1973年初版 1986年 第13刷 中山知子/訳 山中冬児/装幀・口絵 武部本一郎/挿絵
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
短編集は、せっかく脳裏に描いた風景や人物像を
短時間にどんどん切り替えなきゃならないから
1冊につきひとつの物語のほうが好きだな
詩人でもある作者の自然や人物の表現が豊かで美しい
どこか孤独がつきまとう感じが漂う
【内容抜粋メモ】
■人形つかいのポーレ
ろくろ細工が好きな少年は、パウル・パウルゼンという美術細工師のもとに弟子入りする
パウル氏の一人息子ヨーゼフは他国へ修行に行っているため
少年は息子のように可愛がられる
ある日、パウル氏のことを“人形つかいのポーレ”と呼ぶ老人がいて
結婚記念日に招かれた際に理由を訊ねるとひどく怒るが
そう呼ばれることになった物語を聞かせてくれる
少年の頃、二輪馬車で人形つかいの一家がやって来て
家の前の宿屋に泊った
ちんどん屋が、ヨーゼフ・テンドラー氏の人形芝居
“伯爵ジークフリートと聖女ゲノフェーファ”を演ると宣伝して
パウル少年は行きたくてたまらない
一人娘のリーザイが人形の衣装に使う布を買うというので
近所の仲の良い服地の店を紹介すると、たくさんの端切れをタダでくれる
そのお礼に人形芝居の一等席の切符をくれる
人形劇にカスペルという道化師が出てきて、夢中になる
2回目の芝居は“ファウスト博士の地獄ゆき”
父:一度イヤになるほど観るのが一番いい薬かもしれん(禁止するより全然いいよね
早く行って、リーザイにカスペルを見せてもらう
つい触ってみると、ポキっと音がして精密な操り人形を壊してしまう
本番中に腕が上がらなくなり、慌てて機転を利かせるテンドラーさん
リーザイ:うちへ帰ったらムチでぶたれるわ と泣き
2人は楽屋で人形の箱の中で眠ってしまう
そこにテンドラー氏、パウルの父が来て、人形を壊したことを正直に話すと
父が修理することで水に流してもらう
テンドラー氏の妻は有名な人形つかいガイセルブレヒトの娘なのが自慢
リーザイは毎日のように遊びに来て、すっかり仲良くなる
手持ちの芝居を出しつくしたので、ほかの土地に出かけなければならない
別れの時「もう二度と会えないのだ」という胸の痛みを初めて知る
12年後、両親は亡くなり、パウルは1人で修行に出ていた
その下宿の前の刑務所で泣いている女性に声をかけるとリーザイ!
旅の途中で母が亡くなり、父と興行を続けていたが
宿屋の主人の財布が盗まれた罪を着せられて父が逮捕された
刑務所長、検事とも親しいパウルは話して
テンドラー氏は無実で釈放されたが
繊細な気質のため高熱を出し、看病する
故郷に帰る日、亡き母の「その手をしっかり握って一緒にお帰り」という声を聞いて
リーザイにプロポーズする
2人は結婚
テンドラー氏も引き取り、元気になると、また芝居がやりたくなる
シュミット一家は、腕はいいが、酒飲みで、乱暴者
親方のもとを追い出されてから、パウルを恨んでいた
芝居の当日、女役の女性はリーザイのように上手く歌えずヤジが飛び
芝居がめちゃくちゃになる
そのヤジを飛ばしたのはシュミットの息子たち
翌日、玄関のドアに“人形つかいのポーレ”と落書きがしてあった
テンドラー氏はショックで人形をタダ同然で売り
その後、買い戻していったが、カスペルだけは見つからなかった
テンドラー氏が亡くなり、棺に土がかけられる
牧師:なんじは土よりつくられたり
その時、どこからともなくカスペルが投げ込まれ
テンドラー氏とともに葬られることになる
牧師:
それゆえに、なんじふたたび土となるべし
やがてなんじまた土よりよみがえらん
心安かれ よき人はその働きをやめてやすまん
カスペルを投げたのはシュミットの息子
彼はその後、すっかり落ちぶれて、物乞いの旅職人となった
■みずうみ
老人は散歩から帰り、部屋の肖像画が月の光に照らされた時
「エリーザベト」とささやき、一気に11歳だった頃に記憶が戻る
少女エリーザベトと少年ラインハルトはとても仲良し
ラインハルトはエリーザベトにいろんなお話を聞かせ
いつか大きくなって自分の奥さんになってインドに一緒に行こうと固く約束する
ラインハルトは町を出て学校に通うことになり、みんなで送別のピクニックに出かける
世話役の老紳士:
これから何もつけないパンをあげるよ
おかずは自分で探すんだ
森にはイチゴがたくさんある
不器用で見つからない子には何にもつけないパンを食べてもらう
人生は万事そういうものだ
ラインハルトはエリーザベトにイチゴがたくさんなるところに案内しようとして迷い
2人は何も持たずにようやくみんなのもとに戻る
老紳士はみんなの願いを聞いて、2人にもご馳走を分ける
クリスマスイブ
故郷に帰るお金もないラインハルトは酒場に来ると
ジプシーの娘がツィター(琴)を弾きながら歌う
家からプレゼントが届いたと聞いて、急いで戻ると
母が焼いて、エリーザベトが砂糖で名前をつけた焼き菓子が届いている
ラインハルトの友人エーリッヒが描いたエリーザベトのスケッチも同梱されている
復活祭の休暇に故郷に帰り、エリーザベトはエーリッヒがくれたカナリヤを大事にしている
エーリッヒは湖のほとりの父の別荘を継いだばかり
ラインハルト:君と2年間も会えないが、帰ったら、今と同じように僕を愛してくれる?
エリーザベトはやさしくうなづく
それから2年後 母から手紙が来て、エーリッヒがエリーザベトと婚約したとのこと
それからまた数年後 幸せな2人を訪ねる
ラインハルトは民話や民謡を集める仕事をしている
そのひとつを歌うと、通りすぎた牛飼いの少年が真似て歌う
ラインハルト:古い歌はこんな風に伝わっていくんだね
乙女の嘆きの歌をうたうと、エリーザベトは席を外してしまう
エリーザベト:あなたはもう二度といらっしゃらないのね
ラインハルト:ええ、もう二度と
■マルテおばさんの時計
私が学生の頃、下宿にマルテおばさんが一人で暮らしていた
風変りな古い置時計があり、持ち主の気持ちが分かるらしい
クリスマスに妹家族を訪ねようとすると
「行っちゃダメだ」と止めるため、出かけるのをやめて
昔のクリスマスの思い出にふける
病気の母に付き添うマルテ
母:
元気になったら、ハンネ(妹)の所へ訪ねていこうね
あれの子どもたちの夢を見ていたところだよ
妹の子どもたちは死んでしまったことも分からなくなっている
その夜、母は亡くなる
■愛の群像
海は荒れてるのに、泳ぐのが大好きな少女は
茶店のカーティが止めるのも構わず、海に入る
イタリア、ギリシャから帰ってきたばかりの若い彫刻家フランツと
親友のエルンストは、少女がおぼれているのを見かけて
フランツが助け出し、エルンストが医者を呼びに行く
意識が戻った少女は、恩人の名前も聞かないまま逃げるように帰る
フランツもエルンストに助けた少女の名前を教えないでくれと頼んだが
社交界に出てからすでに評判で、夏以来、庭から出ていないという
フランツは少女をプシケのように思う
姉にだまされて、夜しか会わない恋人を怪物と思い込み
河に飛び込むと、河の神が助けた神話をもとに大理石像をつくる
展覧会で発表すると評判になるが、河の神がフランツに似ていることが批評される
思い悩む息子を心配して、母は旅行をすすめ
フランツは旅に出る前に、プシケの像をもう一度観に行くと
モデルとなった少女が観に来ている
名前はマリア 2人は愛を誓う
フランツの母のもとに2組のカップルがやって来る
1組はマリアの両親、もう1組はマリアとフランツ
結婚式にはカーティも来てもらおうと提案するマリア
■リンゴと少年
少年は熟れたリンゴをとって袋に入れている
その1つが、下にいる男に当たって驚く
男は恋人と会う約束をしていて
銀貨を少年にあげて早く立ち去るよう言う
恋人が来てしまうと、少年は「リンゴどろぼう!」と叫んだため
家中の者が棒などをもって出てくる
少年はその家の子どもだった?
■クリスティアン物語
クリスティアンは幼い頃に両親を失い、叔母イェッテに引き取られた
カロリーネばあやは、そもそもクリスティアンの子守だったが
しっかり者のため、万能女中として残った
クリスティアンは高等学校の教師となり
安心したイェッテは亡くなる前、カロリーネを見捨てないようにと忠告する
イェッテ:
お前は世間知らずだから、つまらないネズミを近づけないよう
防いでくれる人が必要なんだよ
クリスティアンは校長補佐に出世し、もう1人の叔母の遺産をもらったことで
以前、父がしていたように親戚を招いて晩さん会を催す計画をする
パーティーの女主人公が必要だから、おじさんに相談すると
ユーリエという差配(会計係)の娘を紹介してくれる
彼女が来てからは、家中が息をふきかえし
細かい気づかいや、仕事の容量の良さには厳しいカロリーネですら感心する
しかも、ユーリエが来てからは、クリスティアンは毎日早く帰宅しているのも気にかかる
カロリーネ:先生さまをおまもりしなければ
パーティーは大成功
ある日、ユーリエの母が訪ねて来て、2人の結婚の話が決まる
■三色すみれ
10歳のネージーは、父の書斎に飾られている亡き母の肖像画にバラの花をそえる
父ルードルフは若い再婚相手イーネスを連れて来る
それから何か月経っても、ネージーが自分を“おかあさま”と呼ばず
打ち解けないことを悩むイーネス
イーネス:ああ、可哀想な私 まだ若いのに、私の結婚は不幸せだわ
鍵のかけた庭には、昔15歳の美しい妻と出会った思い出が詰まっている
イーネス:あなたは私に隠れて、あの世の人と会っていらっしゃるんです!
イーネスは思い詰めて死まで考えるが、2人の間に女の子が生まれ
生死をさまよった末、意識が戻ると、すべてがほぐれる
庭を開放し、娘に元妻の名前マリーとつけようというイーネスに
ルードルフ:
このことをおもちゃにするのはよそう
イーネスという女もこの世に二人いてはならないのだから
一番手身近なことから始めようじゃないか
人間が自分にも他人にも教えることのできる一番いいことをね
それは生きることだ
できるだけ美しく、長く生きることなのだよ
ネージーは妹を乳母車に乗せて、犬ネロにひかせて遊ぶ
■解説
テオドール・シュトルム
1817年 北ドイツ生まれ
19世紀ドイツが生んだ最も優れた小説家の1人
最後の大作『白馬の騎手』を書いて71歳で亡くなった
『みずうみ』『三色すみれ』は早くから日本に紹介され、今なお広く読まれている
三色すみれという字は、まま母という字からできている通り
本作は美しいまま母の物語
テオドールが48歳の時、7人の子どもを残して妻に先立たれ
再婚した時の苦しい経験をもとにしている
※「ジュヴェナイルまとめ」カテゴリー内に追加します
短編集は、せっかく脳裏に描いた風景や人物像を
短時間にどんどん切り替えなきゃならないから
1冊につきひとつの物語のほうが好きだな
詩人でもある作者の自然や人物の表現が豊かで美しい
どこか孤独がつきまとう感じが漂う
【内容抜粋メモ】
■人形つかいのポーレ
ろくろ細工が好きな少年は、パウル・パウルゼンという美術細工師のもとに弟子入りする
パウル氏の一人息子ヨーゼフは他国へ修行に行っているため
少年は息子のように可愛がられる
ある日、パウル氏のことを“人形つかいのポーレ”と呼ぶ老人がいて
結婚記念日に招かれた際に理由を訊ねるとひどく怒るが
そう呼ばれることになった物語を聞かせてくれる
少年の頃、二輪馬車で人形つかいの一家がやって来て
家の前の宿屋に泊った
ちんどん屋が、ヨーゼフ・テンドラー氏の人形芝居
“伯爵ジークフリートと聖女ゲノフェーファ”を演ると宣伝して
パウル少年は行きたくてたまらない
一人娘のリーザイが人形の衣装に使う布を買うというので
近所の仲の良い服地の店を紹介すると、たくさんの端切れをタダでくれる
そのお礼に人形芝居の一等席の切符をくれる
人形劇にカスペルという道化師が出てきて、夢中になる
2回目の芝居は“ファウスト博士の地獄ゆき”
父:一度イヤになるほど観るのが一番いい薬かもしれん(禁止するより全然いいよね
早く行って、リーザイにカスペルを見せてもらう
つい触ってみると、ポキっと音がして精密な操り人形を壊してしまう
本番中に腕が上がらなくなり、慌てて機転を利かせるテンドラーさん
リーザイ:うちへ帰ったらムチでぶたれるわ と泣き
2人は楽屋で人形の箱の中で眠ってしまう
そこにテンドラー氏、パウルの父が来て、人形を壊したことを正直に話すと
父が修理することで水に流してもらう
テンドラー氏の妻は有名な人形つかいガイセルブレヒトの娘なのが自慢
リーザイは毎日のように遊びに来て、すっかり仲良くなる
手持ちの芝居を出しつくしたので、ほかの土地に出かけなければならない
別れの時「もう二度と会えないのだ」という胸の痛みを初めて知る
12年後、両親は亡くなり、パウルは1人で修行に出ていた
その下宿の前の刑務所で泣いている女性に声をかけるとリーザイ!
旅の途中で母が亡くなり、父と興行を続けていたが
宿屋の主人の財布が盗まれた罪を着せられて父が逮捕された
刑務所長、検事とも親しいパウルは話して
テンドラー氏は無実で釈放されたが
繊細な気質のため高熱を出し、看病する
故郷に帰る日、亡き母の「その手をしっかり握って一緒にお帰り」という声を聞いて
リーザイにプロポーズする
2人は結婚
テンドラー氏も引き取り、元気になると、また芝居がやりたくなる
シュミット一家は、腕はいいが、酒飲みで、乱暴者
親方のもとを追い出されてから、パウルを恨んでいた
芝居の当日、女役の女性はリーザイのように上手く歌えずヤジが飛び
芝居がめちゃくちゃになる
そのヤジを飛ばしたのはシュミットの息子たち
翌日、玄関のドアに“人形つかいのポーレ”と落書きがしてあった
テンドラー氏はショックで人形をタダ同然で売り
その後、買い戻していったが、カスペルだけは見つからなかった
テンドラー氏が亡くなり、棺に土がかけられる
牧師:なんじは土よりつくられたり
その時、どこからともなくカスペルが投げ込まれ
テンドラー氏とともに葬られることになる
牧師:
それゆえに、なんじふたたび土となるべし
やがてなんじまた土よりよみがえらん
心安かれ よき人はその働きをやめてやすまん
カスペルを投げたのはシュミットの息子
彼はその後、すっかり落ちぶれて、物乞いの旅職人となった
■みずうみ
老人は散歩から帰り、部屋の肖像画が月の光に照らされた時
「エリーザベト」とささやき、一気に11歳だった頃に記憶が戻る
少女エリーザベトと少年ラインハルトはとても仲良し
ラインハルトはエリーザベトにいろんなお話を聞かせ
いつか大きくなって自分の奥さんになってインドに一緒に行こうと固く約束する
ラインハルトは町を出て学校に通うことになり、みんなで送別のピクニックに出かける
世話役の老紳士:
これから何もつけないパンをあげるよ
おかずは自分で探すんだ
森にはイチゴがたくさんある
不器用で見つからない子には何にもつけないパンを食べてもらう
人生は万事そういうものだ
ラインハルトはエリーザベトにイチゴがたくさんなるところに案内しようとして迷い
2人は何も持たずにようやくみんなのもとに戻る
老紳士はみんなの願いを聞いて、2人にもご馳走を分ける
クリスマスイブ
故郷に帰るお金もないラインハルトは酒場に来ると
ジプシーの娘がツィター(琴)を弾きながら歌う
家からプレゼントが届いたと聞いて、急いで戻ると
母が焼いて、エリーザベトが砂糖で名前をつけた焼き菓子が届いている
ラインハルトの友人エーリッヒが描いたエリーザベトのスケッチも同梱されている
復活祭の休暇に故郷に帰り、エリーザベトはエーリッヒがくれたカナリヤを大事にしている
エーリッヒは湖のほとりの父の別荘を継いだばかり
ラインハルト:君と2年間も会えないが、帰ったら、今と同じように僕を愛してくれる?
エリーザベトはやさしくうなづく
それから2年後 母から手紙が来て、エーリッヒがエリーザベトと婚約したとのこと
それからまた数年後 幸せな2人を訪ねる
ラインハルトは民話や民謡を集める仕事をしている
そのひとつを歌うと、通りすぎた牛飼いの少年が真似て歌う
ラインハルト:古い歌はこんな風に伝わっていくんだね
乙女の嘆きの歌をうたうと、エリーザベトは席を外してしまう
エリーザベト:あなたはもう二度といらっしゃらないのね
ラインハルト:ええ、もう二度と
■マルテおばさんの時計
私が学生の頃、下宿にマルテおばさんが一人で暮らしていた
風変りな古い置時計があり、持ち主の気持ちが分かるらしい
クリスマスに妹家族を訪ねようとすると
「行っちゃダメだ」と止めるため、出かけるのをやめて
昔のクリスマスの思い出にふける
病気の母に付き添うマルテ
母:
元気になったら、ハンネ(妹)の所へ訪ねていこうね
あれの子どもたちの夢を見ていたところだよ
妹の子どもたちは死んでしまったことも分からなくなっている
その夜、母は亡くなる
■愛の群像
海は荒れてるのに、泳ぐのが大好きな少女は
茶店のカーティが止めるのも構わず、海に入る
イタリア、ギリシャから帰ってきたばかりの若い彫刻家フランツと
親友のエルンストは、少女がおぼれているのを見かけて
フランツが助け出し、エルンストが医者を呼びに行く
意識が戻った少女は、恩人の名前も聞かないまま逃げるように帰る
フランツもエルンストに助けた少女の名前を教えないでくれと頼んだが
社交界に出てからすでに評判で、夏以来、庭から出ていないという
フランツは少女をプシケのように思う
姉にだまされて、夜しか会わない恋人を怪物と思い込み
河に飛び込むと、河の神が助けた神話をもとに大理石像をつくる
展覧会で発表すると評判になるが、河の神がフランツに似ていることが批評される
思い悩む息子を心配して、母は旅行をすすめ
フランツは旅に出る前に、プシケの像をもう一度観に行くと
モデルとなった少女が観に来ている
名前はマリア 2人は愛を誓う
フランツの母のもとに2組のカップルがやって来る
1組はマリアの両親、もう1組はマリアとフランツ
結婚式にはカーティも来てもらおうと提案するマリア
■リンゴと少年
少年は熟れたリンゴをとって袋に入れている
その1つが、下にいる男に当たって驚く
男は恋人と会う約束をしていて
銀貨を少年にあげて早く立ち去るよう言う
恋人が来てしまうと、少年は「リンゴどろぼう!」と叫んだため
家中の者が棒などをもって出てくる
少年はその家の子どもだった?
■クリスティアン物語
クリスティアンは幼い頃に両親を失い、叔母イェッテに引き取られた
カロリーネばあやは、そもそもクリスティアンの子守だったが
しっかり者のため、万能女中として残った
クリスティアンは高等学校の教師となり
安心したイェッテは亡くなる前、カロリーネを見捨てないようにと忠告する
イェッテ:
お前は世間知らずだから、つまらないネズミを近づけないよう
防いでくれる人が必要なんだよ
クリスティアンは校長補佐に出世し、もう1人の叔母の遺産をもらったことで
以前、父がしていたように親戚を招いて晩さん会を催す計画をする
パーティーの女主人公が必要だから、おじさんに相談すると
ユーリエという差配(会計係)の娘を紹介してくれる
彼女が来てからは、家中が息をふきかえし
細かい気づかいや、仕事の容量の良さには厳しいカロリーネですら感心する
しかも、ユーリエが来てからは、クリスティアンは毎日早く帰宅しているのも気にかかる
カロリーネ:先生さまをおまもりしなければ
パーティーは大成功
ある日、ユーリエの母が訪ねて来て、2人の結婚の話が決まる
■三色すみれ
10歳のネージーは、父の書斎に飾られている亡き母の肖像画にバラの花をそえる
父ルードルフは若い再婚相手イーネスを連れて来る
それから何か月経っても、ネージーが自分を“おかあさま”と呼ばず
打ち解けないことを悩むイーネス
イーネス:ああ、可哀想な私 まだ若いのに、私の結婚は不幸せだわ
鍵のかけた庭には、昔15歳の美しい妻と出会った思い出が詰まっている
イーネス:あなたは私に隠れて、あの世の人と会っていらっしゃるんです!
イーネスは思い詰めて死まで考えるが、2人の間に女の子が生まれ
生死をさまよった末、意識が戻ると、すべてがほぐれる
庭を開放し、娘に元妻の名前マリーとつけようというイーネスに
ルードルフ:
このことをおもちゃにするのはよそう
イーネスという女もこの世に二人いてはならないのだから
一番手身近なことから始めようじゃないか
人間が自分にも他人にも教えることのできる一番いいことをね
それは生きることだ
できるだけ美しく、長く生きることなのだよ
ネージーは妹を乳母車に乗せて、犬ネロにひかせて遊ぶ
■解説
テオドール・シュトルム
1817年 北ドイツ生まれ
19世紀ドイツが生んだ最も優れた小説家の1人
最後の大作『白馬の騎手』を書いて71歳で亡くなった
『みずうみ』『三色すみれ』は早くから日本に紹介され、今なお広く読まれている
三色すみれという字は、まま母という字からできている通り
本作は美しいまま母の物語
テオドールが48歳の時、7人の子どもを残して妻に先立たれ
再婚した時の苦しい経験をもとにしている