江島最大級の大ヤブツバキ (推定樹齢約400年)

 

 細御寮は熱心なキリシタン大名第19代宇久純尭の娘で、兄に第20代五島(旧姓宇久)純玄公をもつ絶世の美女でした。

 

 朝鮮出兵に出陣した豊臣秀吉は、この評判を聞き、文禄3年(1594年)使者を送って名古屋に迎えさせました。

 

 細御寮は夫宇久盛長へ貞節の心を示すため、自ら小指と髪を切って出発し、名古屋に至る途中に自害、五島家菩提寺大円寺に葬られました」


 と記されていました。 

 

 

 解説にある推定樹齢は細御寮が命を絶った1594年から類推したのでしょうが、残念ながら、幹回りから推測して400年はちょっとオーバーです。

 

 しかし、それはそれとして、ツバキ愛好家であれば一度は見ておきたい一株であることはに間違いはありません。

 

「五島椿物産館」を出て、県道49号に戻ると、車は少し小高い場所に差し掛かりました。


 海に向かって谷が切れ込んでいます。

 


 谷の中を覗くと、急斜面に数多くのヤブツバキが緑の葉を茂らせていました。


 そして私はこの光景に、「やっぱり五島はツバキの島だ」の確信を更に深めたのでした。

 


 追記2020.03.28
  上に示した画像周辺は「琴石椿群生地」と名付けられていることが分りました。

 

 その資料(世界遺産推薦決定)には、五島市の椿群生地として、次の15か所が紹介されていました。

 

 南越椿群生地 奈留島
 長浜椿原始林(県指定) 久賀島
 亀河原椿原生林 久賀島
 堂崎椿林
 宮原椿林
 観音平椿林
 樽角坂椿林
 岳・渕ノ元椿群生地
 浜窄椿林
 木戸下椿林
 平松椿林
 琴石椿群生地
 香珠子椿自生林
 鎧瀬椿林
 五島椿森林公園

  

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