久賀島には世界遺産の「久賀島の集落」以外に、椿原生林という見逃せないスポットがあります。
久賀島の代表的な椿原生林は、島の東海岸の長浜にありますが、今はそこへ行く道が通行不能であることが分っていました。
しかし、若い頃からの山登りで鍛えた経験と勘で、何とかなるだろうと、それらしい場所に向かいましたが、目の前に立ち塞がるヤブを見て即座に、これを分け進むと、帰りの船に間に合わないと判断しました。
そこで次に、島の西海岸にある亀河原の椿原生林を目指すことにしました。
亀河原の椿原生林は久賀島に上陸した田ノ浦港の少し先です。
田ノ浦港を過ぎて暫く進むと、ガイド板が掲げられた場所を右手に曲がり、
舗装された畦道のような、細い脇道に車を進めました。
数十メートル程の尾根を登りきると、バレーボールコート程の駐車スペースの横で、「落椿 踏みつつ来れば 海近し 内海朝生」の句碑が、旅人を出迎えてくれました。
車を降りて、句碑の前から海岸に向かって轍の幅の道を歩いてみました。
落椿の降り積もる道を進んで振り返ると、ヤブツバキのトンネルの先にまあるい空が望めました。
この場所は冬になればきっと、厳しい西風が吹きすさぶのでしょう。
尾根の縁に育つ椿は、風にねじ伏せられた樹形となっていました。
尾根に立てられた掲示板に、「この亀河原の椿原生林は、明治時代に植林したものも含めて40ha(12万本)に達し、殆どが市有地である椿原生林のツバキの手入れや実の採取は、地区ボランティアの活動に因る」と記されていました。
そして私は16半頃レンタカー会社に車を返し、久賀島に別れを告げて、17時10分発の渡船で福江港に戻りました。
福江港に着くと、ネットで予約しておいた「五島ゲストハウス雨通宿」を目指し歩き始めました。
福江島の五島市街は予想以上に大きな街で、何度も道を尋ねながら、何とか宿に辿り着いた時は、すっかり日が暮れていました。
チェックインを済ませるとすぐに、食事処を求め街中に出ました。
ネットで何軒か店を調べておいたのですが、宿を探すことに苦労したこともあり、最初に目にした居酒屋の暖簾を潜って、カウンターに座るとすぐに、五島の芋焼酎をロックで飲み始めました。
目の前のガラスケースに並ぶ見知らぬ魚の名を店主にあれこれ聞いた後、勧められるままに刺身の盛り合わせを注文しました。
カウンター越しの店主に、夫々の魚の名を聞きながら、ゆっくりと箸を進めました。
ゲストハウスに戻ってからも、カウンターバーに座り、地酒をロックで注文しましたが、カウンターのお兄さんが後ろの部屋に入ったまま、戻ってきません。
それもそのはず。後ろの部屋は宿のリビングで、お兄さんは長崎大学の女子学生二人と、そこで楽しく会話を弾ませていたのです。
であれば私も、ということで、ゲストハウスに宿泊した、期待通りのシチュエーションとなって、五島列島の夜が更けてゆきました。
「花の旅」の全て → 「花の旅」 総合目次
全国のツバキガイド → 椿の名所
好奇心の植物観察 → 「つばきカテゴリー」
筆者のホームページ 「PAPYRUS」