読書の記録

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日本の国境

2008年01月11日 | 地理・地勢
日本の国境---山田吉彦---新書

国境とか離島とか、独特な響きがあってなんだか惹かれる・・・・が、本書でいう国境はそんな旅情的なものではなくて、もっと政治的、軍事的な意味合いを帯びている。国境とは要するに領土問題に直結しているからだ。
日本の国境で特にセンシティブなところといえば、北方領土、竹島、沖ノ鳥島あたりだが、僕が思うに国境線の主張というのに客観的とか中立公平というのは結局のところは有り得なくて、もともと自然の風土・地勢に、人間社会が勝手にあれこれ理由をつけて線を引くんだから、どんなに自然の地形地勢に即しているようでも、やっぱり人為的な所作や意思決定の結果である。つまり国境線の確保とは戦略課題であり、となればこれは強い方が勝ちなのである。
問題はどうやって「強さ」をつくるかだ。国際世論を味方につけるのも「強さ」、武力で実効支配するのも「強さ」、あの手この手で古今東西の歴史書を探し出してくるのも「強さ」である。
学研の地球儀が中国本土生産であったために、台湾が中華人民共和国の一部の「台湾島」と表記され、南樺太や千島列島がロシア領土として表記されていたために(話の珍奇さも手伝って)大騒ぎになっているが、これだって「強さ」だ。今回たまたま注目されたが、中国製地球儀なんていまや世界中にばらまかれているはずだ。ということは、それらの地球儀は全部「台湾島」で、南樺太はロシア領ということだ。すごい影響力だ。

ところで本書によれば、沖ノ鳥島の面積を人口的でなく拡張するため(埋め立てなどの人口拡張は領土として認められない)、珊瑚を人為的に繁殖させて島の面積を拡げるという、一見荒唐無稽なプランがあるそうだ。しかしこういった技術を使うのも「強さ」ではある。そして、日本の「強さ」を発揮しやすいのは、もしかしたらこういうやり方かもしれない。

いずれにせよ殺伐とした話で、旅情もへったくれもないが、さて、日本は島国だから、日本の国境とは即ち、島嶼のその先の海の上である。が、実際にその地に国境ではなくても事実上国境のテイストを持つ都市はいくつかある。根室ではロシア語表記の店が多いとか、博多ではハングル表記が多いとか、そういった都市を取材したものも読んでみたい(ハワイに行けば日本語だらけ、というのもそういうことなのか?)。

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