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忘れないように……

史上最年少はグザヴィエ・ドランではありません

2015-06-05 12:55:03 | 映画 - 人物

 2015年5月13日(水)から24日(日)にかけて第68回カンヌ国際映画祭 (Festival de Cannes 2015) が開催されました。

 今回の長編コンペティション部門では、審査委員長が映画監督のジョエル&イーサン・コーエンのコーエン兄弟、その他の審査員が7名でした。審査員が発表されたとき、委員長が2名なのも話題になりましたが、1989年3月生まれのグザヴィエ・ドラン (Xavier DOLAN) が26歳の若さで審査員に選ばれたことも話題となりました。

 日本でもドランを史上最年少と伝えるメディアがありました CINRA.NETナタリー など) 。実際には史上最年少ではないんですけどね。

 これを受けてか、日本で4月25日(土)公開の監督作『Mommy/マミー』や、6月6日(土)公開の主演作『エレファント・ソング』関連の記事や評にも、カンヌの“史上最年少”審査員と書かれてしまってます ニューズウィーク日本版dacapo (ダカーポ)CDJournalシネマカフェCINEMA TOPICS ONLINETimeWarp など) 。調べれば分かる事を、なぜ調べずに書くんだろう。校閲は誰もチェックしなかったんでしょうか。

 たしかにドランは、監督1作目『マイ・マザー』が2009年のカンヌの第41回監督週間に、監督2作目『胸騒ぎの恋人』が2010年の第63回カンヌ映画祭の「ある視点部門」に、監督3作目『わたしはロランス』の2012年の第64回カンヌ映画祭の「ある視点部門」に、監督4作目『トム・アット・ザ・ファーム』が2012年の第70回ベネチア映画祭のコンペに、監督5作目『Mommy/マミー』が2014年の第67回カンヌ映画祭のコンペで上映され、いずれも高い評価を得ました。若くしてこんなに実績のある映画監督はそういるものでもなく、史上最年少ではと勘違いしてしまうのも分からないでもありません。

 そんなわけで「カンヌ映画祭、コンペ審査員の史上最年少は誰?」というブログ記事を書こうと思ったのですが、時間と気力が無くて調べ上げるのを断念。

 カンヌの長編コンペの審査員は、1988年から2001年は毎年10名、2002年から2015年は毎年9名でした。それ以前も10名前後でしょう。ということは、全68回なので総勢650名くらいになるでしょうか。4時間くらいで済む作業とは思いますが……

 なので、史上最年少かどうか分かりませんが、グザヴィエ・ドランより若かった審査員を1人あげときます。

 それは、1989年の第42回カンヌ国際映画祭の長編コンペティション部門の審査員ルネ・ブランシャール (Renée BLANCHAR) です。彼女は1964年5月生まれで、審査員を務めたカンヌが開幕したとき24歳で、映画祭期間中に25歳の誕生日を迎えました。

 この年のカンヌの長編コンペティション部門の審査委員長は映画監督のヴィム・ヴェンダースで、最高賞であるパルム・ドールは『セックスと嘘とビデオテープ』が獲りました。スティーヴン・ソダーバーグ監督の初めての長編作品で、1963年1月生まれのソダーバーグはまだ26歳でした。

 ちなみに、ルネ・ブランシャールは当時まだ学生で、パリにあるフランス国立の映画学校 FEMIS (Fondation européenne des métiers de l'image et du son 、旧 IDHEC) で映像監督の勉強をしているカナダ人でした。現在でこそ監督作がありますが、当時は監督作もありません。

 実績を買われたのではなく、若い人の意見、映画を勉強中の学生の意見も取り入れようという試みだったのかもしれません。どういう意図で審査員に採用されたのか調べてから、ブログに書きたかったのですが、映画祭も終わってしまったし、『エレファント・ソング』の公開日も迎えるので、とりあえずブログをアップします。

 ドランの26歳でのカンヌのコンペ審査員選出というのは、史上最年少ではないものの、非常に早いもので、実績を買われて審査員になったという点ではカンヌ史上でも異例の若さといえるでしょう。現在ロングラン中の『Mommy/マミー』も非常に素晴らしかったですし、今後が楽しみです。


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