「小公女たちのしあわせレシピ」(谷瑞恵著 2023年10月 新潮社 302p)を読みました。
料理本ではありません。
「小公女」で「しあわせ」で「レシピ」と来たら
ずいぶん甘そうな感じがするけど
そうでもありません。
舞台は家族経営の小さなビジネスホテル。
そこにメアリさんという老女が長期滞在していた。
自分の家を持たず
ホテルに住んでいたひと。
まぁ、お金はあったらしい。
メアリさんは、ある日、外で倒れて死んでしまう。
どこの誰とも分からないメアリさんは
行路病死人という扱いになってしまう。
ピンクの服に麦藁帽子、大きなスーツケースを引いて、ミニ豚を連れていたメアリさん。
スーツケースには
古い児童書がいっぱいにつまっていた。
メアリさんは
その本を、あちこちに置いて歩いていた。
作品にちなんだお菓子のレシピを挟み込んで。
レシピはホテル備え付けの便箋に書かれていたので
拾った人は
次々にホテルを訪れる。
人は、誰でも、行き詰まってしまうことがある。
ルームシェアしていた友人が結婚することになって
住まいのこと、仕事のをことを考えざるを得なくなったつぐみ
母親と二人暮らしのつましい暮らしを
クラスメートに否定されてしまった中学生の理奈
夫や息子に存在を認めてもらえないと考えて家出した詠子
幼い頃
海で溺れた時に母の見せた顔がトラウマになっている獣医の蒼
これまで生きて来た道を
何となく否定的に考えてしまっている和佳子
……
メアリさんの本を拾って
挟み込まれていたレシピにあるお菓子を作ることによって
行き詰まっていた気持ちが
ふわっと解けていく。
お菓子を作るというささやかなことで。
行き詰まりが解けるのは
案外ちょっとしたきっかけなのかもしれない。
「小公女」のぶどうパン
「トムは真夜中の庭で」のトライフル
「不思議の国のアリス」のトリークタルト
「ドリトル先生」のスエットプディング
「メアリー・ポピンズ」のジンジャーパン
「秘密の花園」のオーツケーキ
……
お菓子は
なかなかシック
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