メランコリア

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ここにあるのはわたしの心象スケッチです。

『のらねこ。ちいさな命の物語』

2013-03-22 11:24:09 | 
『のらねこ。ちいさな命の物語』(エンターブレイン)
中川こうじ/著

先日借りた『のらねこ。外で暮らす猫の姿をありのままにとらえたフォトエッセイ』につづく第二弾。
本書では、著者が関わったのらの物語りが4篇描かれている。

公園で母になった猫
捨てられたのらが公園で産み落とした子猫を必死に育てる。6匹生まれて、無情にも4匹は光を見る前に天に召されてしまった。
残された家族は、唯一隠れられる場所・人気のなくなった機関車で煤だらけになって暮らす。

 

そこに所在なく取り残された子猫が現れる。母猫はなんの躊躇もなくその子をわが子のように育てはじめる。
やがて、子どもたちは水を飲むとき、ちょっとだけ我慢して母に飲ませるまでに成長した。
子は母に甘え、母は子に支えられて、親子は必死に生きてゆく。

 


倉庫の中の兄弟猫
気づいたら倉庫で暮らしていた兄弟猫。
どうしてここにいるのか分からぬまま、雨風をしのぐためそこを離れられない。
三毛柄は「メロン」、茶と白は「みかん」と名付けられた。気弱なみかんをメロンはいつも守っていた。
ある日、メロンは天に召された。一人残されたみかんを、仲間ののらが慰めた。



“人間の勝手で追いやりながら、それでもここで生きるなという。
 好きでここにいるわけでも、ましてや一人になりたかったわけでもないのに・・・。”


マイケルと黒い子猫
小雨のある日、夫婦が白黒猫を公園に置いていった。「そこにいなさいね」という言葉を信じて猫はけしてその場を動こうとしない。

 

公園に1台の車が停まり、ポイっと黒い子猫が捨てられた。黒猫は自分の身になにが起こったのか分からなかった。
同じ場所に動けない白黒猫と、黒い子猫が出会った。同じ境遇を知ってか2人は寄り添って生きた。
やがて黒い子猫は女子高生に「ずっと家族として暮らしたい」と引き取られた。
白黒猫はまたひとりになった。

 


ちいさな三毛猫はな
ノアという家猫がいる著者の家に、見知らぬ三毛猫が「にゃんにゃんにゃん」と3言ないて突然入ってきた。
はなと名付けられ家族の一員となり、里親探しの猫がたくさん通り過ぎても、いつも優しく接してくれた。
ある日、はなは急に食が細り、「癌」と宣告された。
命を散らした愛しい人は言う。悲しまないで。きっと、またそばにいける。また抱きあえる。




【著者あとがきメモ】
命は己のためだけにあるのではない。
生きる力は自分のためだけに使うものではない。そう教えられた。



本書を読みながら、道端で見かけたのらを保護したいという勇気が出せる人と、出せない人の違いって何だろうと考えてしまった。
アパート暮らしだから? 経済的な理由?
わたしは大の動物好きだが、にゃんこ1人と暮らす勇気も持てない薄情者なのだろうか?

それで思い出した。
子どもの頃、田舎だったせいもあって、今よりもっとのら犬ものら猫もいっぱいいて、
公園にいる犬に毎日友だちと食べものを持っていったこと。
家に連れてきて「飼いたい」と必死に頼んだけれども、父に怒られ、泣く泣く公園に戻したんだっけ。

家のベランダの物置き場に、子猫が数匹、折り重なって死んでいたこともあった。
半分腐敗した亡骸を、猫が大嫌いな母の愚痴を聞きながら、近くの駐車場の脇に埋めたこともあったっけ。
そんなトラウマか?
でもいつか、自分がもっと歳をとったら、一緒に暮らしたいと願っている。
なぜ今じゃなく、もっと歳をとってからなのか?
その理由はまだ自分でも分からない。


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