ゆらゆら荘にて

このごろ読んだ面白い本

エンド・オブ・ライフ

2021-02-05 | 読書日記
「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている 再生・日本製紙石巻工場」
を書いた佐々涼子さんの
「エンド・オブ・ライフ」(佐々涼子著 2020年2月集英社インターナショナル刊)を読みました。
本屋大賞ノンフィクション本大賞を受賞したものです。




書かれている対象(人生の終焉)と
著者の距離の近さに
驚く。

取材の対象は京都で訪問診療を行なっている渡辺西賀茂診療所。
診療所には医師、看護師、ヘルパー、ケアマネジャーがいる。
佐々は彼らの訪問に同行させてもらって取材する。
死の前に潮干狩りに行きたいと言った人
ディズニーランドに行った人
音楽家を呼んで家でコンサートを開いた人……
様々な人を取材する。

佐々が訪問診療に関心を持ったのは
自分の母親が自宅で父親の介護を受けるようになったことがきっかけだった。
母は閉じ込め症候群(四肢麻痺および下位脳神経が麻痺しているが意識は覚醒している状態であり
合図として用いる眼球運動以外,表情を示す,動く,話す,意思を伝達することができない)になっている。
母と仲の良かった父は
生来の器用さもあって
毎日の入浴から痰の吸引、おむつの世話もこなし
母が元気だった頃に使っていた化粧水をデパートに買いに行くほどの細やかさもある。
家の中もきちんと整えられ
母の好きだった庭の花々もよく世話している。

取材を進めるうちに渡辺西賀茂診療所の看護師・森山が癌になる。
森山とは、もう友人と言ってもいいほど親しくなっていた。
一緒に看護についての本を書こう
と森山は言う。

しかし森山は何も語らない。
佐々を呼び出しては
妻と3人でドライブをし
食事をし
それで終わりだ。

実は佐々も
森山が発病する少し前
体調を崩して仏教に傾倒していた。
バングラデュの仏教寺院に行き
タイの森林派の僧侶に会いに行き
スコットランドのスピリチュアル・コミュニティに行った。

この本には
どういう風に人生の終焉を迎えるかについての結論めいたものはない。

佐々は言う。
「ひとつだけわかったことがある。
私たちは、誰も死について本当はわからないということだ」











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