読書の記録

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平山夢明と京極夏彦のバッカみたい、読んでランナイ!

2010年11月10日 | サブカルチャー・現代芸能

 平山夢明と京極夏彦のバッカみたい、読んでランナイ!

 平山夢明・京極夏彦

 いったい本書は何かと言うと、TOKYO FMでオンエアされていた謎の番組「バッカみたい、聴いてランナイ!」のトークの書籍化である。

 僕はこの番組ついぞ聴いたことがなく、というか存在さえ知らなかったわけで、もし知っていたらこれはもう万難を排して拝聴したに違いない。というか、まだやっているというので、次はぜひともチェックせねばと思っている。

 僕の目的は、京極夏彦にある。

  京極夏彦という人は、デビュー以来非常に気になる人で、僕は、彼の創作姿勢に非常に興味がある。それは、あれだけ濃密かつ長大、ストーリー構成としてもキャラ造型にしても超エンタメのツボを抑えていて、しかも文章力が抜群、そして例の博覧強記ぶりは、いったいあれは何の奇蹟なのだろう、と解明したくてしょうがないのである。しかもバカ話までもが異常に手慣れているというか、プロ級のオモシロさなのである。誤解を恐れずにぶっちゃけちゃえば、なぜ僕は彼のような才能に恵まれなかったのだろうと絶望的な気分になったりするのだ。おいおい。

 周知のように、この人の作品は異常に分厚いことがひとつのブランドになっているわけだが、デビューして数年経った頃にとある本で、「いかなる長大な作品でも4コマ漫画のように思いつく」とインタビューで述べたようなことが書いてあり、膝を叩いたものだった。そう。4コマ漫画のように発想するから、あれだけの仕事ができるのである。

 

 その話を聞いて以来、どんなに事情が複雑で長大なハナシであろうとも、4コマまんがのごとくシンプルな骨格があるはずだ、ということを信念に僕は日々の仕事をしている。浮世の仕事は、あちらを立たせればこちらが立たずの矛盾の連鎖でどう折り合いをつけるかばかりが目につき、そんなプロジェクトを毎日イヤでも遂行しなければならないわけだが、僕はこの支離滅裂ではちゃめちゃな事態の中心にある「4コマ漫画」を見つけろ、と己に言い聞かせ、その「芯」の部分を追及するのだ。たしかに、そこさえ外さなければ、あるいはその「芯」さえ発見できれば、どうにかなったりする。ありがとう京極夏彦先生!

 そして本書では、驚愕の事実が語られている。あのディープな超過密作品群、なんと「ドリフの大爆笑」など見ながら、ほぼ一気にひとまず書いてしまうらしい。そして、推敲にたいへんな時間をかけるのだ、ということをさりげなく語っている。

 そうか。そうなのか。京極夏彦作品は、とにかく細部のち密な描写と蘊蓄をはじめとする凄まじき情報量にあり、でありながら、ぐいぐい読ませる牽引力があるのだが、その「先を読みたくなる」力は、プロットを見失わせないところにあるのだ。その秘訣は、とにかく一気に最後まで書いてしまうということらしい。とにかく一気に最後まで書いてしまって、あとからゆっくり細部を修正していこう。この方法、豊臣秀吉若かりし頃の墨俣城建設の話とも思い出させる。

 ちなみに、この人、小説ではかならず見開きいっぱいに文章がちゃんと入っていて、次のページに文章がまたがないようにしている、という凝りようである(つまり、単行本、ノベルズ版、文庫版でわざわざ文章を直している)。プロ根性と言わざるを得ない。

 

 こういうラジオトークって、昔はよく聴いていた。タモリのオールナイトニッポンとか、デーモン小暮のオールナイトニッポンあたりは僕の原点でもある。テロップとCGが乱用されるテレビ番組よりよっぽどセンスが磨かれると思うんだけどな。

 

 

 


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