翌朝、8時ごろにゲストハウスを出て、徒歩でレンタカー会社に向かいました。
港の方角へ向かえば、多分見つかるだろうと、市内観光を兼ねて適当に歩を進めました。
古民家が周囲に石垣を巡らせていました。
石に関する知識はありませんが、石垣に使われている石が、表面が凸凹していて、沖縄などで見かけるものと同質に見えます。
一方、港の周囲に、車を予約したトヨタレンタが見当たらないので、公衆電話から連絡して、迎えに来てもらうことにしました。
そうそう、余談ですが、私は今でもスマホや携帯を持たない、絶滅危惧種に分類されています。
旅に出る時以外、自宅か植物園が生活の殆ど全てなので、スマホや携帯を持つ必要性が全くないのです。
レンタカー会社で車を借りるとき、福江島は市街を外れるとコンビニすらないと教えられたので、スーパーマーケットの開店を待って、朝食用の弁当と昼食用の菓子パンやドリンクを買い求め、福江島の観光をスタートさせました。
事前にネット情報を駆使して旅のルートを設定し、訪問予定先を時系列に揃えたプリントを用意してありますので、順にナビに入力してゆけば、訪問先を見逃すこともなく、旅が楽しめます。
今日は福江島を時計回りに巡る予定ですが、それほど急がなくても、夕方までには、福江市街へ戻って来られる筈です。
最初に向かったのは鬼岳です。
市街を離れると、道路に面した民家が大きなヤシを茂らせていました。
カナリーヤシだと思いますが、ヤシの種類を見分ける目に自信はありません。
鬼岳の駐車場に9時半ごろ到着しました。
駐車所の表示案内板に従って階段を上り、展望台に着くと、北の方角に福江の街が望めました。
振り返ると、南の方角に鬼岳のピークが見えています。
草地の中に踏み分け道が、頂上へと続いていました。
少し躊躇しましたが、時間は十分あると思い、ピークへと向かうことにしました。
鬼岳は約1万8千年まえに噴出した火山で、周辺に11の単成火山を擁する鬼岳火山群を成しています。
鬼岳の標高は315mで、マグマが噴火するとき、マグマに溶けていた水などの揮発成分が抜け出て多孔質となった、スコリアと呼ばれる岩の堆積丘だそうです。
揮発して抜け出る程度が軽石程でなく、揮発の程度の低い(孔の少ない)ものは火山弾や火山礫となるそうです。
だとすれば、先ほど市街の民家で見た石垣の石は、沖縄本島で見かけるものと違うかもしれません。
たしか、沖縄の石はサンゴ礁由来だったような記憶がありますから。
旅先では、こんなことさえ興味深く思えるのが不思議です。
それにしても、年をとっても知らないことばかりですね。
鬼岳の解説を読んだ後、ピークへの道を辿っていると、火山弾と思える岩塊を見かけました。
歩き始めて、15分弱で山頂に到着しました。
北東の方角には、昨日訪ねた久賀島とは比較にならぬ程の平地があり、豊かな収穫を予測させる耕作地が広がっていました。
ピークの南側に、火口壁の縁をなす尾根が見えています。
鬼岳に登った満足感を味わいながら草原の道を下る途中、目の前に五島列島を構成する島々が見えました。
今まで、様々な島を訪ねてきましたが、これほどまでに多くの島や岩礁を、同じ視野の中に見たのは初めての経験かもしれません。
目にするものすべてに、興味津々です。