ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「グレイス・イヤー 少女たちの聖域」 

2023-04-30 | 読書日記

オダマキが蕾をつけています。

「グレイス・イヤー 少女たちの聖域」(リゲット著 2022年11  早川書房刊)を読みました。

少女の冒険モノ
なのだからこれくらいだろう
という「線」は次々に破られる。
そして気づかされる
少女なのだから「これくらい」という「線」が
自分の中にあったことに。

主人公ティアニーは5人姉妹の三女。
父は村で医者をしている。
父はティアニーを釣りに連れて行ったり
山登りに連れて行ったり
およそ村の女の子らしくないことをたくさん経験させてくれた。
幼なじみのマイケルとの冒険も楽しかった。
だが、ティアニーは16才になってしまった。
村では
女には魔力があり
その魔力が一番高まる16才の1年間は
村を出て女の子たちだけでキャンプをするきまりになっている。
さらにその前に
男から選ばれるという儀式が待っている。
選ばれたら拒否することはできないのだ。
選ばれなかった女の子は「妻」ではなくて「労働者」になるしかない。
ティアニーは労働者になりたいと思っていた。
好きでもない男の妻になるよりは
労働者になる方がずっとマシだと。

ところがティアニーは選ばれてしまう。
選んだのは幼なじみのマイケルだ。
選ばれるはずのないおてんばのティアニーが選ばれた!
ティアニーは女の子たちの嫉みのまっただ中に投げ出される。
マイケルはリーダー格のキルステンを選ぶとみんな思っていたのだ。

村から歩いて2日、フェンスで囲まれたキャンプでの生活はキルステンとの心理戦だ。
外の森の中には密猟者がいるのでフェンスから出ることはできない。
奇妙な味のする井戸の水
荒れ果てたフェンスの内部
……
桶を作って雨水を溜めて飲料水にしようという
ティアニーの提案はキルステンによって却下される。
暮らしの技を持っていることも
嫌われるのだ
飢え
渇き
体に叩き込まれた斧
……


著者の差し出す容赦のないダーク感
がちょっと癖になります。
続編もあるらしい。

 

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