ここでいう「カラス」というのは玄人の詐欺師のこと。
「詐欺」を生業としている、テツさんとタケさんというしたたかな中年二人組。
二人には闇金絡みで家族を亡くしているという共通点がある。
しかもタケさんは、自らの借金のせいでその闇金組織に働かされ、
人を自殺に追い込んだ苦い過去がある。
その時タケさんは自分のしたことに嫌気をさしその組織を裏切り警察に通報、
そのせいで組織に家を焼かれ一人娘を亡くした。
それ以後は一人きりで他人の戸籍を買いとって名前を変えて隠れるように
生きてきた。
ある日突然、彼らの生活に一人の少女が舞い込んで来た。
戸惑う二人だったがやがて同居人は3人増え、「他人同士」の奇妙な共同生活が
始まった。タケさんは情容赦のない取立ての闇金組織に対していつまでも逃惑う
生活に終止符打つため又失くしてしまったものを取り戻すため、そして自らの
過去と訣別するために、テツさんや同居人達と一緒に、闘うことを決意する・・・
それはそれは詐欺師の彼らが企てたのは大プランだったが・・・。
最後のどんでん返しには参りました。なるほど各所にそれらしき伏線が
張られてましたね。何だか気にはなっていたが最後のまで読まされてから気付くとは・・・
意外な真相と大きな仕掛けに・・・「あっ」という驚きでした。
最初はわずかな借金がやがて多重債務者に・・・借金地獄の恐ろしさよ。
『親指は父親の意味で、親指だけが正面から他の指を見渡すことが出来るんです。』(本分よリ)
2008年 7月 講談社刊 1785円