ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「秘密の花園」 朝井まかて

2024-05-02 | 読書日記

「秘密の花園」(朝井まかて著 2024年1月 日本経済新聞出版 466p)を読みました。

牧野富太郎が主人公の朝ドラ「らんまん」で
妻のすえ子の推しだった馬琴先生が主人公
そして
次の大河ドラマの主人公蔦屋重三郎も出てくる
ということで予習しようかな
と。

朝井まかての女主人公は、とてもいい。
「眩」(くらら)の葛飾応為(おうい・北斎の娘)
「グッドバイ」の大浦慶(日本茶を輸出した人)

この作品の主人公は滝沢馬琴だけれど
妻のお百がとても面白い。
「女房なるもの
変幻自在、奇々怪界な生きものだ
剥いても剥いても違う色の皮が出てくる」
と馬琴を呆れさせ
かと思うと
馬琴の兄の遺児を引き受けて育て
馬琴が子どもを実母に返そうとすると
嫌がって
「お前様はほんに、意地の悪い猿のようだ」
とあかんべえまでする。

終点は
「盲目になった馬琴が
亡き息子の嫁の路に代書してもらって
ようやく「里見八犬伝」を書き上げる」
だから
たぶん、代書の苦労の日々が描かれるのだろうな
という予想は覆される。
(そこは、ほんの数ページ)

そこまでの
一家を切り盛りする馬琴の苦労
長編ゆえの「八犬伝」出版のごたごた
縁ある人々の死
後継の息子の死……

その中に埋もれるように美しい花の記憶がある。

奉公先の武家を飛び出してさまよっている夜に
出会った口の言えない美しい夜鷹
夜鷹が祖父と住む陋屋に
馬琴はひと夏身を寄せる。
そこに咲いていた青い朝顔

体の弱い息子の宗伯とつくった花園
野菊、桔梗、藤袴、吾亦紅
女郎花、鋸草、朝顔、撫子が咲き乱れる

わずか数ページの「花園」が
心に残るのは
その周辺を埋める雑雑とした日々が
あるからでしょうか



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