先日ブログを読んでくれている友人に会ったので感想を聞いたら、ひとこと「長い」と言われました、OMG。
それはそうと。
実家に帰っているあいだ、暇だったんでギターで念仏にコードつけて弾いてみたんです。日本の音階って基本的に短調、すなわちAmとかEmとかDmとかで暗い感じになるので、古くからある民謡(通りゃんせ、子守歌など)はどうしたって陰気ですよね。それが嫌でDmaj7とかD/F#などのコードを入れてみたらこれはもう念仏ではない、という感じになりました。自分が根暗なのは念仏のせいだな、きっと。
さて、根暗な人が聴く音楽ということで今日はSyrup16gの『Hell-See』を。もうこのタイトルがすごいですよね、「健康」Healthyと「地獄を見る」Hell Seeをかけている、これはダサい(注 褒め言葉)。ちなみに同じ具合にHellとHalloweenをかけた名前のジャーマンのメタルバンドもいましたが、そっちもしっかりダサいです(注 褒め言葉)。
『Hell-See』は彼らがメジャーデビューしてから3枚目のアルバムになります。リリースは2003年。きわめて短期間で制作されたこともあり、曲構成はシンプルだしうまく力が抜けていて、彼らのなかでは淡泊な方でしょう。でもそれくらいがちょうどいいというか、他の作品を通して聴いたらわかると思うのですが、ずっと根暗な音楽を聴いていると疲れるので。
本作はたとえて言うなら「優しい味のラーメン二郎」みたいなものだと思います。他のアルバムは暗くて重いのが多いけれど、『Hell-See』はわりにさっくり聴ける、そういう感覚があります。「吐く血」「ex.人間」などの暗い曲もありますが、こういった曲はまあメンマやチャーシューみたいなものだろう、と。たぶん。
好きな曲。まず1曲目の「イエロウ」、下のリンクはライブ動画なので音質荒め。
syrup16g - イエロウ
7拍子のギターのリフで始まる勢いのある曲。とはいえ歌詞はまったく勢いがなくて、むしろ全力で後ろを向いています。
さっそく矢のようにやる気が失せていくねぇ
あっそうって言われて今日が終わる
なんだこれは。この曲はベースとドラムが格好いいです。タイトルの「イエロウ」は黄色ではなく、「家籠り(いえごもり)」を音読みしているのだと思いますが、掃除炊事洗濯が趣味だという話をしている、つまりニートのことですね。朝仕事に行く前に聴くとやる気が出る曲です。「仕事しようよ」という歌詞も出てきます、やかましいわ。
それから9曲目の「ex.人間」、Youtubeのサムネがやばい。
syrup16g - ex.人間
淡々としたリフ。そこにベースがユニゾンするのが良いです。
全体的にごく当たり前の人のことを歌っているようですが、気になるのはサビ(?)の歌詞。
きてるねぇ のってるねぇ
やってるねえ いってるねぇ
急いでいるし わかってるんだ 3つ数える間に消えろ
ここだけ意味が分かりません。それまでは「道だって答えます、親切な人間です」とか「でも遠くで人が死んでも気にしないです」とか歌っているのに、この部分はどうしたんだろう。あれこれ考えてみると、自分にまとわりついてくる幻覚や妄想、あるいはうつ状態の時に現れるネガティブな思考、そういったものをどうにかして打ち払おうとしているのかな、という気がします。考えすぎかもしれませんが。無性に蕎麦を食べたくなる曲です。
13曲目「シーツ」
白身魚の煮つけのように淡泊な曲。でも歌詞が良いです。死にゆくのを病室で待つ、といった情景なんでしょうか。そう考えると「いつか 浴びるように 溺れるように飲みたいよ」とか「風のように 鴎のように 飛びたいよ」という歌詞は、かなわないとわかっていることを願う状況のようです。切ない。
ほかにもM7「(This is just not) song for me」の、彼らにしては珍しくキラキラして明るい感じ、M14の「吐く血」の妙に明るいギターリフをバックに、いなくなった具合の悪い女(たぶん摂食障害)について思いめぐらせる歌詞。それから終わりにふさわしい曲「パレード」と好きな曲はたくさんありますが、とりあえず聴いてもらった方が早いかと。今までの作品に比べて、ベースとドラムの絡みがいいです。スリーピースということもあってか、ギターはそこまで前面に出てきませんが、それくらいがちょうどいいようにも感じます。Syrup16gを初めて聴く方にも比較的おすすめだと思います、聴きやすい曲が多いので。優しい味の二郎なので。
昔はよく聴いていたんですけど、このごろ彼らの作品をあまり聴かなくなりました。「俺生きてる価値ないわー」とか歌っているのを聴いても、共感するというより「いやいや、そんなこととっくに知ってるから!もういいから!」と思ってしまう。根暗になり過ぎたのかもしれません、これも念仏のせいだな、きっと。とはいえ、この『Hell-See』は大好きなアルバムなのです。