メランコリア

メランコリアの国にようこそ。
ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『24人のビリー・ミリガン』

2016-10-11 12:37:08 | 
『24人のビリー・ミリガン』
原題The Minds of Billy Milligan by Daniel Keyes
ダニエル・キイス/著

 

※1993.1~のノートよりメモを抜粋しました。
「読書感想メモリスト」カテゴリーに追加しました。

(本のデータが少ないので、リンクはamazonにしました


あらすじ(ネタバレ注意

平成5年5月27日、本書を購入

バイト先のYさんと、Iさんとで、何ヶ月か前(それとも1ヶ月前?)ランチに行った時、噂を聞いて
多重人格者の犯罪でノンフィクションと聞いただけで、そのショッキングでスキャンダラスさに興味をそそられ、
熱を出して休んでいたのに、ついに3日間かけて読み上げてしまった。

今はひどい頭痛がしている
本書のせいでもないだろうけど、軽い読み物でなかったことはたしか

ノンフィクションだけに、キースが慎重になって一語一句を書いているのが伝わってくる

結局、本人はハッピーエンディングな形で、現在もアメリカにいることが分かって、複雑な思い
犯罪が行われたことは確かだし、本人が責任を負えない状態にあったという判決も理解できる
でも、まだ複雑

もう充分、精神的にも、肉体的にも罪を償うだけの代償は払ったようにも思える


24もの人格をもつ1人の人間
やっぱり、実際この目で見てみないと信じがたい、映画のように思える

以前、まったく違った3つの人格をもつ女性『私の中の他人』を読んで、
あすこまではなんとか理論的に想像がつくけど、
言語、年齢もまったく異なり、縄抜けの名人だったり、腕力では負けない男がいたり・・・
まるで1人の中に『Aチーム』のメンバを全員備えちゃってるみたい

ある意味では便利そう
家族を1人の中に持ってるから寂しくはならなそうだし
状況に合わせてそれぞれの担当者がいるなんて

本人にとっては、しょっちゅう時間、記憶を失って、混乱の連続、行き当たりばったりだろうけど


一人の脳のそれぞれの部分が突出した結果とも思える
「人は、その能力の10%も使っていない」と聞いたことがある
脳の部分、部分をフル活用すれば、こんな24の人格のようになるかもしれない

彼は神童だったとも書かれているし、千里眼のようなものももっているみたいで
途中から、彼はとんでもない超人に変身するんじゃないかって思えてきたけど、
統合された彼は、普通の人間だったっていうのは不思議だった


職を転々として、絵が売れるせいでお金に困らないのは本当に不幸中の幸いって感じ
本書の中でさえ、一体、何枚描かれたのか、相当な数だろう
その1つ1つを観てみたいものだ
本書のカバーも彼の描いたものと推察する


本当に精神病院に入院しなければならないのは、幼児を虐待する人たちだ
子どもに性的欲求をもち、弱い立場を利用して虐待する
その神経が一体どうなっているのか、綿密に調べて治療する必要があるだろうに

子どもたちを家畜以下の性の道具として扱い、正常に成長すると思っているのかしら?
同じ星にこんな野蛮人がいるとは想像がつかない


それにしても、ビリーのこれまでの半生って、なんて波乱に富んでいるのかしら

家庭環境もスゴイものがあるけど、犯罪組織やらと関わるし、あちこち飛行機で飛び回ったり、
あらゆる精神病院に運ばれて、何十人ものスタッフと関わって・・・
病気じゃなくても、これだけいくつもいくつも問題が起こり続ければ、生きていたくなくなる気持ちも分かる気がする


後半、いつ、どこに、どんな状況においても、ビリー自身が
他のビリー側のスタッフと同じくらい自己の基本的人権を主張していた態度には感心した

弁護士やらのシステムが発達したアメリカだというのも理由の1つだろうけど、
何度もおかした自殺未遂の末に、彼が見つけた「生きる理由」とは一体何だったのか!?


もう1つ重要なポイントはマスコミ
人が集団になり、そこに利害が加わった時、それがどんなに巨大な力になるかが改めて分かった気がする

1人1人は、少しの意見とポリシーをもつ、基本的に善良なものと私は思っているけれども、
複数になった瞬間、問題の焦点がぼやけて、なにが本当に正しいのかを判断する力が薄れ
時に意見が一方に偏りがちになる

ここで語られる新聞、雑誌は、人々を不安に駆り立て、噛み付くことしかできない怪物のように感じられる


本書は映画化されるだろうか?
ビリー役は、そうとうな演技派じゃなきゃ務まらないだろう

本書を読んでいると、他の人格たちが1人の人間の肉体しかもっていないとは考えられなくなってくる
それぞれの人物が行動しているところをつい想像してしまう
でも、他から見ればビリー1人でしかあり得ない

ちなみに上巻にある写真からは、あまりハンサムには見えないけど、
登場する女たちは皆彼がハンサムだと言っている

レイプ(レズビアンのアダラナの仕業だとしても)という罪を犯して、悪名高い一方、
病院内の女性たちにやたらとモテるくだりはなんとも不思議

ダニエル・キースのほかの2冊の著書もぜひ読んでみたい



コメント    この記事についてブログを書く
« 木下グループカップpresents... | トップ | 『きよしこ』(新潮文庫) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。