富山市東部のパーキングエリアで目を覚ますと、周囲の車の中で会社員らしき人々がスマホに目を落とす姿が見えました。
数年前まで私も同じような時間軸の中にいたことを思い出し、まるで舞台袖から演技を覗き見るような不思議な感慨に包まれたことでした。
そういえば芭蕉翁は数百年前に、この道をどんな想いで旅して行ったのでしょうか。
来し方を望むと、立山連峰の上に昇る朝陽が柔らかな光を雪の残る峰々に注いでいます。
パーキングエリアの周囲の田畑は朝靄をまとい、国道を間断なく走る車の走行音が、旅人に新たな一日の始まりを告げていました。
寝袋をたたみ、車内を整え、エンジンを回し、ナビに富山県立中央植物園の住所を入力しました。
到着予定時刻は開園直前の8時55分と表示されました。
全てが思惑通りに始まってくれたようです。
パーキングエリアを出て、国道を流れる車列に加わりました。
ゆったり流れる車列の中で、ナビのお嬢さんのガイドに任せ、富山市近郊をはしり抜け、時間通りに植物園の駐車場に車を滑り込ませました。
途中のコンビニで買い求めた調理パンと温かいコーヒーの朝食を、駐車場で済ませました。
植物園に入り、まずは「四季の花」のための撮影に取り掛かりました。
温室で熱帯植物や唐椿などにカメラのレンズを向けます。
左:シロバナソシンカ 右:唐椿
ホームページに「四季の花」を立ち上げたのは1999年の7月ですから、今年で18年目になり、無事これ名馬の域に達しつつあると自負しています。
温室で2時間程を費やした後、園内を見て回ることにしました。
東の空に白い立山連峰を望みましたが、コンパクトデジカメでは何を写したか分からないような写真しか撮れていません。
池の畔に咲くポルトガル原産のキズイセンが花の季節の到来を、散策路の傍らで、アカシデの花が過ぎ去る冬を物語っていました。
左:キズイセン 右:アカシデ
一番奥のエリアでユキツバキやユキバタツバキの名札を付けた木が花を咲かせていました。
ユキツバキは花弁を開いて咲かせ、ヤブツバキは花を筒状に咲かせ、ユキバタツバキは両者の中間の特徴を持つそうですが、花を見ただけでは殆ど区別が付きません。
左:ユキツバキ 右:ユキバタツバキ
今回の旅のテーマは北陸の椿の古木ですが、こんな様子で、ツバキをきちんと見分けることができるかどうか、些か不安を感じながら、正午過ぎに植物園を辞しました。
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