広州蘭圃の静かな石畳を進んで行くと、老夫婦が豊かな緑の中で二人、新聞を読んでいました。静かで、平穏な世界を絵に描いたような情景です。
私は空気を波立たせないよう、静かにその場を離れました。
更に進むとレストランのような建物の前に出ました。
見るからに居心地の良さそうな席が窓越しに望めました。
ガイドブックを見直すと「園内には茶館がいくつもある」と書かれています。
此処で飲茶を喫して、ゆっくりと午後を過ごしたら寿命も延びるだろうな、と思いました。
茶館が並ぶ場所のすぐ近くに、芝生の広場がありました。
大樹が枝いっぱいに葉を繁らせ、人声はなく、時間も止まったかのような贅沢な空間が広がっていました。
どうやら、この辺りで園内をほぼ半周したようです。しかし蘭はいったい何処にあるのでしょうか?
今まで歩いてきた園の西側から東側へ進むと、
屋根を設けた建物の中に沢山の鉢が並んでいました。
あ~ そうだったのか。
そ~だよな~。
私は愚かにも、この場所に至るまで、蘭とはピンクやオレンジ色に花を咲かせる西洋蘭しか思い浮かべなかったのです。
そして、そのような蘭の姿を無意識に探し求めていました。
蘭とは、目の前の鉢に葉を繁らせるような、東洋蘭の存在を全く忘れていたのです。
東洋蘭とは、例えば春蘭(シュンラン)や海老根(エビネ)などの種類を指し、分類学的には西洋蘭と同じ科ですが、その容貌やイメージは全く異なります。
私は蘭に対する固定観念を持ったまま蘭圃に来て、しかも蘭以外の風景などに目を奪われ、園内の所々に置いてある東洋蘭には全く気づかなかったのです。
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