ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

「おんなの女房」 予想を裏切る展開

2022-05-10 | 読書日記

「おんなの女房」(蝉谷めぐ実著 2022年1月 角川書店刊)を読みました。

 

「武家の娘が歌舞伎の女形に嫁に行ったら
女形は舞台を降りてもおんなとして暮らしている人だった」
という紹介文を読んで
これは武家娘が歌舞伎役者の女房として成長していく修行話かな?
と予想して
読みはじめたら
これが大違い。

主人公の志乃は
米沢藩の武士の娘で
父に言われるままに江戸の役者のところに嫁入った。
夫は燕弥というトップの次のあたりの女形。
家でも女の格好をしているのはもちろん
言動までもが役になり切ってしまうから厄介だ。

父から武家の娘として厳しく育てられた志乃は
どうやって女形の女房になったらいいのか分からない。
モデルがないのだ。
生真面目な性格の志乃は、どうしても正解を求めてしまう。
知り合った寿太郎という役者の女房お富は
行きたければ禁制の芝居の楽屋にまで入り込んでしまう自由さだし
仁左次の女房のお才は
大きな屋敷でたくさんの奉公人を使い4人の子を育て家を取り仕切っている。
どちらをモデルにしたらいいのか?
それともモデルは他にあるのか?

そればかりではない。
燕弥が少しずつ変わってきたのだ。
歩幅がほんの少し大きくなり、声が少し低くなった。
志乃は悩む……

無意識に予想して読んでいる方向が
急カーブを描いて別の方向になる
ところが面白い
個性的な時代小説です。

登場人物が現代語で話すのも、三谷脚本以来はアリならしい。

 

 

 

 

コメント