メランコリア

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『のらねこ。震災を越えて』

2013-03-22 11:37:50 | 
『のらねこ。震災を越えて』(エンターブレイン)
中川こうじ/著

『のらねこ。ちいさな命の物語』につづく第3冊目。

仕事の依頼もあって、著者は、以前も取材したことがある田代島に震災後訪ねて愕然とする。

“まさに地獄絵図。戦地の経験はいやというほどあり、地獄絵図などには冷酷なほど慣れていると思っていた。
 けれど、ここはちがった。容赦ない。この言葉だけが頭にこびりつく。”


CHAPTER1 島で生きる
震災前の穏やかな日々の写真。ここでは漁師と猫が寄り添って生きていた。

“居心地のよさってみかけの華やかさや、物の豊かさではない。”

  


CHAPTER2 震災の疵痕
震災後、がれきが積まれ、すっかり様変わりしてしまった風景の中でも
必死にその日を生きようとする人々と猫たちの姿が撮られている。

“恐ろしい時から少しずつ時間が動き始めた。恐怖がつのった。死ぬという恐怖よりも、生きているという恐怖。”

“小さな命。母とともに寄り添い、支える。さぁ、ここから歩こう。ここから新たに生みだそう。”

  


CHAPTER3 再生の息吹き
震災を知らない新たに生まれた子猫の姿、みんなで支え合って復興に向けて前を向く姿が撮られている。



“ここに集う。生きていることを確かめ合い、明日を生きることを誓いあう。”

 

“ここはぼくの楽園。そんなにいろいろなものはなくとも、そんなに豊かじゃなくとも、
 そんなものよりたいせつなものがたくさんたくさんある。”

 



【著者あとがきメモ】
命ははたして食べものだけで生きていけるのか。答えはNOな気がする。

ある2つの難民キャンプがあり、1つにはありあまる物資があったが、そこのスタッフは多忙で、なかなかほかに手が回らない。
もう1つは、あまり物資がなかったが、みなで分け合い、子どもたちと密にコミュニケーションをとった。
この2つのキャンプで、物資が豊かなほうの子どもの死亡率が高かったという。

震災の復旧作業をする人たちなどにより、取り残された動物たちの食事が運びこまれた。
しかし、命を落とす動物があとをたたなかった。それは今なお続いている。
田代島の猫たちは生きた。物資が届かない中で耐え抜き、新しい命も生まれたのだ。
ここでは優しさで支えあったのだ。

お金でもない。物資でもない。いい訳もなく、高望みもない。
ここに住む人たち、生き物たちすべての、純粋で力強い、生きる力がそこにあった。

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