ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「赤朽葉家の伝説」

2023-05-16 | 読書日記

「赤朽葉家の伝説」(桜庭一樹著 2006年12月 東京創元社刊)を再読しました。

刊行当時読んだ時には
これはいったい何???
と思ったものだったけれど
再読してみると
これが面白い!
作品にようやく追いつけたのかもしれない。

第1章は万葉の物語。
鳥取県紅緑村で製鉄業を営む旧家・赤朽葉家
の大奥様タツは
跡取り息子の嫁として
山の民がこの村に置いて行ったみなしご
(その後気のいい若い夫婦に育てられた)
万葉を選ぶ。
一目で山の民とわかる風貌をした万葉は
また、文字を読むことも出来なかった。
でも未来を予知する能力を持っていた。
(そこが買われたのか)
万葉は4人の子を産む。
長男は泪(なみだ)
万葉はこの子が青年のうちに死ぬことを予知していた。
(万葉は舅の死も夫の死も予知していたので
それを聞いた2人は対策を打ち
会社に影響を与えることは無かった)
長女は毛鞠(けまり)
第2章は毛鞠の物語。
毛鞠は高校生になって、山陰を支配する暴走族の頭となる。
その後泪の死によって赤朽葉家の跡取りとなることになった毛鞠は
黙って婿を取り
家にいて漫画を描くようになる。
そして暴走族時代を題材に描いた漫画が大ヒットし
……

時代の様相を縦糸に
そこから浮き上がる横糸の赤朽葉家の人々の
歴史が興味深い。
広い家は包容力を持って
「人」を包み込む。
黒の家の娘
代々の漫画編集者
アシスタントの若い娘たち
高等遊民
……

初恋を押し込めてひたすら受け手として暮らす万葉と
外へ外へと向かう毛鞠の
底にあるひたむきさが沁みます。


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