ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

名もなき王国

2018-10-24 | 読書日記
NHKの「美の壷」を見ていたら
装丁家の川名潤という人が出ていて
「本の最後の砦が、紙です」
と言っていた。

そのとき画面にあったのが
この本。
「名もなき王国」(倉数茂 2018年8月刊)を読みました。




「これは物語という病に憑かれた人間たちの物語である」
とはじまる。

小説家・沢渡晶の古びた屋敷には
近所の子どもたちが出入りし
好きなように遊びまわっている。
その中に晶の甥の私(澤田瞬)もいる。
子どもたちの王国(屋敷)は
晶の入院を契機に閉ざされることになる。
もともと晶の生活の面倒を見ていた兄は
王国を快く思っていなかったのだ
………

登場人物たちは
鋏で切り離され
別の物語に貼り付けられる。

瞬は
作家の「私」と知り合う。
二人は酒を飲みながら
「これから書こうと思う物語」について
語り合うようになる
………
(何という甘美な時間)

瞬は結婚している。
妻の名前は未爽。
ライターをしている未爽は
集団で子育てをするNPOナーヴェに足繁く通うようになる。
そして
帰って来なくなる
………

世界は変わってしまっている。
わたし(栞)の住む閉ざされた街には
週に一本だけ電車が来る。
ある日
駅に一人の男が降り立った。
町の人々は
外の世界のことを聞こうと
その男(澤田)の講演会を開く。
澤田は言う。
「都市部ではおそらく意図的に送電線や水道が
壊れるがままに放置されている」
澤田は
美しい姿で昏睡している栞の祖母に会わせてくれと言う
…………


最後に
これらの物語の解のようなものが示されるのだけれど
その頃にはもう
物語られ疲れ
ていて
そんなことはどうでもいいような気がしてしてしまう

のでした。
これは筆者の作戦でしょうか。










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