小石川植物園で桜が満開となり、一年で最も華やかな季節を迎えました。
そこで、当ブログを御贔屓の皆様に、筆者が何時も植物観察を続けている小石川植物園の花旅をご案内させて頂こうと思い付きました。
私の別室ブログ同様、トリビアな内容になるかもしれませんが、そのときはどうぞご容赦下さい。
さて、小石川植物園の正門を入った後、正面の坂をゆっくりと登ってゆきます。
左手奥に、大きく枝を広げた三本のイチョウが見えています。
坂のすぐ脇に精子発見のソテツが植栽され、その横に解説板が置かれています。
この場所に植えられているのは、1896年に東京帝国大学の池野成一郎によってソテツに精子が発見された、その研究に使われたソテツの子孫です。
ソテツには雄と雌の木があります。
雄のソテツの花粉は風に飛ばされ、雌の木の卵細胞を含んだ胚珠に付きます。
やがてその花粉から花粉管と呼ばれる管が伸びてゆきます。
伸びた花粉管の中に精子が作られ、その精子は多くの鞭毛を持っています。
精子は花粉管から出ると鞭毛を動かしながら卵子まで泳いで行き、受精が成立します。
シダなどに見られる、そのような現象を、種子植物であるイチョウとソテツで、平瀬作五郎と池野成一郎が見出し、世界的に大きな反響を呼びました。
その功績に対して両者には後に、学士院恩賜賞が授与されています。
坂は途中でクランク状に曲がりながら河岸段丘を上って行きます。
曲がり角には、東京では珍しいオキナワハイネズがサワサワと枝を広げています。
このオキナワハイネズには随分とお世話になりました。
左手にヤマザクラ「群桜」が花を咲かせ、散策路が、ヒラドツツジの並木を伴って西の方角へと伸びています。
散策路の入口に、緑豊かなモチノキが満開の花を咲かせています。
モチノキは雌雄異株ですが、花の姿から、どうやらこの木は雄の木のようです。
坂の途中のクランクを過ぎると、左側に一本の大きなスダジイが見えてきます。
木の下に、ぽっかりと空間が広がっています。
かつてこのスペースにはスダジイの大きな枝が広がっていましたが、2014年2月に東京を襲った大雪で枝が折れ、光の当る場所となった根本には、ひょろひょろだったアマミヒサカキなどが精気を取戻しつつあります。
森の新陳代謝のモデルケースを見せてもらっているような気がするので観察を続けています。
坂の反対側に、シラカシなどの鬱蒼とした茂みが見えますが、その奥に美しい椿の森が潜んでいます。
手前のライトグリーンの低木はヤブサンザシです。
この樹種も雄と雌が別ですが、この木は雌の花を付けていました。
ソメイヨシノの花枝に覆われた坂を更に上って行きます。
坂を登りきって、武蔵野台地の河岸段丘の上に出ると、植物園本館の時計塔が見えてきました。
本館に向き合って、4本のヒマラヤスギが木陰を作り、真っ白なハナニラが、その下にブーケを飾っています。
ヒマラヤスギの下には、小石川植物園の案内図が掲示されています。
今居る場所は正門を入ってから、「ここ」まで坂を登ってきたところです。
こんな風に、筆者が植物観察に通い詰めている小石川植物園を、旅人の目でご案内したいと思います。
小石川植物園は訪問する度に、必ず新しいものに出会える場所です。
きっと皆様もお楽しみ頂けるのではないかと思います。
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