読書の記録

評論・小説・ビジネス書・教養・コミックなどなんでも。書評、感想、分析、ただの思い出話など。ネタバレありもネタバレなしも。

残酷すぎる成功法則  9割まちがえる「その習慣」を科学する

2017年12月25日 | ビジネス本
残酷すぎる成功法則  9割まちがえる「その習慣」を科学する
 
著:エリック・パーカー 訳:竹中てる実
飛鳥新社
 
市場が成熟して経済成長しないせいか、年功序列が崩壊してきているからか、格差が拡大しているからか、社会保障制度が望み薄な感じがするからか、成功論失敗論がさいきん多いように思う。啓発本でも「やりぬく力」とか「ダークサイドスキル」とか「ライフシフト」とか、サバイバルに近いようなタイトルがハバを利かせている。
 
そんな中、おりこうさんが必ずしも成功者になるとは限らず、かといってずるい人が成功するとも限らない、というのが本書である。外向的な人と内向的な人はどちらが成功しやすいか。ゼネラリストタイプとスペシャリストタイプはどちらが成功しやすいか。本書によればどっちも成功もあるし、失敗もあるのだ。
 
じゃあ、成功するにはどうしたらいいんだ、といいたくなるが、このことについて本書ではそれこそ「科学的」に、いろいろな観点で語っているものの、実は究極のところ「成功」は自分で定義するしかない、というのが本書の結論なのではないか。なぜなら自分の評価と他人の評価が一致するとは限らないし、時系列のどの時点をもって「成功」とするかも議論の余地があるし、ひとつの成功はなにかの失敗との引き換えかもしれないわけである(仕事に成功したけど家族を失ったとか)。
 
したがって「成功」は自分で定義しなければならないのだ。自分の得意領域、苦手領域、限界領域、いくらでも没入できる領域を知ること。仕事、金銭、趣味、人間関係、家族、感謝されることなど、なんでもいいが自分が大事にしたい優先順位を決めること。で、その組み合わせで自分が納得できる生き方が「成功」なのである。つまり「成功」とは「正解」ではなく、「納得解」だと言える。金銭的報酬だけを物差しに成功失敗を判断することこそ、幸福感から離れる第一歩だ。幸福に至る唯一の答えは「あるがままを受け入れる(セルフ・コンパッション)」というのは、古典から言われていることである。
 
ここらへん、例によって自己肯定感とか承認欲求とかもからんできそうである。サピエンス全史では、原初の人間と現代人では、モノゴトの達成による幸福感はそう変わらなかったんではないか、と指摘しているが、要は万事が相対的なのだ。「成功」だって相対的に判断するものなのである。宇宙物理学の東大教授である須藤靖氏は「人生相対性理論」を唱えている
 
しかしそこらへんはわかっているのに、なんで我々は不足感、飢餓感、劣等感に苛まされるのだろう。それは自分の得意苦手領域や限界没入領域を知らないまま、あるいは無視したまま、仕事などのモノゴトにかかわらざるを得ないのがこの世知辛い世の中だからである。社会の些事雑事を放棄してしまっても現実的には食い詰めてしまう。そこらへんの処世術というか、マインドフルネスというか、なんとかならんもんかなあというのが多くの市井人の本音ではあるまいか。
 
僕は、案外にも「成功する人はなぜモチベーションにこだわらないのか」という本の指摘がけっこういいところをついているのではないか、と思ってもいる。
 

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 服を着るならこんなふうに | トップ | ブログ10周年とタイトル変更 »