砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

Nona Reeves「3×3」

2017-09-01 14:21:15 | 日本の音楽


少しずつ忙しくなってきたのでブログを書く時間が減退しそう、本当に悲しいことです。
それでも、それでもなんとか合間を縫ってブログを書こうと思っています。更新頻度をキープしたい。しかしここまで忙しくなるとは…Damn it!! いったいどうしたらいいんだ…(ヒント:ブログを書かない)


9月になったので今日は日本のポップバンドの重鎮、Nona Reeves(ノーナ・リーヴス)の「3×3」を。9月と何の関連があるかって?それは「3×3」=「9」になるからだし、そもそも彼らのバンド名のNonaがラテン語で「9」を意味するからだ。なんつって。本当は書きたくなったから書くだけなんだけど。

彼らはVo、Gt、Drのスリーピースバンド。ライブではサポートにキリンジのベースを務める千ヶ崎学やクチロロの村田シゲ、コーラスに真城めぐみさんが入ったりする。ライブが非常に映えるバンドだ。
活動開始は1996年、もとは早稲田の音楽サークル出身。余談だが早稲田は恩田陸、村上春樹、堀江敏幸など小説家の輩出も多いが、cymbalsやキリンジ兄、大瀧詠一や亀田誠二、ダミアン浜田といったミュージシャンの輩出も多い。学生の数が多いのもあると思うけれど、クリエイティブなものを良しとする校風があるのかもしれない。そういえば知り合いの早稲田出身者も、卒業後にバーテンになったり徹夜で仕事して明け方にサムギョプサルを食べたりと、変な人たちが多い気がする。彼らもまたある意味クリエイティブなのだろう、たぶん。

バンドに話を戻そう。初期はシンプルなネオアコ系の曲の比率が多かったが、途中からはソウル、ファンクなどのダンスミュージックやアシッドジャズなどの要素を積極的に取り入れた、より洗練された音楽になっていく。ただ初期のシンプルさが好きな人たちにとっては、あまり好ましい変化ではなかったかもしれない。
そして曲が洗練されればされるほど、彼らの大きな特徴というか、短所と呼べるものが目につくようになっているようにも思う。もし関係者の人が見ていたら大変申し訳ないのだけれど、嘘をついたら閻魔様に舌を切られるっておばあちゃんに言われたので率直に書くことにする。

曲はものすごくいいのだが、歌詞にあまり中身がないのだ

ああ、言ってしまった。でも残念ながらそうなのだ、少なくとも自分にとっては。大体はパーティの話とか音楽の話とか愛の話とか、時々片思いのラブソングが出てくる程度である。「ダンスフロア」とか「メロウ」とかそれっぽい言葉は並べられているし、韻を踏んだり言葉遊びをしたり、それが彼らの世界観なのだろうと思う。だけどそこに重点を置きすぎているせいか、歌詞に「葛藤」や「深み」があまり見いだせないのだ。だから、自分にとって彼らの歌詞の持つ意味が薄く感じられてしまう。思春期に彼らを繰り返し聴いたとき、物足りなく思ったのは事実だ。洋楽を聴いていると思えばいいのだろうけど、歌詞を重視する聞き手にとっては勿体ないのではないだろうか、これだけ曲がいいのに、と。
それから彼らの曲は、Voの西寺が尊敬するマイケル、プリンス、スティービー・ワンダーなどの洋楽に大きく影響を受けていて、曲のクオリティも高く本家にも近いノリを出せていると思うのだけど、そんならいっそ本家を聴けばいいんちゃう?と思ってしまう。もちろん、キリンジやレキシなど数々のバンドでサポートをこなす2人、Gtの奥田健介やDrの小松シゲルの演奏はレベルが高く、時に目を瞠るものがあるのだが。

しかし、だ。ここまでが前置き。2006年にリリースされた「3×3」はそんなことが気にならないくらい、いい曲が多いのである。まず全体的に歌メロがすごくいいし、それぞれの曲のバランスやアレンジがしっかりしている、飽きないように練りに練られている。それに肝心な曲の作詞は元スーパーカーのいしわたり淳治だったりする。このあたりの人選に「なんだ、わかってるじゃん」と思うのだ。そして彼がまたいい仕事をしているんだな。ノーナの表現したい世界観を壊さない程度に遊んでいるというか、ノーナの良さを引き出していると思う。なんだか上から目線になってしまって大変恐縮なのだけど。


といったところで曲紹介。
まず1曲目の「NNRブレイクダウン~サニーに捧ぐ~」。80年代のようなイントロにプリンスの曲っぽいギターで始まる。相変わらず歌メロがめちゃくちゃポップ。ベースも格好いい。リンクはライブ盤のもの。

NNR ブレイクダウン ~サニーに捧ぐ~



そして2曲目の「透明ガール」、これは上述したようにいしわたり淳治の作詞。Love Together以降の一番の名曲だと思う。Bメロのベースラインが好き、そして2回目のAメロ「ボルテージ」という歌詞の「ジ」をぎりぎりまで引っ張っているのが良い。ドラムは複雑なフィルを入れていないのだけど、スネアだけでここまで表現できるのはすごいと思う、さすが小松さん。コーラスには同じく早稲田出身の土岐麻子が参加している、相変わらず美しい声。
PVは中学生男子と、にこやかに行進する綺麗なお姉さんたちが登場する、なんだか童貞臭いPVな気がするのは私だけだろうか。ちなみにこのお姉さんたちと同じテンポで歩こうとすると相当疲れる。

Nona Reeves 透明ガール



「狛犬の詩」は珍しくDrの小松さんが歌っている。これがまたいい声なんだな。素朴というか純朴というか。以前このブログで紹介した□□□(くちろろ)の三浦さんに近い、少し鼻にかかった伸びのある声。スカっぽい曲、今までのノーナにはなかった雰囲気だ。

NONA REEVES 狛犬の詩 HiPPY CHRiSTMAS



ほかにもいい曲があるんだけどまあこんなもんにしとこう。とりあえず、彼らのアルバムを初めて聞くならこれが一番いい気がする。アルバム全体がとてもうまくまとまっているから。ちなみに初期の『Destiny』もいい作品なので気になった方はこちらもぜひ。

『3×3』は、以前に比べて素直というか、浮足立っていたのが落ち着いたように思う。前作では「あ、これパクリや…」みたいな曲もあったけど、今作ではちゃんとカヴァーしているし。カヴァーしているのはスティービーの「Too High」、これはまた別の機会に書くと思うけど『Innervisions』は歴史に残る名盤だ。
それからほかの人の作詞が増えてきたのもいい影響を与えているのだろう。あるいは歌詞にあまり内容がないにも関わらず(しつこいかな笑)ここまでずっと活動を続けてこられたのは、やはりVoの西寺郷太がいい曲を作るからなんだよなあ...(注 褒めてます)だけどいい曲を作れば作るほど、歌詞が曲の良さ釣り合っていかない気がしてしまう。どこまで歌詞を重視するか、この辺は完全に好みの問題なんだろうけど。

彼らは今年の10月に新譜を出すらしいのだが、最近のノーナがどんな音楽になっているのか楽しみである。11月にはクラムボンと2マンやるみたいだし、そちらにもぜひ行きたい。


ちなみに私が生まれて初めて買ったバンドTシャツは彼らNona Reevesである。アニメ「パラッパラッパー」の主題歌でLove Togetherを聴いた私は頭のてっぺんから上あごまでしびれるような感覚を覚えたものだ。「こんなにかっこいいバンドが日本にいるのか!」と思った。それからなんやかんやあって今でも好きなのだから、「歌詞に中身がない」とか言いながらも、実はずっと好きなのである。色々あるけど長年同棲している女、みたいな感じか。お互いのあらは見えるしつい文句を言って喧嘩になるけど、心底嫌いなわけじゃない、本当はむしろ大好き、みたいなね。何言ってんだ俺。