棚谷町高野の里の先、荻の窪で小さな峠を越えて、
車は県道29号を北西方向へ進んでゆきます。
道の脇に「そば街道」と書かれた石碑が見えていました。
写真に撮り損ねましたが、ユーモラスな石像なども見かけました。
対向車とすれ違うことのない道が、緑の中に、あるがままに続いていました。
県道29号の最後に久慈川を渡り、国道118号へ右折すると、ほどなく水郡線の無人駅中舟生が見えてきました。
しかし、本当は駅が見えたのではなく、国道をはしっていると、車窓にヒガンバナの群生が見えたので意識した途端、ナビが目的地に到着しました、とアナウンスしたのです。
ナビを中断し、駅裏へ登る道に回り込んで行きました。
無人駅のプラットホームを見下ろす小さな駐車スペースに車を止めて、草茂る斜面を適当に下って行きました。
人気のないプラットホームホームに平行して、真っ赤なヒガンバナが花を咲かせ、その横に、僅かに花を付けたコスモスが列をなしていました。
この場所もきっと誰かが草刈などの労務を提供しているはずです。
コンビニも見当たらない集落ですが、朝夕はこの駅のプラットホームに、水戸の高校や勤め先に通う若い人達の姿が見られるかもしれません。
無人駅のプラットホームを端まで歩くと、車を止めた丘に登る小道を見つけました。
案内灯のように並んだヒガンバナは、日暮れの頃に帰宅する若人を、月の光の下で出迎えているのでしょうか。
中舟生から更に国道を進み、大子町で久慈川を渡り、大子町左貫地区へ向かいました。
大子町左貫地区には奥久慈茶の里公園があり、その周囲にヒガンバナを愛でる散策路が整備されていました。
長閑な田園風景の中、収穫を終えた田の畔を赤い花が彩っていました。
茶の里公園の中を流れるせせらぎの横やコンニャク畑を背にしたヒガンバナが目を楽しませてくれました。
奥久慈茶は新潟の村上茶にならぶ北限のお茶として知られているそうです。
冬が寒く、昼夜の寒暖差が激しい山間部で栽培されるお茶は味にコクがあって香が強い特徴があります。
以前は「保内郷茶」と呼ばれていたそうですが、市町村合併を機に、今では「奥久慈茶」と称するようになったそうです。
せせらぎの中に、薄紫色の素朴なツリフネソウを見かけました。
山里のひなびた雰囲気にはこちらの方が似合っている気がしましたが、ツリフネソウでは、お客さんは呼べないだろうなと思いました。
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